CDO(Chief Design Officer)ってどんな仕事?その参
Money Forward Design Advent Calendar 2024 の最終日の記事です。
これまで「CDOってどんな仕事?」「続・CDOってどんな仕事?」という記事を書いてきました。今回はさらに続編として、「その参」を書きます。現在CDOをされている方、これから目指す方、あるいはCDOを検討している経営者の方々の参考になれば嬉しいです。
CDOの軸足
マネーフォワードでCDOを務めてから4年が経ちました。いろんな会社のデザイン責任者の方々と交流してきましたが、一言にCDOといってもその役割はさまざまです。こちらの図は、デザイン責任者の仕事を俯瞰的に整理してみたものです。
まず、大きくアウトカムの領域として、イノベーションに資するデザイン(プロダクトのデザイン)とブランドに資するデザインがあります。これは2018年のデザイン経営宣言を参考にした切り方です。私自身はこの両軸に立った活動を行っていますが、どちらに軸足を置くかでタイプが分かれます。
総合型:プロダクト、ブランドの両軸をカバー。UI/UX、グラフィック、ブランドなど総合的なデザインスキル、知識が求められる。
イノベーション型:プロダクトデザインに軸足があり、UI/UXに関する専門性が高い。VPoPD(Vice President of Product Design)として活躍されている方も。
ブランド型:ブランドデザインに軸足があり、クリエイティブに関する専門性が高い。CCO(Chief Creative Officer)として活躍されている方も。
大雑把に分類してしまいましたが、キャリアのバックグラウンドによっても軸足は異なります。私の場合はデザイン事務所を経営しながら、UI、Web、ロゴ、パッケージなど幅広くデザインしてきました。そのような背景から総合型に行き着いています。
総合型の別の形として、CXO(Chief Experience Officer)もあります。CXOが責任を持つのは顧客体験ですから、上記の図で紹介するよりもさらに広い領域を管掌します。例えばカスタマーサポートを管掌領域とすることもあります。CXOの管掌領域は非常に広いので、マネーフォワードのように多角事業化した企業においては、一人でその責務を担うのは非常に難易度が高いです。そこで、区切られた事業領域ごとにCXOを設置する会社もあります。CXOの仕事については、「CXO Night #6 CXOのリアル」が参考になります。
CDOのレバレッジポイント
軸足の次に、レバレッジポイントを見ていきます。この図では「事業・経営」「組織」「サービス」と3つのレイヤーに整理しましたが、その企業が置かれている事業や組織のフェーズによって、デザインの力を最大化するポイントは異なります。
創業期:0→1を生み出すサービスレイヤーの動きが重要。自らリードデザイナーとしてプロトタイピングを繰り返し、とにかく形にするフェーズ。
成長期:マルチプロダクト化が進み、複数チームのマネジメントが必要になるフェーズ。デザイナーも10名、20名と拡大するため、組織レイヤーの動きが重要。
拡大期:事業の多角化が進み、組織の複雑性が増すフェーズ。デザイナーが100名以上になることも。事業・経営に対する動きがレバレッジポイントとして高まる。
こちらもざっくりと分類してしまいましたが、事業や組織の状態に応じて、注力する動きが異なることを理解いただければと思います。例えば、マネーフォワードは拡大期に相当するので、私自身はCDOとして事業・経営と組織のレイヤーに時間を使っています。具体的には、複数事業のシナジーを生み出すような経営ビジョンの策定を行ったり、デザイン組織のスケーラビリティを高めるような組織開発を行ったりといった具合です。一方で、サービスのレイヤーについては、一部の新規事業や重要プロジェクトにはハンズオンで入ることもありますが限定的です。
このように、レバレッジポイントと先述の軸足の掛け合わせによって、会社ごとにCDOの役割は大きく異なります。
CDOになるには?
よく聞かれる質問の一つに、「どうしたらCDOになれるのか?」と言うものがあります。それを考える上で、まずはCxO(CFO、CTO、CDOなどChief x Officerの総称)の定義について見てみましょう。先ほど紹介したnoteにはTakramの田川さんの言葉として、以下のような記述があります。
CxOはCEOの分身ですから、CDOはCEOの脳内をシミュレーションしながらデザインに関する意思決定をする力が求められます。またそれを可能にするような全体視点や中長期視点が必要になります。一般的にデザイナーはリードデザイナーからマネージャーあるいはエキスパートとしてキャリアを重ねていきますが、CEOの脳内をシミュレーションするような機会は多くありません。そこにギャップが生まれます。
私は、マネーフォワードをたくさんのCDOが生まれるような会社にしたいと考えています。CEOと言わずとも、経営メンバーや事業責任者など、斜め上のメンバーと対話を重ねることで、全体視点や中長期視点は身についていくものと考えています。社内のデザイナーにはそういった機会を持つことの大切さを伝えています。
まとめ
この記事は私の経験から見てきたものをまとめたものです。正確ではない表現もあるとは思いますが、今回ご紹介した見取り図を参考に、CDOとして活躍するデザイナーが増えたら嬉しいです。CDOはデザイナーのキャリアのゴールではありませんが、デザインを通じて世界にインパクトを届けるのであれば、良い選択肢かもしれません。
マネーフォワードではリーダーシップのあるデザイナーを募集しています。一緒に世界を前に進めるような仕事をしていきましょう!