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【トラペジウム】90分でまとめる内容ではない【映画レビュー】

原作は未読勢なので、本映画のみのレビューとなっております。また映画に関するネタバレや、ファンの方には不快なレビューとなっております。
そうした方には未読のままブラウザバックを強く薦めます。

脚本★☆☆☆☆
映像★★★★★
演出☆☆☆☆☆
演技★★★★☆
設定★★★★☆
総合15/25

ホシ付けが定番化するかは微妙なところ

原作は読んでいないが・・・

 何年か前、あの乃木坂の高山一実さんが書いた小説ということで、結構騒がれていた印象があります。それも好意的に捉えられていた印象だったので、作品としての評価は高かったのでしょう。
 それをClover Worksが制作するのなら、間違いないものになるんじゃない?とそこそこの期待感で劇場へ向かいました。

明日のチケットで今日鑑賞してしまいました。※イオンシネマ新潟南様には謝罪と通達済です。

冒頭30分の仲間集め

 主人公の東を含め、南房の東西南北の美少女を集めてまわるというのは、王道展開といいますか、好きなやつでした。
 彼女の夢がアイドルになる事だというのはオープニングを見ていれば分かる事なので、ある種集めた彼女たちを踏み台として割り切っている様子も描かれていて、黒いなあと思いつつも、まあアリだなと思って見ていました。

心理描写が下手というか、登場人物に共感ができない

シンジの場合

 まず最初に違和感を覚えたのは、シンジ君の存在です。工業高校だから女子生徒の数が極めて少ない、というのは分かります。
 だから違う制服を着ている東を見て、自転車の鍵を開けられないほど動揺してしまうというシーンなんですけど、じゃあ東は物凄い美少女設定なのかというと、そうではない。
 他の3名に比べて没個性的である事に葛藤を覚えるシーンがあったし、アイドルオーディションに全て落選したという過去も持っている。
 ストライクゾーンが人それぞれというのは分かりますけど、何かちょっと違うんじゃない?と。
 その後の会話で「僕、単純に女子高生の制服姿が好きなんだ」って言って東にドン引きされる描写が入るわけですけど、ごめん良くわかんない。
 じゃあ思春期特有の女の子全般苦手なやつかと思ったら、そういうわけでもない。

 そしてくるみとの邂逅シーン。明らかにシンジに懐いているような描写が入ったのに、人見知りな性格のせいで東には拒絶反応を示し逃げてしまうくるみ。
 てっきりシンジもロボット研究会のメンバーで、そのおかげでくるみと仲が良いのかと思えば、そういうわけでもない。

 くるみとシンジとの絡みをほとんど見せてもらっていないので、何故くるみがシンジには心を開いているのかが全く分からないんです。同じ高校だからという理由では薄すぎる事は高校まで通った事のある方ならお分かりでしょう。
 後々になってシンジは実は行動力のあるイイヤツだというのは分かるわけですけど、視聴者が察せるようにするのが演出で、察しろと押し付けるのはただの怠慢だと思うんです。

北ちゃんの場合

 北ちゃんに違和感を覚えたのは物語中盤。東西南北メンバーと共にボランティア活動している際、メディアからの出演依頼がくるシーン。実質的なリーダーを務める東の言葉に、北ちゃんが傷つくシーンがありましたよね。

「私たちの事、何でボランティア仲間って紹介したの?その前から友達だったのに。友達って言ってほしかったのに!」

 と怒りをぶつけるシーン。私的には、怒りの矛先そっちなんだ!?っていう感じだったんですよね。
 北ちゃんは過去の経緯からボランティア活動に勤しむ高校生でした。私は東がインタビューで、ボランティアを道具化した事に許せなくて怒ったのだと思っていたんです。

 そしたら友達だって言ってほしかった!って、うーん・・・。違うなあ。高校生はまだ子供だけれど、そこまで子供じゃないよ。ましてボランティア活動で大人に囲まれて過ごして、彼氏作って3周年とか言っている子が、あんな幼稚かね?って思うんです。そういう発言をしてしまう理由は後々分かるわけですけど、それにしたって違うなあと。

