伝説のウィザード/手始めに
活気が無いアシュカルス村。村人に状況を聞こう。
「た、旅人さん?どういった御用で?」
「村が随分と静かだ。こんな事はあるのか?」
「ちょっと事情がありましてね・・・」
尻込みする村人は、問題を解決してほしそうだ。
仕方ない。
「聞かせろ」
「は、はい・・・。この村の隣の森で魔物が大量に居座ってしまいましてね・・・」
魔物の排除か。いいだろう。
「なるほど。報酬と引き換えに受けよう」
「ほ、本当ですか!?ぜひお願いしたい!」
「引き受ける」
村人は頭を下げて感謝した。すぐに出発して済ませてこよう。
周囲より暗く見える森の中。木が生い茂る視界の中に日の光は少ない。
開けた場所に足を踏み入れた時に突然、何かが迫ってくる予感がして、横に飛んで回避する。それは正解だった。
飛び掛かってきたのは野煩狼。獰猛で危険な集団行動をする魔物。人間にとっては、だが。
剣の柄を握り、一気に引き抜いたと同時に勢いで鋭い爪を立てて引っ搔いて来ようとした際に合わせて斜めに切り裂いた。爪ごと手先を切り落とした。
「ぐあぁぁ!!」
悲鳴を上げて距離を取る野煩狼。奴の動きは単純だ。群れではなく単体と戦うならばすぐに終わる。
次に、振りかぶって切り裂こうとしてきたが、遅い。
眼を突き刺して止めを刺した。
討伐の証として切り落とした爪を拾い上げて森の先に進む。
すると、男の話し声が聞こえてくる。
「これでいいのか?」
「あぁ。こいつ等を誘き寄せて村を壊滅させる。俺ら集落潰しの名をあげるんだ」
男は気になる事を話していたから聞き出そう。
「お前たち、何をしている」
「ひいっ!なんだよ、誰だ」
少し踏み込んでみよう。
「聞きたいことがあるのだが、いいか」
「あ、あぁ。なんだ?俺らはこの近くの村に用があるんだ。お前、そこから来たのか?」
男は少し表情を引きつらせて応える。
「隠し事は無意味。答えろ、何を考えている」
「あ?お前に話す事はねぇよ。なめんなよ」
男はナイフを懐から取り出す。私も剣を構える。
「死にたいのか。逃げるなら今の内だ」
「なんだとてめぇ・・・死ね!」
男は怒ってナイフを大上段で振り下ろしてくる。
「お前こそ、甘く見るな」
私はナイフを弾く。続け様に足を踏みつけて体制を崩させて剣を突き付ける。
「もう一度聞く。何を考えている」
「わ、わかった。話すから見逃してくれ。俺は集落を襲って金品を漁っている。わりぃがそうしないと暮らせねぇんだ。出来心だったんだよ、見逃してくれよぉ・・・」
くだらないな。放っておいても無事ではないだろうな。
「なんてな、んな訳ねぇだろ」
男は急に立ち上がって再び刺そうとしてきたが、愚策だった。
加減をしてやったというのに。
男3人の首と野煩狼討伐の証を持ち帰って村長に渡し、報酬を貰った。男たちの首を渡した時は顔が引きつっていたが、報酬金と傷薬の材料を貰って依頼を終わらせた。
村人たちには感謝されたが、同時に不気味がられた。
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