『灰色の北壁』真保裕一
Great things are happened when the men and the mountains met- William Blake
この名言が話の内容にぴったりなを3作品を収録した真保裕一の短編集。
収録作品は、『黒部の羆』、タイトルにもなっている『灰色の北壁』、『雪の慰霊碑』の3作品を収録。
以下はそれぞれの話の感想まとめ。
『黒部の羆』
山小屋に勤める男が、遭難した学生を助ける話。
僕がアホだからかもしれないが、時系列がごちゃごちゃしていて読みにくい。助けに行った学生の視点と、助けに行く黒部の羆側の視点から描かれている。学生の視点からかと思いきや、黒部の羆の回想シーンだったりと、叙述トリックと情報量で混乱させて謎を隠すスタイルだから、戻っては進みを繰り返しながら読み切った。もし、この物語を象徴する台詞である「山で起きたことは、理解したうえで語り継ぐ」、という意図のもとやってるとしたら嵌められたようで悔しい。あと、謎の求愛されている人がいる設定。なんか人物像を描く時間がないからか取ってつけたようで嫌い。
『灰色の北壁』
タイトル作。面白い。
2人の男とそれを追う小説家の話。疑惑の登攀の裏にはどんなことがあったのか、それを紐解いていくミステリー。
個人的にはこう言うタイプの推理小説大好きなのでそれだけで100点。
Dan Brown好きだからこう言うのやってくれるのは嬉しい。
やっぱり、タイトル作が面白くないと締まらないよね。
『雪の慰霊碑』
今回の中で1番好き。
好きだけど、語ることはない。
設定はありきたりだし、何故か死んだ息子の婚約者から求愛されているという謎設定にしたのか。
その時点で興醒め。まあ、本筋とあまり関係ないところではあるからよし。
仮に、地上の煩わしさから解放されて己との対話を強調するためだとしたら、してやられた様で悔しい。こういう細かく練られた設定を持ってくるあたりミステリー作家らしくて好き。
これ読んだら山に上りたくなったので、
年末に登ることにしよう。
まずは棒折山あたりから始めてみようかな。