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寄せ集め部隊/転向

メキシコから帰ってきた俺らは家を掃除した。ガリアーノがやりたいと言っていたが、言い出した俺がガリアーノから掃除機を奪い取った。
執事にやってもらうまでもない広さだし。
その間にクフォンが肩掛け鞄を持って出かけて行ったが、今朝言っていた事が引っ掛かった。
というのも、みんなでフレンチトーストを食べていると
「マイクさん、聞きたい事がありますがいいですか?」
高く小さい、聞いていると安らぐ声で
「なに?」
「今回の報酬金の使い方ですが、買いたい物があるので使ってもいいでしょうか?」
「なんだ、そんな事か。別にいいよ」
俺が返事をすると、表情を曇らせる。
「・・・高価な物ですけど」
「それでも大丈夫だ」
と言った。心配性なクフォンは2度目でやっと納得してくれた。
その分のお金を持って出かけて行った。
直後、電話が鳴って、緊急依頼がやってきたのは。
依頼人はオーストラリアの自治体。追いかけていたギャングを捕まえようとしていたが、逃げ足が速く俺たちに頼んできた。管轄外の地域のため、手を出せないらしい。詳細資料を郵送してくれて、1週間後に作戦開始。急に飛んできた依頼だったが、断る事はしない。

マイクたちが準備を始めた頃、クフォンは開店時間ピッタリに喫茶店パレッソの扉を叩いた。
2階建てのお店は1階が喫茶店だが、来る客は少ない。
更に、ここでは銃の販売もしている。他にも装備や軍の放出品も売っている。彼が定年退職してからも軍関係者や傭兵がやってくることもある知る人ぞ知る穴場。寄せ集め部隊は揃って常連。事あるごとにここに来ている。
そこではたまに驚くような骨董品も入荷していて、とんでもない物が見つかる。例えば、生産中止になった銃とか。
しかし、それとは別に、クフォンが連絡して手入れをしてもらった銃がある。今日はそれを取りに来た。更に、別の選択肢としてもう一つ銃を選んだ。希少な物で値は張るが、仲間は頷いてくれた。装備を充実させられるし、自分に合った物を探すのは良い事だと。
「いい選択だ」
パレッソが嬉しそうに店の奥から両手で大事そうに抱えて持ってきた銃が、クフォンが持ってきた銃。しかし、持ってきたと言っても簡単では無かった。
空港で止められるから、直接持ってくるのはできない。
だから、年の離れた兄に連絡して送ってもらった。陸軍にいる知り合いに頼んでここまで送ってもらって、クフォンの元に帰ってきていた。

緊迫感がありながらも意外とゆったりとした4日間は過ぎて、俺たちは国際空港の喫茶店でのんびりしていた。
「ここのカフェオレは個性的ですわね」
・・・果たして、お嬢様をこんな所に連れてきてよかったのだろうか。
渋い顔をする俺の心情を見透かしたのか、ノアルが
「私、言いましたわよ。出自を気にしなくてよいと。ここ寄せ集め部隊では、ただのノアルですわ」
結成時に言ったことを、また投げ掛けてくれた。気にしていた訳では無かったと言えば噓になるが、安上がりで申し訳なかっただけだった俺は、無理やり切り替えた。
「そ・・・そうだよな!ごめんな」
「邪魔をするようで悪いが、もうすぐ行ったほうが良さそうだよ」
灰色のジャケットを脱いだクリストファーが言った通り、飛行機の時間もしっかり意識している。あっと30分だ。

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