 主人公の子はもう言うまでもなく共感させないように演出しているのでそこは良いんですけど、他のキャラクターたちにも全然共感できないんですよね。

成功体験から挫折までの時間があまりにも短すぎる

 無事(?)東西南北(仮)として深夜番組枠発のアイドルとしてテレビ出演を果たし、着々とステップアップを図り、レッスンもこなしながら念願のデビュー曲まで披露。
 そこそこ評判も良く、早々に2曲目も決まり、フェスへの参加まで決まる怒涛の快進撃!・・・と思いきや、元来の人見知りが顕在化してきはじめ、急速に曇っていくくるみ、デビュー前から恋人がいたことが発覚し炎上する北ちゃん(炎上の演出も見えづらい)、メンバーが恋人バレした事で、自身のアイドルとしての道を邪魔されたと露骨に当たり散らす東。年長者だからという事なのか、南だけが謎にメンタル強者だったわけですけども・・・うーん。

 ちょっと、詰め込みすぎじゃないかなあ・・・。

10年後、なりたい自分に

 3人が一斉に事務所退所をする騒ぎとなり、独り取り残された東も当然活動なんて出来るはずもなく、追いかけるように辞めることになりました。

 その後の仲直りイベントが北ちゃん以外が雑です。というか北ちゃんのその告白は、何もそんな最終盤の仲直りイベントで消化しなくたってもっと前で出来ただろうに、と思うわけで。

 南さんとくるみに至っては・・・うーん、な感じ。

 そして(恐らく)10年後、メンバー4人はそれぞれの道を歩む事となります。

東は目標としていたアイドルとして活動中?アイドルでなくても、芸能畑なのは間違いなさそう。

くるみは研究職のサラリーマンなんでしょう。ロボコン準優勝の肩書は伊達ではない。

南さんだけは救いというか、東西南北でやってきた事を糧にして、青年海外協力隊なのか太い実家のパイプを使ってなのか、精力的に海外ボランティアに勤しんでいる様子。

北さんは元彼さんと無事元鞘になれたのでしょう(こういう所も察しろ演出なんです)、2人の子宝に恵まれていました。

ある意味一番の勝ち組はシンジ君で、カメラマンとして立派に(?)成功している様子が描かれていました。

総評 設定や映像はいいのに

 端的に問題点を挙げるとすれば時間の短さでしょう。90分に詰め込んで良い内容じゃないです。
 腹黒いどころか真っ黒なゲス主人公がアイドル目指す感じは良い設定だし、そのために美少女を集めるというのも良い。
 美少女は皆アイドルをするべき、何でしないのか勿体ない。とアイドルこそが全てと言わんばかりの言動と行動の一貫性には、黒いながらも魅力を感じられたのに、それでメンバーと喧嘩別れしました。でも自分は返り咲きました。返り咲くのはいい、けど感情移入はしづらさが残るなあと。

 とにもかくにも時間がないんですよ。原作付きの長編アニメーション映画の難しさは分かりますけど、Clover Worksにしては力不足を感じました。

 本作はアイドルものではなくヒューマンドラマなんだ!と言われれば納得はするんですけど、だったら東の一人称視点でずっと描けばよかった。
 西も南も北も、仲間集めなんてもっともっと簡略化して、仲良くなる描写ももっともっと巻いて良かったと思う。
 そのぐらいの事をしないと、3人のメンバーが中途半端に宙ぶらりんすぎて厳しいなと。

 あと東に救いを与えるのなら、車椅子のあの子にこそファン1号を名乗らせるべきです。北さんはアイドル東のファンではなく、人間東をヒーローとして見ていたわけで。言葉の違いでしかないけれど、あの子こそファン1号ですよ。
 あの約束シーンは凄く良かった。それこそ東が「アイドルって光れるんだよ」ってシンジに言っていたあの発言は、あの約束シーンにこそあったと思うんです。

 と、シーンを細かく切り取れば見どころもあるので、見るに値しませんよとまでは言わないですけど、見終わった後の余韻というか、読了後の満足感というかは味わえなかった作品だったと感じました。


 頼むから着せ恋と明日ちゃんの為にもしっかり稼げる企業になってください、という思いを込めて。
 珍しくかなり辛口なレビューとなりました。数少ない褒めポイント、映像は文句なしです。


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