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あんたとシャニムニ踊りたい 第6話ー⑥「クレープ食べに行こう」


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 「中さん、それはドン引きっすわ・・・」

 「姉さん、回りくどいと言うか、最低・・・信じてたのに・・・」

 取り巻きの冷たい視線に、不良の表情はどんどん曇っていくように見えた。

 「何がわるい・・・んだよ・・・」 
 震えるような声の不良に私は何だか、酷いことをした気がした。

 「あっ、ごめん。そろそろ、部活始まるわ。幽霊部員は、職員室行けよ」

 「わたくしも部活ですわ。Bonjour à tous.」

 「Marie went to club activities .Mariehave to go.」
 (マリーも部活に行ってくるわ、ほな行ってきます)

 「ごめん、羽月さん。頑張ってね!」

 先ほどまでのメンバーは皆、その場を後にして行った。

 教室には、私と不良三人だけが、残っていた。

 「さようなら、二度と私の前に現れないで」

 私はそのまま、教室を後にした。 
 取り巻きが止めると思ったが、止める気配も無く、不良は呆然としたまま、その場を動くことは無かったらしい。

 不良が言わんとせんことは大いに想像が出来る。 
 要するに彼女は、暁と仲直りする為に、私を出汁にしたいのだろう。 
 きっと、好きって、そっちの好きのことだ。 
 それにしては、言葉が強かった気がしたのは、きっと、気のせいに違いないあるまい。
 最近は歩くことや、軽めのストレッチを週に三回行うよう、心がけているが、相手の体格は私の倍鍛えている人のそれに等しい。 
 人間は何処まで行っても、獣。自分の都合でしか動けない生物なのだと。

 私は一人、下駄箱に靴を履き替え、校舎を後にしようとした時だった。

 「こんな私の何処が良いんだか」
 〔妃夜は最高に私のマイエンジェルだよ]

 「誰?」 
 振り返ると誰も居なかった。 
 幻聴が聴こえて来る程、私は疲れているのだろう。 
 その時はそう考えて、明確な思考がまとまらないまま、思考を放棄した。

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