角田裕毅が来年レッドブルに昇格できない理由
セルジオ・ペレスの去就が注目される中で、その後任候補として角田裕毅とリアム・ローソンに注目が集まっている。しかし現状では、角田裕毅が来年レッドブルのシートを手に入れる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。レッドブルがリアム・ローソンを優先することが、角田にとっての大きな壁となっている。この背景には、レッドブルが一貫して角田をトップチームの候補として受け入れていない姿勢が見え隠れしている。
角田はアブダビでのシーズン後テストで現行のレッドブルマシンをついにドライブする予定だが、これはホンダへの恩義として行われるものであり、評価の一環とはみなされていない。そのため、このテスト走行がレッドブルの決定に影響を与える可能性は低い。
レッドブルは、ホンダとの関係を背景に角田をサポートしてきたが、彼を真に「レッドブル」ドライバーと見なしてきたわけではない。角田がレッドブルジュニアに加わった際も、ホンダの支援が大きな役割を果たしていた。ホンダの支援がなければ、角田のレッドブルグループへの参加は叶わなかっただろう。このため、レッドブル内部では、角田の存在はホンダによって支えられていると、考えている節がある。
もし角田の昇格が見送られれば、これは苦い失望となる。というのも、角田は過去2シーズンでおそらくフェルスタッペン以外のレッドブルドライバーとして最速だったと考えられるからだ。
彼は不安定だったルーキーシーズンから立ち直り、2年目にはピエール・ガスリーと共に走りながら、印象的なパフォーマンスを見せ始めた。その後、2023年と2024年を通じて、ニック・デ・フリース、ダニエル・リカルド、そしてローソンを概ね上回った。
しかし、角田のレースでのパフォーマンスが、彼が昇格できない理由の一つである。予選でのリカルドやローソンに対する記録は印象的であり、彼らを上回る回数が多い。しかし、レースにおける結果の差はそれほど大きくなく、レッドブルは「角田は一発の速さはあるが、レースでの安定感に欠ける」という評価をしており、これがトップチーム昇格を阻む要因となっている。
加えて、技術的なフィードバックの質も、レッドブルの評価に影響を与えている。ダニエル・リカルドがアルファタウリに復帰した際、彼の技術的な理解とフィードバック能力は非常に高く評価された。これに対して、角田のフィードバックはまだ改善の余地があるとされており、レッドブルが求めるトップチームのドライバーとしての基準には達していないと見られているというのが現状だ。
角田の心理的な安定性にも懸念がある。レース中に感情的になる場面が多く、無線での発言がしばしば問題視されている。レッドブルが求めるのは、フェルスタッペンのチームメイトとしての強靭なメンタルであり、安定したパフォーマンスを発揮できるドライバーだ。フェルスタッペンのチームメイトという「F1で最も難しい仕事」にうまく対応するには、感情のコントロールが不可欠であり、改善が必要であると明確に伝えられているにもかかわらず、依然として問題となっていて、角田はこの点でまだ不十分と見なされている。
さらに、レッドブルが来シーズンのドライバーとしてリアム・ローソンを優先していることも、角田の昇格を難しくしている理由の一つだ。ローソンは角田と比較して経験が浅いものの、レッドブルは彼の持つ冷静さや技術的な適応力を高く評価している。ローソンが角田を上回るパフォーマンスを見せたわけではないが、レッドブルは彼を将来のトップチームドライバーとして期待している。その結果、角田はレッドブルの「評価基準」において不利な立場に立たされている。
残念ながら、角田は一貫して良い仕事をしており、レッドブルで自分を証明するチャンスに値するとしても、それが与えられることはほぼ確実にないと考えられる。
ホンダとのパートナーシップの終焉も、角田の将来に影を落としている。ホンダは2026年からアストンマーティンと提携する予定であり、レッドブルとしてはホンダのサポートがなくなる角田をメインチームに昇格させるメリットが見いだせない。これにより、角田がレーシングブルズに留まる可能性が高く、トップチームでのチャンスはますます遠のいている。
レッドブル・レーシングでの将来が見込めない場合、角田は来シーズン後にレッドブルグループを去る可能性が高い。そのタイミングでホンダも2026年からの次期エンジンレギュレーションに向けてアストンマーティンに移行する予定だ。
その場合、彼のキャリアは他のチームへの移籍を模索することになるだろう。現時点でアストンマーティンのシートは埋まっているが、ハースのようなチームが興味を示す可能性はある。
角田裕毅はこれまでの2年間で確かに進化を遂げ、予選やレースでの速さを見せてきた。しかし、レッドブルが求めるのは単なる速さ以上のもの—技術的なフィードバック、メンタルの強さ、そして安定したレースペースだ。これらすべての要素を備えたドライバーでなければ、フェルスタッペンのチームメイトとしての責務を果たすことはできないと考えられている。
このように、角田が来年レッドブルに昇格できない理由は多岐にわたる。速さだけではなく、安定性、技術的な理解、そして精神的な強さが求められるF1のトップチームで、彼がそのすべてを備えたドライバーとして認められるには、さらなる成長が必要だ。
もちろん、リアム・ローソンがその全てを持っているかというと、現時点ではわからない。こればかりは乗せてみないとわからないというのが現実である。実際、これまでもレッドブルに昇格しても、短期間で契約解除されたドライバーは多い。しかし少なくともレッドブルの首脳陣はリアム・ローソンには、その可能性があると考えているということである。
角田裕毅は、彼に与えられた役割を全うし、自らの価値を証明し続けるしかない。そして、もし将来再びトップチームへの道が開けたときに備え、今できるすべてを尽くすことが求められている。