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3.些細なことの積み重ね

前回は理学療法士を目指した経緯をお話ししました。

大学を卒業後に改めて通い直した理学療法士の専門学校。
学生時代の4年間は大変なことも多々ありましたが、
勉強は楽しくて仕方なかったですし、実習での学びや
就職後の現場での6年間も、本当にやり甲斐しかありませんでした。

「相手のことを考えて、悩み・不安に寄り添い、身体の改善を通して貢献していく」
私にとって、理学療法士は天職そのものでした。

ですが、現在は天職と思っていた理学療法士を退職しました。

今回はどうして理学療法士を辞めてまで、「治療家」として独立するに至ったのかをお話ししていこうと思います。

大きなきっかけが2つあります。
一つは私自身の病気
もう一つは母の病気です。

一つ目の私自身の病気について。

学生時代はバイトをしながら生活費と学費を工面しつつ、
勉強も実習も4年間しっかりこなしてきました。
ずっと慢性的に重怠い疲れがありましたが、気にも留めずがむしゃらに走り続けてました。
少しでも節約しようと思って食費を削って
少しでも稼ごうと思って夜間バイトも含め3~4つほど掛け持ちして働いていました。

それもこれも「理学療法士になるため」
仕方がなかったと思っていました。

無事に実習を終え、理学療法士の国家試験を1か月前に控えた25歳の時のことです。

身体は元気なんだけど、少し血交じりの排尿があるからとのことで、
友人から病院に行くことを勧められました。
その結果。

「重度の慢性腎臓病です、精密検査を受けてすぐに治療を始めましょう」
と。

一瞬自分事には思えなくて頭が真っ白になったのを覚えています。

「私が病気?まさか、ありえない…」

これまで部活で身体は鍛えてきたし、元気だし、まだ25歳だし
根拠のない自信というか、
病気なんて、私には無縁と思ってたから信じられなくて。

皆さんが20代のころに病気と診断されたとしたらどう感じますかね?
私よりももっと重篤なご病気を抱えながら生活されている方もいらっしゃるかも知れませんし、
「病気なんて無縁!」と思っている方もいらっしゃるかも知れません。

私が診断されたのは、「IgA腎症」という難病で
成人では10万人に3人が発症する自己免疫疾患でした。

腎臓には血液を綺麗にする機能があります。
その機能が低下すると、血液中に老廃物が溜まって全身に回ってしまいます。
腎臓が働きにくくなると「透析」といって、体内の血液を機械に通して血中の老廃物を取り除いて綺麗にして、また体内に血液を戻します。

その機械に繋げられ、4~6時間は病院のベッドに寝た切り、
人によっては1~2日ごとに通院が必要になる、
私はそんな状況の一歩手前でした。

今思えば、過労な上に睡眠不足、ストレス、低栄養などなど
思い当たる節は多分にあって。

当時は多少の無理は必要だと思ってたし
そうでもしないと学費を払えない、生活できないって思ってたから、
自分の「無理な生活」を肯定してました。

けど、重症な病気になってしまっては
元も子もないですよね…

「ここまでがんばってきたのに、理学療法士として働くこともできずに、
闘病生活。。。」

そんな状況を想像しただけで喪失感や恐怖が湧いてきて
無気力になったり、自暴自棄になったり。

それが国家試験1ヶ月前の話でした。
なんとか騙し騙しでも気持ちを立て直して
受験し、合格することができました。

入職前に治療入院をして
働き始めてからも投薬、定期入院、手術をしながら
仕事と治療を並行して
6年かけてようやく完治しました。

こんな状態だったからこそ
患者さんの感じる痛みや怖さ、落胆、絶望感を
同じものではありませんが、少しでも推し測ることができたかと思います。

自身の病気は仕事で患者さんに関わる上での「試練」だったのかな、とさえ感じていました。

この経験を通して、今だから言えるのは
生活や仕事などで、やらなければならないことがたくさんあるとは思います
が、全ては自分の心身の健康があってこそ。

日々の仕事や生活の中で
責任や義務感、やらなければならないこと、達成したい目標があったとして
無理にがんばって、踏ん張って、痛みや辛さを耐えても
心身を壊してしまえば、何にもならないですし、より一層八方塞がりな状況になってしまったり、大きな変化を余儀なくされるでしょう。

そうなる前に、「少しでも何か自分のためにできること」を。
自分へのご褒美に好きなものを買ったり、好きな時間を過ごしたり
心身の休まる時間をつくったり、スマホを閉じて家族との会話を楽しんだり

「大丈夫」と無理や我慢をしていませんか?
些細なことからでも、自分の心身への労りを積み重ねていくことで
のちの大きな後悔を、幸福に変えていけます。

こんなことを、私自身の病気を通して学びましたし、
私が関わる人には無理をしないことと自分を労わることの大切さを伝えています。


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