浸透力はんぱない文章
去年の11月、岸田奈美さんに会いにいった文学フリマで出会った一冊の本。
「まばゆい」/僕のマリ
ブースをうろうろしていて、ふと、目に留まり何気なく手に取って、
冒頭の1ページを読んでみると、するすると文章に引き込まれた。
そして「この本を手放したくない」という強い衝動に駆られて、迷わず即購入した。
後から知ったことだけれど、この日僕のマリさんご本人もいらしていたようで、ほやほやのサイン入り本だった。
その日は早く帰ってこの本が読みたかった。
本が読みたくてわくわくする気持ちを久しぶりに味わえて、
そのわくわく感は、まるでお守りのような安心感だった。
そして、その日のうちにするすると読んでしまうほど、心地よくて、浸透力が半端ない文章だった。
文章がすーっと、染みわたっていく感じ。
心地よくて、波動が整っていく感じ。
この人の綴る文章に惚れてしまった。
特に素晴らしかったのが、僕のマリさんが実家で飼っていた愛犬についての章。
愛犬と暮らし、亡くした経験がある人には、涙なしには読めない内容だった。
2年前に亡くなった愛犬と重なり、2年という時を経ても決して醒めやらない愛犬への愛おしさと、さみしさが溢れてきて、涙が止まらなかった。
自分の実体験を実直に綴りながらも、独りよがりな自分語りにならず、他人の心の琴線に触れる文章を綴ることができるその才能に、尊敬と憧れと嫉妬が入り交じり、とにかく熱い気持ちになり、お守りのように大事にしたい本になった。
本との出会いも、一期一会だなと思う。
人生の目標として、本を一冊でも多く読みたい、と常に掲げている。
が、
本を読まなきゃ…と強制の念になってしまうと、なかなかページが進まない。
ページを読む手が止まらず、時間を忘れ文字を必死で追う、本の世界に没頭している瞬間が何よりも幸福で充実した時間だと思うので、自分が読みたいと思った本を読んでいきたい。
今年も、一冊でも多く。
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