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わたしの下北沢 vol.3 米野智人さん(westside cafeオーナー)

駅前の雑踏。個性的なショップ。小劇場にライブハウス。気がつけばいつものみんなが集まってくる、小さな酒場。
誰もが、自分だけのお気に入りを、自分だけの特別な記憶を持っている街、それが下北沢。

ならば、この街と縁が深いあの人にとっての、特別って何だろう?あの人が一番好きなシモキタは、一体どんな感じだろう?
今回は、元プロ野球選手であり、現在は下北沢でグルテンフリーやオーガニックを中心とした食事を提供する飲食店〈westside cafe〉を展開されている米野智人さんにご登場いただきました。

米野智人(よねの・ともひと)
1982年生まれ。1999年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団し、2006年には正捕手として116試合に出場。2010年埼玉西武ライオンズ、2016年北海道日本ハムファイターズに移籍。同年限りで17年間の選手生活を終えた後、2017年春に〈イニング・プラス〉をオープン。2020年春〈westside cafe〉としてリニューアル。

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2017年春、下北沢に自然派カフェをオープン。


そのお店〈westside cafe〉は、井の頭線の下北沢駅西口の地下改札を上がってすぐ(小田急線なら下北沢駅南西口改札が最寄り)のビルの2階にある。店主は米野智人さん。野球好きならご存知の方も多いと思うが、2016年までヤクルト、西武、日本ハムの3球団でキャッチャーおよび外野手としてプレーした元プロ野球選手である。

米野さんはなぜこのカフェを開いたのか。そして下北沢という場所を選んだ理由とは。夕方の柔らかい日差しが差し込む店内で話を伺った。

「野球選手時代、30代になったあたりから食への興味が強くなったんですよ。10代、20代はとにかく肉を食べてパワーをつけるって感じでしたけど、その頃からちゃんと休んでいるつもりでも疲れがとれなかったり、体力の回復の遅さを自覚するようになり……。

そこで試しに食事をグルテンフリー(小麦を摂取しない)に変えたり、意識的に野菜をたくさん食べるようにしたんです。すると毎晩よく眠れて体力もすぐ回復するし、身体が軽くなって明らかにパフォーマンスが改善した。きっかけはそこですね」

「毎日口にするものから健康は作られる」。そう実感した米野さんは色々調べたり、人に教えを乞うなどして「食」を学び始める。その甲斐もあり、通算17年間、34歳までプロ野球選手としてグラウンドに立ち続けた。

「僕はたまたまアスリートでしたけど、誰にとっても身体と健康が資本であることには変わりはない。それで僕なりに得た知識や考えを自然派カフェのスタイルで発信できればと思い、2017年春に、ここ下北沢に〈イニング・プラス〉というお店を開きました。〈westside cafe〉という今のお店にリニューアルしたのは今年2020年の春のことです」

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「美味しく、楽しく、健康に」がコンセプトの〈westside cafe〉。メニューは日替わりのヴィーガンマフィンやピーナツバターを使ったバナナハニートーストといったスイーツ、コーヒー、自家製の甘酒ソイミルクラテや自家製レモネードなどのドリンクが並び、さらには自然農法五穀米、ソイミート、デトックスギーカレーを使ったヴィーガンカレー、ソイチキンサルサボウルなどのランチメニューも豊富だ。

メニューにはグルテンフリー、ヴィーガン(動物性食材不使用)がアイコンで表示されており、身体にいいものを安心して摂れる。

「身体にいいのはもちろんですが、やはりこだわりたいのは“味”ですね。食感の良さだったり、素材そのものの味をしっかり感じられるよう、手をかけて作っています」

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ソイチキンサルサボウル

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上:日替わりのヴィーガンマフィン
中:人気のランチメニューのひとつ、ソイチキンサルサボウル
下:グルテンフリーや有機食材の販売も


