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安倍晋三回顧録


内容

我が国で通算在職日数が歴代1位の安倍晋三元首相
凶弾に倒れて衝撃的な最後を迎えた安倍さんのインタビュー形式の回顧録である。

第1章は近年のコロナ対応の話題が進み、総理を退任するまでを振り返っている。

第2章からは第一次安倍内閣から、退陣、政権交代、政権奪取、第二次安倍内閣、という実際の年数の流れから、国内政治、外交、などテーマをまとめつつ、その時々のエピソードを踏まえながら進む。

内閣総理大臣というこの国の代表ともいえる仕事を、
実際に勤めた人の想いが読めるというのは興味深い。

インタビューの聞き手の方も、
決して批判的ではなく、
良心的な質問だけでなく、
時には耳が痛くなるような質問も訊く。

それら一つ一つに否定も肯定も交えながら、
元総理の言葉をそのまま記載し、
400ページを超える分厚い1冊。



感想

読みごたえは抜群。

政治に関心のない一般人が、
これほどのめりこめる政治本も滅多にないだろう。

これから総理を目指す与党議員や、
野党が政権取った場合を想定した野党議員の本。

こうした本には今後こういう政策をやりたい、
こういう方向性を目指したい、
等が記載されている。


しかしながらこの本は実際に総理大臣を経験した人の回顧録である。
それも歴代で最も長くその職に勤めた人の、である。


これほど政治の世界に強烈な興味をもたらす本なんてあるのだろうか?

総理経験の無い議員が考える政策は、
時には机上の空論のように思えることも少なくない。

しかしながらこれは違う。

実際にどういう考えで、
どういうことをしたのか。
海外の要人とどんな会話をしたのか。

普通の一個人の体験記ではないリアリティ溢れるこの書物。


総理大臣というのはどこか遠い存在のように感じるかもしれないが、
100人くらいを軽く吹っ飛ばす超人がやっているわけでもなく、
100年先の未来を見通す超能力者がやっているわけでもない。

当然ながら外国の要人も同じであり、
同じ人間同士が、
国益を最大限に考え、
人間味あふれる言葉で進む外交、首脳会談。

特にこのあたりは非常に興味深かった。


トランプ大統領が実は話をよく聴いてくれる人だとか

習主席が強烈なリアリストだったとか

メルケル首相はとぼけるのが得意だったり

アボット首相に助けられたこととか


ニュースでしか見ないような外国の要人も、
一人の個性的な人間であり、
性格も人それぞれ。


最も興味深かったのは、
プーチン大統領との会談。

意外な性格や、
日本が欧米と異なる動きをした際の反応、
繰り返し会談を行った結末。

現代の情勢による先入観を取り払って読んでもらいたい内容である。


なんせ全てにリアリティがある。
選挙
国会質疑
外交
要人との初対面
内閣改造


これらは遠い世界ではなく、
本気の人間同士が正面からぶつかることで進む物語である。

政治に関心があるなしではなく、
ニュースで世界の事なんて知っているとかではなく、

純粋な気持ちで読んでほしい。


この国で最も長い期間
国のトップで仕事をした人の話を。


国を二分するような政治の中心に存在し

亡くなった後も国葬で物議をかもし

そして今でもその名を耳にする機会も多い


そんな政治家が果たしてこの国で今後生まれるのだろうか。


この国で暮らす当たり前の毎日を
未来永劫当たり前にするために
信念をかけて政治の世界で仕事していたこの人の想いを

今からでも遅くない

見つけた人は是非手に取って
どこからでもいいので読み始めてほしい


おススメ度

☆☆☆
政治への関心度は全く関係ない

一人の仕事人、人間としての、
元総理の想いを読んでほしい。

この国で暮らす全ての人におススメする一冊

好きとか嫌いとか
このような人にはいろいろな感情がそれぞれにあると推測されるが

そんな人も
人間味を探して読み進めてほしい本


タイトル:安倍晋三回顧録
著者:安倍晋三 (著), 橋本五郎 (その他), 尾山宏 (その他), 北村滋 (監修)
出版:中央公論新社

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