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帰国記念特別寄稿#3「Door #Uのゴールを切って」
薄曇りの秋の空が自分の出番はまだなのかと、まだ湿気も気温も高い夏が大暴れしてる東京を、俯瞰で見つめてるようだ。
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博多の後は、東京のコンサート2回、仙台NHK、DATE-FM特番、料理の撮影、雑誌インタビュー、40周年endingである2024年5月21日について の打ち合わせ、あるアーテイストのアルバム楽曲打ち合わせなどを行い、羽田空港へ。
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窓から離着陸の飛行機が見える。滑走路の後ろに広がる東京に東京タワーやスカイタワーがちょっこり顔を覗かせる。ジオラマのような街を出国したばかりのhaneda(ラウンジから見つめると「ああ、あの中で一生懸命に生きてた物語が完結したんだなあ」と切なくなる。
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東京の再公演(9/6)は千秋楽でもあったので盛り上がった。達成感の塊。
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時空を飛び越えて音の旅をした今回のツアー。ファーストインプレーションのセトリと譜面だけをかき集めて、ラガーデイア空港から飛行機に飛び乗った。あれがつい2週間前。
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最初は西宮で演奏撮影(横尾忠則氏とのコラボ)があり、手探りでピアノとの格闘が始まった。徐々にツアー本番への緊張感が込み上げてきた時期だったのを覚えている。
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初日の札幌へ向かう神戸空港での時間、スカイマークでキットカットをもらいニンマリした時間、千歳空港で初対面のWESSの方と2人で大きなバンに乗り札幌市内へ向かった時間、全部が新鮮な儀式だった。
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バブルの時代は何処へ。イベンターのH氏はホテルのロビーで、「明日のお迎えは3時。」と告げて去って行った。お腹の減った僕は1人、夜のススキノでラーメンを頬張った。
翌日、初日のペニーレインの楽屋に集合したにいな、蒔田氏、僕で本番前の緊張の時間を共有したのも今じゃ懐かしい。H氏の「本番は定刻で行きます」の声、そして気がつけばショーは大団円を迎えいつしかH氏と僕は抱き合っていた。
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せっかく用意したフォーマルジャケットもここじゃ浮くのでカジュアルなシャツと短パンに切り替え心もオープンにスタート。
東京への移動、整体の先生の施術を受けたこと、ホテルにクリーニングを出せたこと、週末の都心での1人飯は場所を探すのが大変だったことなど、覚えている。
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東京公演の様子は朝日新聞のコラムにも書いたが、平井堅さん、ポップ時代の仲間フレッシュシスターズ、サンタ、舞台監督の星野さん、関学の同窓生、たちなみ(友人)、などが来てくれた。あっという間に僕はにいなと兵庫へ移動し、気がつけば芦屋のホテル前のセブンイレブンでキャベツの千切りを買っていた。
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時間を少し戻そう。西宮での時間も鮮明に記憶している。この日が再び終演後、広島移動だったので、コンサート前にゲストと会うことになっていた。
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通常、僕は開演前にはよっぽどなことがない限り人とは会わない。しかし終演後は新幹線に飛び乗って広島へ向かわねばならないので、関学軽音の仲間や妹家族に本番前に楽屋で面会した。
「これお土産の奈良の鹿のふん、関西学院大学KGのアメフトのヘルメットのキーホルダー。」
緊張で固まった僕をさりげなく解きほぐしてくれる軽音後輩のBOYSたち。彼らは出不精の僕の同期の親友のギタリスト 、上ちんを引っ張り出してきてくれて懐かしい男4人組が集合し楽屋で対面した。
心置きない会話で過ごすわずかな時間はかけがえのないものだ。ビッグバンドでサックスを吹いてた(今もジャズは続けている)サックスのTやトロンボーンSもいる。
「もうあんまり長居してもSenriさんに悪いから行きますわ。体に気をつけて頑張ってください。」
このチームを牽引する一年下だったベースOくんはそう言って楽屋のドアを閉めた。上ちんは、
「体に気をつけてな。」
とだけ告げると小さく僕に手を振った。
Manry家族はManryと旦那さんの剛くん、そして彼らの息子たち。
「終演後に38人の友達を呼ぶんで一緒に写真撮ってな。」
というManryに、
「うん。NHKのインタビューが入ってるので、にいなに時間調整してもらうから心配しないで。僕はもう細かい時間のことはわからないの。全てにいながやればなんとかうまくやってくれると思う。」
と答える。
「じゃ、お兄ちゃん、いくわ。頑張ってな。」
と妹家族が会場へ向かった。
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元サンケイブリーゼのIさん、兵庫の劇場担当でピアニストでもある三浦さんも顔を出してくれた。今Iさんはサンケイブリーゼから古巣のUSJのショーの立ち上げへ、その後転職、MBSのホール立ち上げへとアメリカ的キャリアチャンジを試みてる。そのIさんと兵庫の三浦ちゃんが友達同士。僕はそんな女子組に、
「今度僕を入れた3人で『女子会』しようね〜!」
大声の笑いが楽屋に溢れた。
朝日新聞コラムの編集者Tさんも開演前にクイックで。なんとさっきのIさんもだけど(Manryたちもみんなそう)チケットを買ってきてくれてるんだよね。このTさんも、ありがたいことだ、大感謝。
