少女漫画と少年漫画の分断について思うこと
私は小さい頃、神戸に住んでいて、近くの小学校に通っていた。
小さい女の子の読み物は少女漫画と相場が決まっていて、小学生の頃は周りの女の子達も「ちゃお」とか「なかよし」とか読んでいた。
私は当時大好きだった少女漫画「エンジェル・ハント」の絵を真似てよくお絵かきしていた。
周りの女の子達からその絵が上手いと評判になって、自分のために絵を書いてほしいと頼まれることも度々あった。
絵を通じて、人見知りな私も女の子達の輪に混ぜて貰えていた。
そんな感じで、思い返せば少女漫画は私にとって、コミュニケーションツールともなっていたのだ。
これは前回書いたように、それこそ伝統の良い点であって、否定すべきことばかりではない点は最初に述べておく。
だけど、そんな少女漫画お絵かきをする私は、女の子達からは評価されたけど、同じクラスの男子からは度々からかいや蔑みの目を向けられた。
教室の壁に自分の顔と名前を書いて貼りましょう、て時に、私は他の書き方を知らないから少女漫画ぽく描いて貼ると、「そんな目大きいのあり得ねぇ、変!」「漫画みたく描くのやめろよ!」
確かにその絵は自分を美化して描いてると思われてもしょうがなかったかもしれない。
だけど説明は難しいけど、そんな小さい頃から男子たちには「小さくて可愛いもの、オシャレなもの、女の子らしいもの」を毛嫌いするような感覚があったと思う。
小6の時には安室奈美恵の「New Look」が流行って、お昼休みの音楽で流れていたら、安室ちゃんの歌い方をからかうように男子が真似て歌っていた。
私はその曲が普通に好きだったのだけど。
大人になってジェンダーやフェミニズムについて学ぶと、あれは普通にミソジニーだったのではないかと思う。
あの頃の男子たちはきっと、女子たちが少女漫画を読んでいる間、少年漫画を読んでいた。
男らしさ、強さ、決闘、敵味方、友情、ホモソー、お色気要員でしか出てこない女、男尊女卑。
小学生やそこらの未熟な子どものうちからそういうの読んでたら、そりゃ女嫌いで弱さ嫌悪の人間になるよな、と思う。
そして面白いのは、女の子の側も、小さい頃は少女漫画でラブロマンスとか(結構ドロドロしたのもあったけど)読んでるんだけど、高学年になってくると少女漫画を読まなくなって、少年漫画を読み始める子が増えてくる。
もちろん少女漫画を読み続ける子もいたと思うけど、私の周りは少年漫画転向派が多かった。
その理由は、少女漫画にも「3歩下がって俺についてこい」的な強引なタイプの男に惹かれるような古臭いジェンダー観があって、「女も学歴付けて競争社会で自活して生きていけ!」みたいな時代には合わなくなっていたからだと思う。
特に中学受験組だった女友達は、受験競争にやっきになっていたからか、「権力ある強い女」を求めてどんどんミソジニーでウィークネスフォビアになっていった。
男友達に「ハウス」て言って犬みたく扱って思い通りになるのを楽しんだり、塾で習ってるから英語の授業で「私は先生が何言ってるか分かるわ」とひけらかしたり、遊びでも自分が優位に立っていないと気が済まないようだった。
昔は無邪気で良い子だった(はずな)のに、なんであんな高慢でイヤな奴になってしまったんだろう。
彼女はオタクを自称していて、漫画に出てくるプライドが高く達観したキャラと自分を同一化させていたのかもしれない。
まぁもう2度と会うことも無いし、どうでもいいけど。
中学生になって美術部に入ると、これまた少年漫画好きなサブカル女子の巣窟だった。
彼女達の中には少女漫画を嫌う子もいた。「そんな目大きいのおかしいよ」
冒頭の男子たちと同じことを言う。
私からしてみれば、少年漫画の女の子達も目が大きいし、そんな変わらなかったけれど。
ちなみに私はといえば、一時期そんなに面白いならと、少年漫画を読もうとしてみたこともあったけど、脳筋バトルシーンばかりでつまらなくてやめてしまった。頭脳戦のデスノートとかはまぁまぁ面白かったけど。
少女漫画も少年漫画同様ありきたりな展開ばかりでつまらないし、どっちもどっちだ。
それでアガサ・クリスティとか、これはラノベ系て感じだけど西尾維新の戯言シリーズとかの推理小説にハマっていた。
少女漫画と少年漫画という性別で読者分けしてる時点でどんだけ強固な性別分業文化なんやと思うし、少年漫画を読む女子は「女の女ぎらい」になってる感じがして嫌だった。
「女も男並みに働いて自活しろよ!」ていうある種のフェミ的な空気を感じとって、彼女達は少年漫画を読むようになるのかもしれない。
がそれは、「女も男と同じになる」タイプの誤ったフェミニズムだと私は思う。
男になるために、女が「女ぎらい」になるのだとしたら、悲し過ぎる。
女が女のままで、普通に働いて生きていける社会になることを目指すのがフェミニズムであると私は思う。
これから真に多様性の時代になれば、少女漫画も少年漫画も消滅していくのかもしれない。