プロジェクトリーダー(笑)になった
新しいプロジェクトのリーダーになりました。
なんだ新しいプロジェクトのリーダーって。
新しい学校のリーダーズのパチモンか?
私にもわからない。
ある日、いきなり部長がやってきたかと思うと「山田くん新しいプロジェクトのリーダーになってね、よろしく~」とだけ言って去っていったのだ。
まるで「次の飲み会の幹事よろしく~」みたいな軽いノリだったし、詳細については一切言及されなかったので、あのセーラー服きたダンスユニットがどうかしたん? とか思いつつスルーしてたら(するなよ)、そのあとすぐにあった会議で新事業に着手することが発表されて、その担当者が私になってて血の気がひいた。
オトナブルーとはまさにこのこと!(違います)
しかしなんで私が?
自慢ではないが、私の仕事ができなさは社内でも有名だ。
こないだなんか、とうとう足し算ができなくなった。
いろんなタスクが同時並行で動いていて、それぞれのタスクについてそれぞれの担当者と話していたら、一度に一人との話も満足に聞くことができない逆聖徳太子の私のキャパシティーを軽く超えてしまって、3+3+2の計算の答えを10とはじき出していたからね。
10個あるはずの項目が、いくら探しても8つしかなくて、うんうん唸っていたら、それをひょいと覗いてきた他の社員が一秒で「10じゃなくて8では?」と指摘してきて、すげー! ってなった。
「いや、すげーのは山田さんですよ」と返されたのだが、これって多分褒められてないよね……。
こんな調子だから、同僚とかが「プロジェクトリーダーがんばれよ」とか「よ! プロジェクトリーダー!」とか半笑いで言ってくるのだが、明らかにリーダーのあとにカッコ笑いがついている。
プロジェクトリーダー(笑)
そんなものになぜ私が抜擢されなければならないのか。
同期のみならず後輩にも「リーダー(笑)かっこいいっすね」とか絡まれてる男だぞ。
だがその理由は簡単で、単にちょうどいい年齢の社員が不足しているからだろう。
なぜなら若手がみんな辞めていくから。
なんなら優秀な人から辞めていく。
というか優秀だから辞めていくんだろうな?
優しくしてくれた先輩も、将来は幹部かと期待されていた後輩も、あんなにたくさんいた同期も、みーんな辞めてしまった。
一時期は、同期のあいだで「次は誰が辞めるんだろうな?」って、まるで一人ずつ殺されていく嵐の山荘ミステリーみたいなことを言い合っていたんだけれど、いまは「もうこんなところにいられるか!」つって、みんなのいるロビーから出ていって単独行動を始める、次に殺される人みたいなこと言ってる。
もちろん私も同じことを思っている。
宝クジがあたって一億円が銀行口座に振り込まれたら、即日辞表を書いて提出するんだけどなー。
でも当たってないから、いつも辞めていく人の背中を見送っている。
今年も、今年中にお世話になった同僚が辞めるというので、うらやましいやら寂しいやらで、ぐぎぎぎぎ……ってなってる。
そんな状況だから、年齢だけはちょうどいい私に、今回プロジェクトリーダー(笑)の白羽の矢が立ってしまったというわけだ。
なんせ在籍年数だけはいくら失敗しようが、上司に怒られようが、提出物の締切を過ぎようが、一年いたら一年は着実に増えていくからね。
でも、やだなぁー。
「山田もそろそろ後輩じゃなくて部下を持ってもいい年だしな」とか言われて。
会社にいる限り、年相応の役職に就いて、年相応の責任を追わされる。
それが会社のルールというもので、いつまでもヘラヘラして3+3+2は10! とかゆってるわけにはいかないのだ。
部下なんて持ちたくねーのよ。
てかもう、働きたくねーのよ。
でも会社にいる限り、その道からは逃れられないから、私は本当に早くここから脱出しなければいけない。