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江戸時代から明治時代にかけて盛んに作られた土人形には、軍人の姿もありました
長野県の中野市には、日本土人形資料館があります。中野市には現在も2つの流派の中野土人形が作り続けられており、特に3月のひな市では、この時にしか買えない土人形の販売もあるなど、大変にぎわいます。資料館も、こうした郷土の文化を伝える狙いで整備され、絵付け体験などもできるようです。
この日本土人形資料館には、日本各地の土人形のコレクション約2000点が展示されているということですが、展示品の写真を見てみると、これは兵隊人形だな、というのがいくつかあるのを確認しました(というか、近くですから行ってきたいと思います…)。当然、盛んに作られた時期を考えると、明治時代の日清、日露の戦役を題材にしている土人形が多かったであろうと想像できます。
中の人も、おそらく日露戦争当時を題材にしたものであろうという土人形を2体収蔵しておりますので、紹介させていただきます。まずこちら、長野県は松本市からの出物ということで入手した「乃木将軍騎馬人形」です。
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乃木将軍は、西南戦争にも出撃、日清戦争でも旅順攻略をしていますが(その際の民間人虐殺は世界的な非難を受ける)、一番有名なのは、やはり日露戦争での旅順攻略でしょう(もっとも、その兵士を要塞にたたきつけるような攻撃方法で批判もありますが)。ともかく、海の東郷平八郎と並び、陸の顔といえば乃木希典、というのが定番。乃木将軍は日露戦争当時、ひげを蓄えていたので玩具にするのにも特徴を出しやすかったのでしょう。
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もちろん、軍服の色は当時のことですから、カラー写真がありませんし、錦絵もいろいろで、かなり適当です。そして、こちらは置物用として造られたようで、背後には色が付いていません。
もう一点、こちらも日露戦争当時の大礼服着用の高級軍人とみられますが、では誰と言われると、ちょっと困ってしまいます。こちらは全身に色が付けてあり、シンプルな構造から、遊びに使う事を想定したものでしょう。足元の色の欠け具合は遊びに使った雰囲気があり、立たせやすくするために足も前後に広げた構造になっています。先の乃木将軍同様、色は適当なものですので、参考になりません。
もしかしたら、特別に誰かに似せたというものではないかもしれません。残念ながら首が折れたものを補修してあり、右側の肩が欠けていますが、勲章や立派な肩章、飾緒など、高位の軍人を想定したのは分かります。欠けているので、土の厚みなど、構造が分かるのは怪我の功名です。
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いくつか当時の軍人の写真と見比べてみましたが、顔も特段の特徴がなく、分かりませんでした。勲章類も写実的かといえば、参謀の飾緒も長すぎるように思えますし、このあたりからの特定も中の人の資料や知識ではちょっと無理でした。このほか、収蔵はしていませんが、一般の兵隊人形も存在していました。また、日中戦争以降、オモチャの材料が軍事優先で限られてくる中、再びつくられたものもあります。
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まあ、土人形は素朴に家内安全や商売繁盛を願ったり、家の中を和ませるような郷土玩具であるのが一番です。軍人の出番は、少ないにこしたことはないと思うのです。逆に、敗戦までは軍人が身近な存在であったことを如実に伝えてくれているのが、こうした軍人土人形なのでしょう。
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