採用における評価と選定:Week2 科学、組織的機能、そしてアジェンダ
採用において面接はもっとも役に立たない、というのが最大の学びだった。
<まとめ・大事だと思ったこと>
・採用のプロセスで行ったパフォーマンスの予測がその後正しかったか比較しフィードバックループを回すことが重要。
・面接は採用の方法としてはイマイチで、入社後のパフォーマンスを予測する制度は他の方法に比べて低いことが研究からわかっている。
<授業の内容>
【科学としての選定と評価】
・選定と評価を支える原則
-原則1:個人には違いがあるため、全ての人が全ての仕事に等しく適することはないため、人と仕事のマッチングは重要
-原則2:未来の行動は予測可能であるため、候補者の将来のパフォーマンスを予測することが目的となる
・パフォーマンスは2種類ある。
-典型的パフォーマンス:個人がやること(主に若手の評価に有効)
-最大のパフォーマンス:個人ができること(主にシニアの評価に有効)
・採用のプロセスで行ったパフォーマンスの予測がその後正しかったか比較しフィードバックループを回すことが重要。
・選定と評価方法における基準
-信頼性:長期間にわたり安定した結果をもたらすか、評価項目に一貫性があるか
-有効性:当該属性を測定できているか
-実効性:選考プロセスに効果があるか
【組織的機能としての選定と評価】
・HRMと組織パフォーマンスのリンクにおける前提
-従業員は競争優位性の第一の源泉である
-HRMの質は組織パフォーマンスに決定的な影響を与える
-HRの活動はスキルがありパフォーマンスの高い労働力の開発に繋がる
-労働力は機能的な行動に従事する
-競争優位の源泉となる労働力は、業務パフォーマンス、収益性、市場価値の増加に繋がる
・3つの最もよく知られたHRMと組織パフォーマンスのリンク
-Best-fit:様々なHRMの実践方法を異なるビジネスに当てはめる
・従業員の興味を無視してしまう傾向がある
-Best-practice:実践方法の特定のセットを用いてパフォーマンスを改善する
・制度や文化、雇用関係などの違いを無視しがち
・景気が良い時に出てくる傾向がある
-Resource-based view:組織戦略はコアコンピテンスの特定と開発により作られ、個人の特性に着目する
・特に国や業界レベルのHRMや雇用関係などの環境の重要性を軽く見てしまう
・これらの3つのアプローチは"重量級"のHRMの実践方法に頼っている。
-重量級:スキルと給与が高く、職が安全で満足の行くものである、ということ
-従業員を長期間に渡り組織からの投資を受ける人と見なす
・多くの企業では、給与は低く、トレーニングと成長の機会は最小限のまま。
【アジェンダとしての選定と評価】
・ブラックボックス
ーHRMとパフォーマンスのリンクを測ろうとするものの、何がinputで何がoutputなのかはっきりしない
ーそれゆえ、科学的な手続きとしての選定と評価に価値がある。
ーただし、HRの戦略は人間の解釈、対立、推測、正当化の成果であることは無視してはならない。
・タレントマネジメント
ー選定と評価をタレントマネジメントの関係について、CIPDは以下のようなMapを作っている。
・採用:適切なタイミングとコストで、適切な役割に人を惹きつけ選定すること
・タレントマネジメント:タレントの発掘とエンゲージメント、計画を通してポテンシャルを最大化すること
https://peopleprofession.cipd.org/profession-map
ー多くの実務家がタレントマネジメントの重要性を唱えるが、理論はほとんど構築されていない。
-タレントはエリートを意味することが多く、階層や性別などの倫理的な懸念に繋がるとも言われる。
・HRMの心理学化
ーKaufmanは、HRMの心理学化により、マクロレベルのHRMの成果が個人レベルの心理的、行動科学的要因に減じられてしまっている、と言っている。
-HRMは学際的であり、組織心理学はその一旦を担うが、組織心理学は多様化し、批判的になってきている。
<課題論文1>
授業でも紹介されていた論文。かなり難解…。仕事と雇用は複雑であるため、この分野の研究は学際的であるだけでなく、多様な視点からアプローチすべき、と提言している。雇用関係を捉える視点として「参照フレーム」を用いて説明しており、これには以下が含まれる。
・Neoliberal Egoist:雇用者と被雇用者は、それぞれが自身の利益を追い求める理性的なエージェントであると捉える
・Critical:雇用関係は不平等な集団間の利害関係の対立から成り立っていると捉える
・Pluralist:雇用者と従業員は、共通の利益と相反する利益の混合物を持っていると捉える
・Unitarist:雇用者と従業員がすべての利益の統一を共有していると捉える
Budd, J.W. (2020). The psychologisation of employment relations, alternative models of the employment relationship, and the OB turn. Human Resource Management Journal, 30, 73-83.
<課題論文2>
採用において、面接が最も効果的と考えられているが、仕事のパフォーマンスをもっとも良く予測できる採用時のツールは筆記試験である、という研究があるにも関わらず、人々は何故そうした発見を実務で適応しないのか、について書かれた論文。その理由は、
・人は選択を確率的なものであり、誤差の対象であると考えることができない
・人間の行動の予測は経験によって改善されるという暗黙の信念があるから
らしい。
Highhouse, S. (2008). Stubborn reliance on intuition and subjectivity in employee selection. Industrial and Organizational Psychology, 1, 333–342.
<課題論文3>
これは論文ではなくWeb上の記事。これもいくつかの研究を引用し、採用における面接の無力さを解説している。面接をやるならStructured(予め質問を設計しておく)でやるのが良いらしい。
Chamorro-Premuzic, T. (2018, April 6). What if we killed the job interview? Fast Company. Retrieved from https://www.fastcompany.com/40579524/what-if-we-killed-the-job-interview on April 30, 2020.