築39年の1DKで”銭湯ぐらし”を実践中。くらしを創る楽しさの秘訣とは?
少しずつ暖かくなってきて、春の気配を感じるようになってきました。ちょうど一年前、高円寺で銭湯通いをしながら暮らす女性2人にインタビューを行いました。(「高円寺に住みませんか?」風呂なしアパート住みの女子が高円寺愛を語る。」)
今回はお宅訪問企画の第二弾として、同じく「銭湯ぐらし」のメンバーであり、フリーランスのデザイナーの神岡真拓さんに、小杉湯やとなりを中心としたくらし方について話をうかがいました。
神岡さんの住むアパートは、小杉湯となりから徒歩2、3分。商店街からわき道に入った静かな住宅エリアにありました。
このアパートの玄関は、隣の部屋の住人との共同利用になっています。階段を登ってドアを開けると、笑顔でお出迎えしてくれました。
神岡邸にお邪魔します。
部屋に入った瞬間、「おぉ~!」と思わず声が出てしまうような、築39年の部屋と調和した、レトロな雰囲気。
古家具、レコード、ラジオ、本、雑貨。ふんわりと漂うお香の香り。最初からこういう場所であったように、全てが調和していて、懐かしくて、なんだかとっても落ち着きます。
お風呂の優先順位はとことん下げて、14畳以上の広さを確保
-この物件は、どうやって出会ったんですか?
小杉湯となりの会員だったので、小杉湯の近くに住みたいと思って、小杉湯三代目の平松さんに紹介してもらって、東京銭湯ふ動産で探してもらいました。
部屋探しの条件は、「14畳以上で、銭湯通いを前提にしていたので風呂は狭くてもいい」。友達を家に呼びたかったので、広さは重視しましたね。
-置いてあるすべての古家具がぴったりと収まっています。どうやって買い揃えたのですか?
引っ越して3週間くらいかけて、設計ができる友達に測量してもらって、サイズ感を把握してから、古家具屋さんやメルカリで買い揃えました。古家具屋さんのインスタをみてまわって、最近はたくさん写真をのせてくれるところがあるので、よく使っています。
となりの会員になるまで銭湯には全く入っていませんでした
初めての一人暮らしで、部屋づくりには、自分の願望を反映できたという神岡さん。自分だけの充実した城をもちながら、銭湯通いをする暮らしぶりについて伺いました。
-今は銭湯に毎日入っているんですか?
ほぼ毎日ですね。家の風呂はバランス窯で狭いので、あまり使わないです。
実は、小杉湯となり会員になるまで、銭湯に入る習慣はなかったんです。高円寺には住んでいたものの、小杉湯に入ったことがなくて。となりの会員になったことをきっかけに入り始めました。
-銭湯好きが多い会員さんには珍しいタイプかもしれませんね。家風呂ではなく、毎日のように銭湯に通うようになって、何か変化はありましたか?
僕は結構怠惰な人間なので、お風呂が面倒くさいんですよね。3日に1回くらいでいいんじゃないかと思うくらい。仕事が忙しいと、家風呂だと本当にそうなりかねないので、銭湯に行くことで、毎日風呂にちゃんと入る習慣にもなっていますね。
大きいお風呂に入るのは気持ちいいし、ちょうどイベントで何かを売っていたりとか、行くまでが散歩になったりとか、銭湯ってお風呂の周辺に色々とあることが、個人的にはくらしを豊かにしている感覚もあります。
-神岡さんはフリーランスで、仕事と生活が密接していると思いますが、銭湯がリフレッシュになっている感覚もありますか?
寝るギリギリまで仕事しちゃうので、銭湯にいくことが、「夜になったよ」っていう合図になっていますね。
小杉湯となりは仕事場所としても使っていて、週3、4回くらい行ってます。2階で2時間くらい集中して仕事をして、1階に降りてきて、いる人と話す、みたいに使い分けられるようになりました。仕事をしていると、時に過集中状態になってしまうこともあって、仕事と生活がミックスしているフリーランスゆえのライフスタイルなのですが、アクセルベタ踏みじゃなくて、ちょうどいい加減速ができるようになりました。最近のなかでは大きな成長だと思います。
-神岡さんにとって小杉湯となりはどんな存在ですか?
