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戦時下の商品、売り出すにも目立たねばと吊り下げ広告など工夫さまざまですが…

 戦争があろうとなかろうと、商人は商品を売らなければ立ち行きませんし、物を作っても売れなければこれまた立ち行きません。というわけで、皇国などで工夫するわけですが、戦時下らしいものをいくつか選んでみました。

諏訪の「砲弾羊羹」

 こちらは長野県の諏訪大社のおみやげ「砲弾羊羹」の吊り下げ広告です。健勝祈願は戦時下でなくても使える言葉ですし、砂糖をふんだんに使う羊羹が作られていた時期も考えると、昭和初期から満州事変ごろでしょうか。上部を金属で挟んで下げひももついた手の込んだものです。諏訪大社は軍神を祀っているので、砲弾型は相性がよいのかもしれません。訪ねた時、砲弾も奉納されていましたし。

奉納されていた砲弾。由緒書きは読めず

 紙の筒に羊羹が入っていて、押し出しておそらく付属の糸で切って食べるものなのでしょう。紙缶詰というネーミングも面白い。端が折ってあって砲弾の雰囲気を出していたのでしょうか。

「実用新案衛生紙罐詰」というのも目を引きます
当然、健勝祈願ですから、おみやげもOK

 こちらは、書店への吊り下げ広告。「報国」で雑誌もたくさん出せるとなると、日中戦争初期のものと見られます。当時の記録写真でも、店のあちこちにパラパラと下げているのが分かります。色も鮮やかで、店頭を華やかにしたでしょう。まあ、本の中身は…

銃後という言葉が戦時下を示します

 最後に、これは吊り下げたりする広告ではなく、上部の「特製」が絵の向きと反対になっているので、商品の「皇軍袋」の口を止めつつ、商品内容を示した覆い紙のデッドストック品と思われますが、デザインがちょっと変わっているのでお示しします。肉弾三勇士をモチーフにしているのは明らかなので、満州事変中か、その後の一時期のものと思われます。

「特製」の「皇軍袋」です。

 しかし、何らかの軍隊関連のものが入っていたと思えますが、この絵では中身がお菓子なのかおもちゃなのか本なのか、全く想像がつきません。そして手前の3人の兵士、丸い爆弾を鉄条網に仕掛けようとしていますが、勇猛さという雰囲気もないではないですが、こわばっているようにも見えます。

そりゃ、顔もこわばるよね

 そして指示をしているとみられる将校の目が怖い。まあ、これぐらいの怖さがないとこんな無謀なことをさせられないよなと納得させられますが、当時の製作者はそこまで考えていたのか、それとも勇ましいと思って描いたのでしょうか。

目が怖い指揮官らしき人物

 怖い上官に逆らえず何とか任務を果たそうとしているかのような…

 ただ、こうして広告を出したりできるうちは、まだ戦争が悪化していないころ。日中戦争中、物不足からインフレ抑制策をとった際は、広告はおろか、購買意欲をそそるとして看板も外されていましたから。そうやって街から色彩が消えていき、勇ましい軍人の掛け声に追われるようになるのです。

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信州戦争資料センター(まだ施設は無い…)
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