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寄せ集め部隊/松井の攻撃ターン

「敵だ」
ドゴン。
M82の大きな反動と共に強力な銃弾が飛んでいく。
警察や特殊部隊が使う様な、どこから仕入れたのかわからないが大きな盾を持っている男を盾ごと貫通して倒した。
次の敵を見つけ、革の手袋越しに引き金に指をかける。
再び轟音が響く。弾は先ほどと同じような格好の男に直撃して上半身と下半身で分かれて倒れていった。
観測手はいない。彼は、マイクたちの人数の埋め合わせに行った。松井は1人でも大丈夫だった。
「次だ」
的を絞って発砲しようとしたその時。
「やらせねぇよ」
小ぶりのナイフを構えた音と共に男の声がして、足音が迫ってきた。
「来い」
松井は渋いホルスターから拳銃を抜き、構えた。
しかし、時間がたっても現れない。と思ったが、
「馬鹿。正面から来るか!」
右の扉を蹴破って走ってきた。
松井は驚いて後ろに仰け反った。
そこを、男がタックルを繰り出して松井の身体を押し倒す。
「うあぁぁ!」
「甘ぇんだよ、狙撃手」
手に持ったナイフで刺そうとした。
だが、忘れてはいけない。

「伝令等を伝える時、俺らの無線は正直・・・中途半端だ。どこまで届くかわからない。伝書鳩でもいればいいんだが」
仲間がそんな事を言っていた。それはそれで懸念点だが、そうでなくても、無線の通信距離はやはり限られてくる。
だが、そこに関しては心配ない。伝書鳩では無いが、松井は頼れる仲間を連れて来ていた。
「鳩では無いが、鳥を連れて来た。付いていきたがってな。言っても聞かなかった」
口笛を吹いて呼び寄せた肥前と名付けられたイヌワシは、松井の父の親友の1匹だった。父が亡くなった今、絆を結んだ彼の息子と飛び回る。
「だったら、私の伝書鷲を使ってくれ。こいつは思いやりがあるし任務もしっかりこなす。任せてくれ」

数分前、松井は肥前の脚にアジトの座標を書いた紙を括り付けて放った。
緊急時に攻撃してもらうために、味方が後ろに控えている今回は危険に予め備えておく。
それを見ていた男がすかさず、気取られないように近付いたのだ。そして、叫んで警戒させ、時間を空けて油断させ襲撃。確実に猛威を振るう狙撃兵から片付けようとした。
その野望は叶わない。
戻ってきていた肥前は、家族の少年の危機に飛び行った。
男の顔面に横からぶつかっていった。
鋭いクチバシと大きな体格からの顔への体当たりは、相当なものだ。その証拠に男は転げ回って痛みに悶絶している。
「助かった、ありがとう」
松井は愛鳥に感謝を伝えて、腰の後ろのポーチから麻酔銃を取り出す。
「悪いな」
男の首筋に麻酔弾を撃ち込んで眠らせて、無抵抗の敵を撃つ気にはならなかった松井は、本部に連絡をして捕虜を取る事にした。ここから本部に無線は届かない。再び肥前に伝言を運んでもらう。
「マイク、捕虜を取った。撃つ気にはならなかったからな。今から突入する」
窓際に置いたままだったM82を持ち上げ、バックパックの横にスリングで背中に背負った。
麻酔銃を撃つためにしまっていた拳銃を抜いて、みんなが先行したであろう道を歩く。
しかし、その道中には敵はいなかった。
警戒するに越したことは無いが。
やがて、マイクたちの話し声が聞こえて来た。
「追い付いたぞ。狙撃できる限界が来たからな」
「おう、待ってたぜ。今ちょうど制圧したところだ。グリムスさんが他を終わらせて来てくれるからな」
松井はいつ敵が現れるか緊張と不安で一杯だった時に、仲間と出会えて大いに安心を抱いたのは心の内に秘めておく。
「ところで松井、何人倒したんだ?」
「知りたいか?」
表情に出さないように。
凶悪な集団の、犯罪も平気で起こす奴等を、悪い奴等を倒せた。嬉しさと疑問を感じながら。
正の字で書かれたメモをマイクに渡す。
「10人も倒したのか。こりゃすげぇ」
「私もやるときは、やるんだ」
口では前向きに。松井は覚悟が決まったわけでは無かった。心は若く、完全に成長していない。
苦しめられていた人の力になるために、悪行が許せなくて衝動的に参加した。
その結果が、悪人とはいえ人を殺してしまった。
果たして、そんな事をやっていて、続けていていいのか。
松井はどんどん不安になっていった。

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