雑多だけど、都心にはない落ち着きがある。


米野さんはなぜここ、下北沢にお店を設けたのか。

「ヤクルトに在籍していた頃、隣の東北沢に住んでいたんです。それでオフの日になると、ぶらぶら下北沢まで歩いてはアメカジの〈Barns OUTOFITTERS〉で服を選んだり、ご飯を食べたりして、“この街の雰囲気はいいなあ”とずっと思っていました。飲み屋の隣に古着屋がある感じとかって、ビルばかりの場所より楽しいじゃないですか。

あと、若い人中心の繁華街という印象が強いですけど、昔から住まれている方も多いですし、本当にいろんな人が集まってきていて、そんな雑多な中にも都心にはない落ち着いた雰囲気がある。物件を探す際は他の街も見ましたけど、やっぱり下北沢周辺がいいなって」

そうして出会ったのが下北沢西口のこの場所だ。

「飲食店を営む上では駅の南側の方が適しているんでしょうけど、少し静かな西口も、ゆっくり健康的な食事を楽しんでもらうという店のコンセプト的にはいいと思ったんです。お店の入口は少しわかりにくいけど、中に入ると広々と余裕のある空間ですし、窓が大きくて日当たりも気持ちいいんですよ」

westsidecafe店内1


前のお店をオープンしてから3年半。その短い間にも駅周辺の変化を如実に感じているという。

「〈イニング・プラス〉をオープンした頃は、西口側って今以上に静かでしたし、駅の南側からのアクセスも正直良くなかった。でも去年小田急の南西口が出来たことで街の回遊性が高まり、人通りは確実に多くなりましたね。

個性的なお店も増えましたし、世田谷代田側の線路跡にできた〈BONUS TRACK〉なんてすごく楽しいじゃないですか。“シモキタのこっち側も実は面白いんだよ”ってみんなで盛り上げられればいいですよね」


誰もが感じられる居心地の良さを、下北沢のウェストサイドから。


今年お店をリニューアルしたのも、そんな地元での繋がりがきっかけなのだとか。

「僕らの開業より少し後に、井の頭線の踏切を挟んだ向こう側で自然派カフェバーがオープンしたのですが、そちらの店主と話してみるとお店のコンセプトも似ているし、将来的なビジョンも近いことがわかりまして。

それでこの春から共同経営者としてタッグを組んで、お店をリニューアルしました。現時点ではコロナの影響で営業はランチとカフェタイムのみですが、もう少し状況が良くなったら、オーガニックワインなどお酒を出す夜の営業を充実させたり、街のイベントなどにもどんどん参加したいですね。

いろんな種類のお店がある下北沢ですけど、意外と僕らのようなお店は少ないので、この場所からどんどん発信できればなと」

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〈westside cafe〉という店名には、世界でも特に自然食への意識が高いアメリカ西海岸のイメージと、「下北沢の西側」という意味合いが込められているのだという。

そんな米野さんが、今改めて感じる下北沢の魅力とは?

誰もが感じられる居心地の良さでしょうか。ウチの店でも女性のお客さんだけじゃなく、“今のうちから本当に身体にいいものを”と小さなお子さんを連れたお母さんや、近所にお住まいのおばあちゃんも結構いらっしゃるし、男性でがっつりランチを食べていく方もいる。

そういう老若男女を受け入れる器の広さというか、街の空気感は僕らのお店からも醸し出せればと思っています」



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〈westside cafe〉

東京都世田谷区代田5-34-21 ハイランド2階 TEL 03-5712-3588
営業時間(※短縮営業中)11:30~:17:00(16:30L.O)、火曜および第3水曜休。
公式サイト https://westside-cafe.jp

※本記事の内容は、2020年9月取材時の情報に基づきます。米野さんがオーナーを務める「BACKYARD BUTCHERS」がメットライフドームに出店することを受け、〈westside cafe〉は2021年1月25日に閉店となりました


撮影/石原敦志  取材・文/黒田創 編集/木村俊介(散歩社)


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