いかなる花の咲くやらん 第8章第1話 祐常を追え!
和田義盛が湯本から三浦へ帰ろうとしていた時、大磯の辺りでお昼になった。子供たちもいたので、どこかで昼餉を食べようということになった。連れの朝比奈義秀と、「せっかく大磯に来たのだから、最近話題の虎という踊り子を座敷に呼んでみたい」
「曽我十郎殿と、良い仲だそうですが、ちょうど、十郎殿も大磯にいらっしゃるとききました」
「それは、ちょうど良い。十郎殿とも久しぶりにお会いしたい」
というながれで、二人を呼んで、酒宴が開かれた。
「本当に美しい方ですな。十郎殿が羨ましい」
「ところで、五郎殿はご一緒ではないのですか」
「五郎もおりますよ。お声がかからなかったので、遠慮して、控えております」
「何を、遠慮することがあるものか。五郎殿にもお会いしたい。ぜひ、お呼び下さい」直に五郎も座に並び、酒宴は続けられた。
「ああ、楽しかった。そろそろ夕方ですね。三浦まで今日のうちに帰らなければなりません。お暇致します」
義盛一行が帰った後へ亀若が来た。
「亀若ちゃん遅かったわね。他にお客さん?」
「ええ、今まで工藤祐経様のお座敷に居りました。たった今お帰りになったばっかりで」
「なに、工藤祐経と。兄上」
兄弟は目を合わせうなずきあった。
「急用ができましたので、ここで失礼させていただきます。永遠さん、また」
二人は、大急ぎで工藤祐経経を追った。
すぐに追いついたが、大勢のお供がいて手が出せなかった。
「すぐに大磯にもどっては、工藤祐経を追って出たと思われてしますので、三浦まで馬を走らせてから、大磯へ戻りましょう」
次回 第8章第2話 「亀若の決意」に続く
参考文献 小学館「曽我物語」新編日本古典文学全集53
著者撮影
第1話はこちらから。
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