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「線」が画面にもたらす効果

「線」の力

画面の構図を構成する要素の中に「線」がある。

線を1本引いただけでも、それが水平に引かれているのか、垂直に立っているのか、はたまた斜めに流れているのかで意味合いが変わってくる(図1)。また、その線が画面の真ん中を通っているのか、または中心からずれているのかで視聴者に与える感覚は異なる(図2)。

図1 「線」の向き
図2 「線」の位置



そして線が2本以上引かれたとき、その線が同じ方向を向いて調和しているのか、はたまた交差していて対比をなしているのかという関係性が生まれる(図3)。また、その線は近いのか、遠いのか。規則的に並んでいるのか、不規則に並んでいるのか。規則的に並んでいるとある意味の非現実性や神聖さ、退屈さを視聴者に与える要因になり、不規則に分散していれば自然な感じを与える要因になる。

図3 「線」同士の関係

このように線は画面を構成する基本的な要素であり、視聴者にあるイメージを与える大きな力を持っている

実践編

実際に私も線について考えてみた。
題材は全て、新海誠監督の作品から切り取った。(画像についてはインターネット上に公開されているものを使用させていただいた。)

まず、君の名は。の彗星が降り注ぐシーン(図4)。

図4 彗星が降り注ぐ(『君の名は。』より)

このシーンを構成する「線」は主に、
①画面中心に垂直に立つ人物(主人公の瀧くん)
②水平に広がる、街並みと空との境界線
③空に流れる彗星

この3つであると考えられる(図5)。

図5 図4の抽象化

このシーンで最も目につくのは、③の彗星の「線」であると感じた。なぜなら、他の二つが水平と垂直で構成され、画面の枠と調和しているのに対し、それらと対立をなす斜めの曲線だからである。
③の彗星の線は、斜めの曲線である。これは画面の枠(水平垂直からなる4つの線)と対比をなしている。これによって、彗星が流れる勢いやエネルギーを感じさせるドラマチックな画面になっていると考えることができる。

また、②の水平線が画面の端から端まで長く引かれることにより、広大さをより一層感じさせている。
最後に、①の垂直な線が中心に立っていることにより、この場面の静的な感じをより強調している。また、ある意味では瀧くんの日常感や、日常の退屈さというものを表しているのかもしれないとも感じた。

そして③の線と、①、②の線が対比されていることにより、彗星の線が一段とダイナミックさを増し、視聴者の心に残るワンシーンになっていると感じる。


図6 重ね合わせ


他の2シーンについては次回考察する。

このように今後、実際のアニメのワンシーンやイラスト、写真等を用いて、「線」がどのように作用しているのか、どのような印象を与えているのかを考察していこうと思う。

注意

筆者もまだトレーニング段階であるので、このページに書いてあること全てが正しいということではない。
また、読者の方々がそれぞれのシーンにおいて、どのように感じたのか、コメントいただけると幸いである。そのコメントが、この記事を読んでくれた人に気づきを与え、私たちの目を養うきっかけになると思う。


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