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寄せ集め部隊/緊急作戦会議

俺が携帯ゲーム機で絶賛ハマり中のアクションゲームをやっていると、固定電話が鳴りだした。
ゲームに一時停止機能があって助かった、と思いながら出ようとしたが、
「私が出ます」受話器に一番近かったクフォンが行ってくれた。
「はい・・・え・・・わかりました。少々お待ちを」
クフォンはメモ帳とボールペンを棚から取り出して受話器と一緒に置く。
「ペルー陸軍の方です、マイクさんに代わって欲しいと」
「はいはい」
何だろう、と思いながら電話に出る。
「待たせた。誰だい?」
「あぁ、君がか。大隊長のハウウェルという者だ。キューバの同業者と協力して半日で手配組織を潰した手柄を上げた君たちと連携して、ある連中の調査を行いたい。こちらに来てもらう訳にも行かないから、町はずれの喫茶店で待ち合わせしないか?できればチームリーダーで。立て続けにすまないが、反論は聞く」
「無い。ただ、ここまで来るのにもかなり費用が掛かるだろう?大丈夫なのか?」
「問題ない。意外と稼げるんだ」
「そりゃいいな」
「で、だ。受ける気はあるかい?」
以前の俺なら絶対にできなかったため口。グリムスさんの言葉でフレンドリーで取っつき易いヤツらの印象を持たれたくて恐る恐る始めた。
悪く言えば礼儀知らずになってしまう。当然抵抗はあった。
でも、彼らは好意的に受け入れてくれた。

あの電話から5日後、家がある丘を降りて町の端にある、寂びれた喫茶店に向かった。ここの店主は愛想がいいし、ギャグセンスもある。彼との笑いを求めて訪れる客も少なくはない。
ハウウェルさんとの待ち合わせ場所兼打ち合わせ場所はここの窓際の席にしてある。
座ってから2分も経たないうちに、ドアが開かれて1人入ってきた。店内には俺以外に誰もいない。
緑や黒、茶色が散りばめられた迷彩服を着た背の高い中年男性がやってくる。
「やぁ、俺がハウウェルだ。待った?」
「1分前に来たところ。遠い所までご苦労さん」
「気にするな。兄貴がこの辺に住んでいる。顔を見ようと思ってな」
俺が勝手に話しやすい印象を持ったハウウェルさんは、白い歯を見せて豪快に笑った。
彼はブラックコーヒーを2つ頼んでから話しの本題に移った。
メモで超簡潔にまとめると、改革を名乗る犯罪集団のアジトを調査したいのだが、その前に贔屓にして貰っている富豪からの依頼でテロ組織を倒した。主犯格は全員捕まえられたが、指揮する部隊もかなりの痛手を負ってしまった。武器も故障に泣かされて装備と人員が足りないらしい。
お金はあった彼らは、傭兵に協力してもらおうとしたが断られた。そこで、藁にもすがる思いで電話をしてきた、という。
「なるほど・・・大変だったんだな。俺に言えることじゃないかもしれないけど」
「いいや。こんなおっさんの愚痴を聞いてくれて嬉しいぜ。長話が過ぎたな。実は指名があったんだ。こいつを読んでくれ」
差し出された手紙を読む。達筆な字だった。
内容は、
「組織の打倒、お見事。損害を被ってしまった件についてはこちらの情報収集の不足によるだろう。謝罪させてもらう。だが、国民の不安の種を取り除いてくれた事に深く感謝する。私は皮肉にも足が悪い。だから金での支援しかできない。無力感が拭えないが、諦める事も肝心だろうか。
本題だが、疲弊している君たちにこの任務の全てを押し付けるわけにはいかない。私もそこまで恩知らずではない。
そこで、傭兵に協力を申し出てはどうだろうか。
私が耳にした彼らは、本物かもしれない。この番号の、傭兵部隊にコンタクトを取って欲しい。
くだらない金持ちの無茶ぶりで振り回してしまって、申し訳ない。こうして書いているものの、自ら動くことのできない自責が絶えない」
俺たちが行くしかないものだった。

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