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キミとシャニムニ踊れたら プロローグ‐④


7

 翌日は、羽月さんは学校を休んだ。

 その次の日は、昨日の晴天から打って変わって、6月らしい大雨が降っていた。 
 朝練は休みの日とはいえ、いつもの習慣で学校に早めに到着してしまった。 
 一応、カッパは着用していたけれど、少し濡れたのはしょうがないよね。

 下駄箱に靴を入れて、一人、教室に向かい、あたしは荷物を置いた。 
 誰もいない教室、椅子に座っているのもシャクなので、予習復習をしようと思ったが、ガラじゃないので、寝ることにした。

 「おい、起きろ。ここは自室じゃねぇぞ」

 「へっ?はへ?」

 「おいおい、随分なご様子じゃないですか、暁ぃぃ」

 「せ、先生?何で、ここに?」

 「いやいや、私のクラスだし」

 「いや、授業は」

 そこには既にその他のクラスメイトが訪れていた。

 「羽月さん!」

 「今日は来るってさ」

 「そうなんだ。じゃあ」

 「おっと、待ちな」

 「ん?」

 先生は神妙な面持ちで、あたしを見つめた。

 「ありがとな、暁」

 「そんな、あたしは」

 「やりたいことやってるだけか?それ位が丁度いいのかもな」

 「先生?」

 先生は頭を搔きながら、あたしから一度も目線をそらさず、いつもの表情とは違う顔で話を続けた。

 「あんまり、抱え込むなよ。お前もあいつも中学生なんだからさ。気楽に気楽に」

 「それって・・・」

 「はい、終わり!ホームルームまでには戻れよ」

 「は、はい」

 あたしは教室を離れ、下駄箱へと駆け足で向かった。

 あたしは登校する同級生に挨拶をしながら、羽月さんを待っていた。

 その中には、昨日のあの2人もいた気がしたが、軽くしかとされた。
 八つ当たりはするもんじゃないな。

 「待ってくれてたの?」
 その声は紛れもなく、彼女の声だった。

 「今日は来るらしいって、聴いてたからさ」

 「なんで?」

 「なんで?って、何で?」

 「何で、待ってたの?何が目的なの?」

 「目的って言うなよな。そんなもん、決まってんじゃん」

 あたしは彼女に勢いよく、近づいて来た。

 「羽月、私と友達になってよ」

 こんなストレートな言葉じゃなければ、彼女とは対等になれない。 
 彼女を動かすには、言わなきゃ、分からない。 
 少なくとも、あたしはそう思っていた。

 「あんたと友達なんて、死んでもごめん」

 「えっ・・・・」 
 まさかの一言に少し驚いた。けれども、ここで折れたくはなかった。 羽月と友達になるには、踏み込みが甘い。

 「何で、私なんかと友達になりたいの?石倉先生の差し金?それとも」

 「友達って、そんな面倒な物なの?」

 「いや、知らんけど。私は一人がいいの。だから、ほっといてよ」

 あたしは下駄箱に靴を入れ、下履きに履き替えた瞬間の羽月の腕を握っていた。

 「な、なにやってんのよ、馬鹿」 
 彼女の抱えていたカバンが、あたしのみぞおちに当たった。
 あたしは満面の笑みを浮かべていた。

 「何で、笑顔なのよ?酷いことしたのに」

 「酷いことしたのあたしでしょ?先生から聞いてたのにさ」

 「あの担任、なんてことを」

 「いいんだよ、我慢しなくても。いいんだよ、わたしは羽月を受け止めたい。羽月の力になりたい。だから、私と」

 「私は、わたしは・・・・」

 考え込む彼女を後目にあたしは一歩も引きたくなかった。
 こんな荒療治で良くなるとか、漫画位なものだろう。
 変わるべきなのは、羽月じゃない。あたしなんだ。
 あたしは彼女から一度も視線を外さず、彼女を見つめていた。

 「私はあなたの友達にはなれない。だって、わたしはあんたが」

 「嫌いなんでしょ?そりゃ分かるよ。皆に好かれる為に生きてないし」

 「じゃあ、何で?」

 「羽月が好きだから。それだけじゃ、だめ?」

 この好きがLIKEなのか?LOVEなのか?あたしには分からない。 
 もしかすると今のあたしは危ういのかもしれない。
 けれど、バカなあたしはこうでなきゃ、友達にはなれない。

 「いちゃいちゃしてるとこ、悪いんだけど、そろそろ、予鈴鳴るよ。おはよう、ひよっち、暁ちゃん」 
 心配してか、知らずか、加納さんは降ってわいて出て来た。

 「いちゃいちゃしてない!いちゃいちゃって、何?おはよう」

 「なんだよ、突っ込めるじゃん。やっぱ、羽月は面白いな。ひよっちって、呼んじゃだめ?」

 「それ呼んでいいのは、加納さんだけ。次呼んだら、縁を切る」

 「縁を切ると言うことは、友達になっていいんだね」

 「そういう意味じゃないし、何でいきなり、呼び捨て?馴れ馴れしい。順序があるでしょ、順序が?」

 「順序って、何?呼び方なんて、自由じゃん」

 「うっざ、これだから、天然陽キャは手に負えない」

 「天然陽キャって、どういうこと?」

 「あんたは幼稚園児か。いちいち、突っ込んでくんな!」

 「もういいから、ホームルーム始まるよ」

 未来も過去も関係ない。あたしたちは何だって出来る。 
 けれど、あたしの自己満足を、あたしを変えてくれたのは、本当にあたしを助けてくれたのは、他の誰でもない妃夜だったと思う。 
 少なくとも、あたしたちのくだらなくも、何処にでもあるような青春の物語は始まったばかりだ。

 「言い忘れてたことがあるの」

 「ん?」

 「あ、ありがとう。3回も助けてくれて、それだけ」

 「い、いやぁ、照れますなぁ、えっへへへへ」

 「キモ」

 「だって、さっきから罵倒ばっかだったから、素直に照れるじゃん」

 「言わなきゃ良かった」

 「もっと、頼ってもいいんだよ」

 「あーあ、この女の足元に弾丸みたいな隕石落ちて来ないかな?」

 「酷すぎない?流石に泣いちゃうんだけど」

 「お前等、いちゃいちゃしてないで、ホームルーム始めんぞ」

 「いちゃいちゃしてません!」

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