そうですね、、仕事場であって、生活の拠点でもある。生活の拠点ってだいたい家だけど、となりはちょっとまちに出ている場所。となりで人と話すことで高円寺の街のことが知れたり、いい意味で関わろうと思ってなくても、巻き込まれる状況がある。くらしを広げてくれるというか、知らない世界を勝手にみせてくれるような。そういう意味では「まちの観光案内所」という言葉がすごくしっくりきますね。
小杉湯となりでは1日に数時間、アルバイトスタッフが不在で、有志の会員さんが、小杉湯となりの居心地を守り、運営する「家守制度」があります。銭湯の浴室がお客さん同士でマナーを守ることで成立しているように、会員さん自らが小杉湯となりを守ることで、そこで感じた気付きを運営で改善します。
家守として小杉湯となりと関わる経験を通じて、神岡さんは気が付いたことがあるといいます。
お金を払っていると、「消費すること」と捉えがちですが、小杉湯となりは会員費を払いながらも、自分たちが使いやすいように場を育てている感覚です。
どんなものでもお金をだせばたいてい手に入ることができるけれど、欲しいものを0からつくるきっかけを、となりがくれます。くらしをクリエーションしている感覚はありますね。
ないことを面白がれたら勝ち
もともとロゴデザインを得意としている神岡さんですが、小杉湯となり会員になってからは、小杉湯となり-はなれのパンフレットデザインに始まり、写真部の活動、夏夜市や家守のロゴデザインなど、驚くほどのスピードで自らアウトプットを生み出していきます。
-神岡さんをみていると、いい意味で色々な企画に巻き込まれながら、自ら楽しんでかたちにしていってるようにみえます。これらはほとんどの場合、金銭的な報酬は発生せず、厚意でやってくれていますが、忙しい中で手を動かすモチベーションは何ですか?
たしかにそうかもしれません(笑)。一つは僕のベースの価値観で、何でも面白がれちゃうところ。こういうところもいいなとか、これもやったことないけど、いいかもって思える。「どうせ自分が関わるなら、自分が満足するようにしたい」っていう、超利己的だけど、結果的に周りが喜んでくれるといいな、とささやかに期待をしながらやっています。
僕は「対価」という大きなものの中に、お金がひとつの要素としてあると思っていて、お金以外の部分に価値を感じるかは自分の「見立て」で変わる。なにをメリットと感じるか、そこを面白がれたら勝ちだと思っています。
-見立て、ですか。
「ないものから、あるをつくる」は難しいけど、「あるようにみる」ことは、逆におもしろいと思います。例えば、まちのお風呂である銭湯を「家風呂」だと思う。家風呂が2個あるとなると、1個は狭くていいな、とか(笑)。
風呂なしアパートっていうと、貧困と結び付く面もありますが、それだけだと危うい感じがします。僕は人を招くのが好きだから、家賃もそこそこかけて、部屋が広くて、狭い風呂の家を選びました。豊かさにかけるお金、どこにお金をかけるかですね。
他の人からみたら奇天烈かもしれないけど、僕のなかではくらしの豊かさを担保するのに必要な条件だったんです。
フリーランスだからこそ、小杉湯に行くことでの一日の区切り、となりでの雑談や趣味の広がりなど、自分のくらしの中に、他者が自然と入り込み、共有する感覚に助けられていると語る神岡さん。
神岡さんが大切にしている、物事への「見立て」は、彼自身の仕事や暮らしの価値観にもつながっています。「ない」ことを毒とせず、今あるものに目をむけ、面白がることから生まれる創造性。その遊び心にこそ彼の生き方のセンスが詰まっているような気がしました。
新生活は小杉湯となりで始めよう
自分の家はコンパクトに、銭湯を起点にまち全体を「大きな家」と見立てて暮らせば、新たな地縁や趣味の広がりが生まれるかもしれません。
小杉湯となりでは「銭湯のある暮らし」の魅力を伝えて広げていくために、銭湯を生活に取り入れてくれるご近所さんを増やしたいと考えています。
そこで近隣への引っ越しと合わせて、小杉湯となりに入会される方に限り、入会費が無料になるキャンペーンをはじめました。
会員を検討していただいている方には、高円寺・中央線エリアの物件のご紹介、引っ越し相談もさせていただきます。自分にフィットした暮らし方に出会うお手伝いができればと思います。
興味がある方は下記グーグルフォームよりお問い合わせください。
※入会費無料キャンペーンは、入会前に問い合わせフォームから連絡があった方に限ります。
小杉湯となりは、いつでも見学を受け付けているので、気になる方はぜひこちらよりお申込みください。
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取材・文:かとゆり
写真:川原健太