
地球の恵 ぬくもりの秘湯 乳頭温泉・玉川温泉
ここ秋田の乳頭温泉郷には雪がよく似合う。
雪がしんしんと舞う凍てつく寒さの中、
冷えた体をとろんとした乳白色のお湯に浮かべてみる。
やわらかいぬくもりが全身を包む。
あたり一面しんとした雪景色、なにも無い。
日頃の緊張がほどけて、心身共にゆるんでいくのを感じる。

乳頭温泉郷は、秋田県仙北市にある十和田・八幡平国立公園の山麓に点在する7つの温泉郷のこと。
350年以上の歴史があり、ブナの原生林に囲まれていて、自然に囲まれて情緒あふれる時間を過ごすことができる。
それぞれ独自の源泉をもつ10種類以上の温泉があり、湯めぐりを楽しむこともできる。
【鶴の湯】
乳頭温泉郷の中でも最も古い歴史を持つのが「鶴の湯」。
秋田藩主の湯治場だった由緒ある温泉で
警護の武士が詰めたという茅葺き屋根の長屋「本陣」はなかなか風情がある。

豪雪を凌ぐ生活をそのままに感じさせる、素朴で何の飾りっ気もない湯宿。

雪が降っていたためか、女性の露天風呂は貸切だった。
はらはらと舞う雪が、淡い緑色がかったお湯に溶けては消えていく。
だんだんと肌が柔らかくなっていくのが気持ちいい。


湯けむりと雪景色の幻想的な情景の中、
黒湯、白湯、中の湯、滝の湯といった自噴泉が堪能できる。

1月は、屋根がつぶれないか心配になるほどの豪雪。
施設では、長靴を貸してくれた。

温泉のあとは名物の「山芋鍋」で体の中からも暖を取ろう。
素朴な温泉の素朴なお料理にほっこり♪

【妙の湯】
金の湯と銀の湯という2つの源泉をもつ「妙の湯」。
雪に抱かれながら、渓流を臨む露天は野趣溢れている。



この宿は随所随所に細やかな配慮を感じる。
例えば、脱衣所の床がほんのりと暖かく、足が冷えずに済むことや、
女性風呂にはうっすうらとJazzが流れていたり、
館内はやわらかい間接照明が施されていることなどなど…

女将はもともと東京の建設会社に勤務されていた方だと聞き、
なるほどと、その心遣いに納得した。

器にも女性らしいやわらかさを感じる。
かしこまらず、適度な距離感のあるおもてなしが心地いい宿だった。
【玉川温泉】

乳頭温泉郷から車で1時間ほどのところ、八幡平の麓に玉川温泉はある。
青森のヒバの香る大浴場には、源泉100%から弱酸性浴槽など11種類の浴槽があり、体調に合わせて入浴方法を選べる。
玉川温泉は正に「湯治」と呼ぶに相応しい名湯だ。

源泉は湧出量日本一を誇るという!
硫黄臭立ち込める中、白煙をあげ、熱湯が噴き上がる様はまさに圧巻!

玉川温泉の源泉は強酸性の泉質で、ラジウムを含有しているとのこと。
ラジウムは生体を活性化させる効果が強く、極めて人体に有効だそう。
「低放射線ホルミシス効果」といって、医学界でも注目されている。
実際わたしの友人も、医師から玉川温泉での湯治を勧められた。
「ホルミシス治療」とは、
地球上に存在するラドンなどの放射線物質を微量に用いることで、
免疫機能や抗酸化作用などを高めること。
ここ玉川温泉と新玉川温泉は、医療機関と連携を図り、
温泉施設利用料金と交通費は、所得税医療費控除の対象になるという。

湯治で知られる「ラドン温泉(ラジウム温泉)」は、生体活性作用が強く、この微量の放射線が新陳代謝の促進や、神経痛などの病気を改善する効果があるといわれています。
入浴、飲泉の効果は他にも様々で、自律神経失調症、精神疲労、喘息、慢性気管支炎、皮膚疾患、筋肉疲労など、幅広い効果が期待できるようです。
また、1992年の岡山大学の研究では、ラジウム温泉で有名な鳥取県の三朝温泉地区の住民のがん死亡率が、全国の約半分であったことがわかっています。
食事も地産地消のお野菜をふんだんに使ったお味噌汁やお惣菜、お魚料理などが所狭しと並んでいて、好きなものを好きなだけ頂ける。
温泉と食事とで、体の中からもきれいになりそうだ。
古今東西、温泉の効能というのは誰しも知るところだが、
その効果は、身体の健康に効果的だということのみならず、
ほっこりとしたぬくもりに包まれることで、
心もゆったりと温かい気持ちになれるのがいい。
実際、肌からの刺激は五感の中でも最も原始的な感覚でとても重要。
失うと生死にも関わる恐れがあるそうだ。
昨今、殺伐とした都会では心を病んでいる人も少なくないと聞く。
そんな時、ぬくもりを感じるこんな温泉に抱かれるのも悪くないのではないか…?
この地球に暮らす私たちにとって、「温泉は地球の恵」とさえ感じる。
