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寄せ集め部隊/キツツキの猛撃

もういいだろうと言うことで、本腰を入れて攻撃を開始する。その頃、内部の犯罪者共の様子は、
「おい、何人かと連絡が途絶えた!こいつは、攻めてくるか」
「へ!やってみろよ。こっちには大量の銃と弾薬があるんだぜ。この前ニュースで言ってたが、寄せ集め部隊とかなんとかいうふざけた連中がいるらしいぜ。来たらぶっ潰してやる」
「そういう訳だ。準備しろよ!クソ共をアジトに入れるな!」
その奴等は切れ者の精鋭で迎え撃つらしい。

「いいだろう。私が援護兵として立ち回る。マイクは私の後ろを・・・いや、私は1人でいい。君たちは各々散開して貰って構わない」
「いいんですか?グリムスさん、1人でしょう?」
すると彼は微笑んで、腰の位置で構える機関銃の側面を軽く叩く。
「君には話していなかったか。私の銃はな・・・」

「いたぞ!奴を撃て!」
悪人面の青年がサブマシンガンを構えて撃とうとしたが、こちらのほうが少し早かった。
腰撃ちの状態で構えていた重機関銃から放たれた質量の大きな弾丸は、引き金を引いた青年が持つ銃に当たる。
小さな銃弾はグリムスを大きく外れて飛んで、工場の壁に当たって火花を散らした。
「うわぁ!!」
ガリッという嫌な音と共に、青年が身を翻してコンクリートの壁に隠れる。
しかし、それは無駄な事だ。
硝煙が立ち上る銃口をほとんど揺らさずに、腰に構えてゆっくり近付くグリムスが扱う銃。
連射速度こそ遅めではあるが、その命中精度の高さと攻撃力で恐れられた銃。
日本製、92式重機関銃。
キツツキと呼ばれていたほどの、特徴的で強力な鋭い攻撃は圧倒的な命中精度を誇っている。
引き金に指をかけていつでも撃てる様にしながら追い詰めていった。しかし、その代償というか。
連射速度はあまり早くはない。が・・・
92式は”残弾が減るほど連射速度が速くなる”。
この銃を、グリムスは祖父の遺品を整理していた時に、日本の友人からの贈り物を置き書きと共に発見した。
所々錆びていた本体を慎重に、時間をかけて研磨して当時の姿を取り戻すことに成功した。

すると、青年は手榴弾を投げる。
グリムスは焦らず爆発範囲外に後退したが、それは彼が安全な位置で破裂した。大量の煙を放出するスモークグレネードだった。
煙が晴れるか、暗視装置でも無い限りは何も見えない。
しかし、ここは建物の中だ。
扉が閉まった建物の中は、当然ながら風は無い。
煙が晴れるにはかなりの時間がいる。
冷静に分析し、何をすべきか考えているグリムス。
相手は当然待ち構えているだろうから、煙から出れば一瞬で撃たれる。
だから、グリムスは手榴弾を投げることにした。
目には目を。手榴弾には手榴弾を。
見えないならば、牽制にならずとも爆風で煙を吹き飛ばす。
仮にすぐ近くにいたとしたら、手榴弾が来たと、多少は慌てるはず。
グリムスは、狙い打たれて誘爆するのを防ぐためバックパックの陰になるような位置に3つの手榴弾を装備している。
持っているのは、これまた骨董品のM35手榴弾。
スプレー缶の様な形のそれを、安全ピンを抜いて煙幕の中に投げる。
イタリア製の赤い悪魔と言われていた危険な手榴弾。
信管が地面にぶつかった衝撃で炸裂するタイプ。
なのだが、地面が固ければいいが、柔らかかったら爆発しない。
そして投げる強さが十分でなかった。彼にとってはそれで充分。不発弾となったM35手榴弾だが、
「手榴弾!・・・あれ?爆発しないぞ」
それを知らない青年が、投げ返そうとしたその瞬間。
爆発した。
不発弾だと思って油断させて、いきなり炸裂する。
これが敵も味方も扱いに困っていた理由。
だからグリムスは、1人になったタイミングで使うことにした。何かあっても被害があるのは敵兵と、最悪自分だけで済むからだ。
グリムスは戦闘服として採用しているタキシードの埃を払うと、再び92式の銃口を持ち上げる。
寄せ集め部隊は戦闘時の服を個人の自由にしているのだ。

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