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寄せ集め部隊/新参者だけど

「初めまして。ラジオで聞いて気になって来てみたら、まさかこんなに素晴らしい志を持っていたとは」
「一通りの説明は終わらせた。無論、私たちの目標も」
グリムスさんからの説明は俺たちが出掛けている間に受けたらしい。なら、話は早い。
「クリストファー・ダニエルだ。今日から正式に部隊の人員となる。よろしくな」
それからクリストファーは手紙でも言っていた参戦理由を改めてみんなに話した。
彼は医学の追及で人のために役立つ夢を叶えてもなお、熱心に追い続けていた。しかし、親友である後援者が金銭目的でデマを流したことによって彼は破綻してしまう。かつての一番信用していた友に財産を奪われてしまった彼は、世間一般の厳しい非難の声に耐え続けている。
しかし、彼を支持する人も一定数いる事も真実だ。
その時から今まで個人で訪問診療を行っていたが、根無し草になってしまった。彼は食べていくだけのお金はあったが、確実に安定させられた訳では無かった。料理が好きなクリストファー。自炊が多かったが、たまにレストランに行ったり、面倒な日や収入が少ない日はコンビニ弁当で済ませている日もあった。
そこで彼は、やはり安定した基盤が欲しくなり・・・目に留まったのが俺ら寄せ集め部隊だった。という訳だ。
「以上が、私の参戦理由だ。貧乏人の言い訳だと笑う人間は数多くいた。だから、勝手だがここで暮らしても・・・君たちが作りたい居場所なら私がいてもいい理由は見つかるかな?」
曰く、医者の彼は非戦闘員ではないが、衛生兵として配置して欲しいと願っている。
適材適所、という言葉があるようにクリストファーは無事に第一希望通り部隊の衛生兵兼主治医になった。
映画のパンフレットのような入隊希望者に送られる冊子に一通りの活動や目的、人員の心構えや目標などがマンガ風のイラストと共に書かれている。発案は当然グリムスさん。
意外と遊び心がある人なんだ。
「私はスイス出身なんだ。知っているかもしれないが、4つの公用語を持つんだ。故郷の村ではロマンシュ語で話していたが、出張に出かける地域がフランス語を軸にしていたからすっかり板についたな」
と笑いながら言って、
「怪我でもしたら・・・そうでなくても気軽に来てくれ」
厚みのある頼もしい声と表情ですぐに溶け込んだ。
でも、完全に戦わなくていい訳ではない。
任務に参加するならば銃撃戦に巻き込まれる危険は当然上昇する。誰であっても。
「あぁ。その件は重々承知さ。良い店を教えてもらったからな。今から掛け合ってみるさ」
それを考えておくと言ってクリストファーは俺たちの「今日できたばかりの友達」として距離感を縮めてくれた頃に出かけて行った。
良い店、武器、この二つのワードが示す場所を思い浮かべると、浮かんでくる顔。
俺らの行きつけの店主の、「古巣の友人と地元を助けてくれた」と、いつもいらないと言っても缶詰やお菓子などのおまけをくれる気前のいいおっちゃんしかいない。

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