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保守主義と社会契約論の交差点―オークショットが教える政治の本質

「オークショットと保守主義―人間の本性と市民的結合体」

現代の政治哲学において、その独特な視点で注目を集めるイギリスの思想家、マイケル・オークショット(1901-1990)。彼の思想を探る上で、保守主義との関連は欠かせません。今回は、寺島俊穂氏による2011年の論文「マイケル・オークショットの政治哲学―保守主義との関連で―」を紹介させていただき、オークショットが示した政治哲学の核心とは何かを考えてみたいと思います。

1. オークショットの政治哲学の核心とは?

オークショットの思想は、近代政治哲学の中でも特にユニークです。彼が描く政治哲学の最も重要な点は、国家や市民社会の理解にあります。オークショットは、国家を単なる権力の集まりとして捉えるのではなく、「結合体(association)」として理解し、社会契約論を独自の視点で再解釈しました。

オークショットによると、人間の本性には「競争」と「争い」を引き起こす要素が内包されています。これは人類の「苦境」に根差しており、この苦境から脱するために市民的結合体が必要だと主張します。その根底にあるのは、ホッブスに影響を受けた「死の恐怖」から来る熟慮と合意のプロセスです。

2. 市民的結合体と自由―「公共の事柄」の重要性

オークショットは、市民的結合体が個人の自由を抑制するものではなく、むしろその自由を支える基盤となると考えました。彼にとって、「公共の事柄」とは共通の目的や利益ではなく、公共の場での合意によって成り立つものであり、市民社会は共通の目的を追い求める場所ではなく、「規則としての規則」を認め、権威に基づいて結びつく場所なのです。

この視点は、自由と社会的責任をどう調和させるかという現代の重要な問題に新たな解答を示唆しているように思われます。

3. オークショットの保守主義と現代の課題

寺島俊穂氏の論文では、オークショットの政治哲学がいかにして保守主義の枠組みと関連しているかを明確にしています。オークショットは、過去の伝統や社会の調和を重視し、革新主義に対して慎重な態度を取ります。そのため、彼の思想は保守主義的な価値観と親和性が高く、現代政治における秩序や協調を維持するための重要な指針となっているようです。

オークショットの「公共の事柄」という概念は、今日の市民社会における協力と秩序維持の問題に新たな視点をもたらしています。彼の考え方は、単なる個人主義の枠を超えて、現代社会における公共性のあり方を再考させてくれるものだといえるでしょう。

4. 結論―オークショットの思想を現代にどう活かすか?

オークショットの思想が示す「市民的結合体」という概念は、今日の政治哲学においても依然として強い影響を与えています。寺島俊穂氏の論文は、オークショットがどのようにして現代政治の課題に答えようとしたのか、その思想の独自性と重要性を浮き彫りにされており、保守主義と社会契約論の接点を再評価する手掛かりになるように思われます。

この論文を通じて、オークショットの政治哲学を深く理解することで、現代社会の複雑な問題に対する新たな視点を得ることができるでしょう。オークショットの思想は、今後の政治議論にも大きな影響を与えるに違いありません。

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木山すみれ
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