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終演後はテレビ用にシャツにキャップを被り、インタビュー収録。シルキーなシャツにキャップ?もう疲れてて自分での判断はできないのでにいなに「これでいい?」と聞く。
「いいですよ。スッキリして。」
広島の夜はにいなとチェックイン後、川沿いに見つけたタパスの店でまったり食事した。偶然見つけた店にも関わらず美味しいので「明日もやってますか?」と聞いたら「すみません、明日は定休日なんで。」
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広島のコンサートは時間を気にせず「思う存分」やった。1部と2部を分ける演出でブレイクの時間を入れた。なぜならバーを活性化させるのも大事だと思ったから。お客さんもお店もみんなハッピーだったと思う。
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元々そういうセトリだったものをやれたのは今回のツアーでここだけということになる。広島のお客さんも札幌、兵庫、東京同様、物凄い熱量で僕を支えてくれた。
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終演後お好みをにいなと食べに行こうとお好みムラへ、キャンディプロモーションのM氏と会う。
「今日ブルーライブだったんですよね? 僕ら別の打ち上げやってるんですけど、ジョインしません?」
目をキラキラさせて言ってくれるM氏に心底嬉しかったが、もうへとへとのにいなと僕は丁重にお断りして2人だけでしんみりお好みむらの外へ出て目の前の「へんこつや」という店で広島風お好み焼きと広島風焼きうどんを食べてバタンキュー。
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博多は前乗り(コンサートの前日に入ること)できたので、2人でちょっぴり僕の誕生日モードにラーメンの後にはバーなどに行ったりした。僕は実はにいなに内緒で夜中にムクっと起き出して中洲の屋台にラーメンをもう一回食べに抜け出したり。キャハ。
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博多では集大成のようなライブができた。そしてまたその日移動で東京へ。累積疲労もあり午前中はほとんど動かずにホテルで寝ている状態だった。あ、でもちゃっかりランチのトンカツは食べたか。
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博多で再びクリーニングできた衣装を抱えて東京の紀尾井ホールへ再び楽屋入りすると、すぐさまリハが始まった。
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今回のツアーのこれだけ詰まっているスケジュールで指を休めればいいはずなのに、僕は本番と同じリハをやった。どうしてなのか? おそらくその日のコンデイションを掴むのと会話のように[DOOR #YOU ] の曲を奏でていることの安心感なのだと思った。
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東京のマチネは追加の追加公演、熱量がすごかった。会場にいるお客さんの笑顔のなんと美しかったことか。僕は全てをやり終えてもう何も残ってない状態になのに、それでもダブルトリプルアンコールは続く。
そして千秋楽、最後の最後のショーが始まる。クリーニングした衣装に袖を通しこのツアー最後の歯を磨く。再びの調律を終えたピアノに譜面を載せにいく。準備はできた。いざ。
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最終公演にはこのnoteの編集者松山さん、レシピ本などの編集者でもある角川のジュンジュン、懐かしいオールド世代のソニーの僕の仲間たちも顔を出してくれた。みんなみんなチケットを買って。(ありがとう!)
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その夜は荷物を持ったままタクシーに乗り打ち上げ会場へ行き誕生日を祝って頂く。再びタクシーに乗りホテルへ到着すると電気もつけっぱなしのままに眠りに落ちる
翌日、早起きして仙台へ向かう。
NHKの番組「街角ピアノ」に出演するためだ。コロナで4年前にコンサートがストップしたのが仙台からだった。目の前まで迫ってる仙台のコンサートがいきなり「なし」になったのを昨日のことのように思い出す。悲しかったがそれは自分の決断でもあった。またこうして演奏の場を頂けた。だからこのツアーのダイジェストを全部やっちゃおうと思った。
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あの断絶からコロナは僕たちを新しい次元へと運んだ。再びこうしてピアノを演奏できたことに静かな感動がある。震災で生き残った「震災ピアノ」とぼくの二人三脚は「不思議な時間」を共有した。
札幌のポップアーテイストたちに弾かれたピアノ、東京のクラシック系の方に弾かれたピアノ、広島の硬くて重たくて重量感のある、ピアニストを試すようなピアノ(KAWAI)、博多の全般的に鳴りのいいピアノ、、、。
震災ピアノはそんな各地で出会ったどのピアノに匹敵するピアノだった。泥や海水をかぶってなお、このピアノの音を消しちゃいけないとメンテを続けた持ち主のゆみさんの深く強い想いを感じた。
あっという間に収録が終わりDATE-FMへ。ポップのデビューからお世話になっている局の看板DJ板橋恵子氏のナビゲートで「Class of '88」をフィーチャーしてもらいながら60分トークを録音。腹を割った会話に花が咲く。
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この夜は仙台の友人の自宅へお邪魔し、彼に肉を焼いてもらう。にいな、蒔田氏そして僕の3人。庭で取れたピーマンやにんじん、玉ねぎやズッキーニが甘くおいしく、肉は牛、豚、チキンなど。友人はお坊さんをしているので彼のお寺の中だが、今回のツアーを乗り切ってここにいることを考えると、考えつく神様の名前を全部並べて感謝の気持ちを何度も唱えた。
「万の神様、仏様、キリスト様、アラーの神様、、、きっとさまざまな神様が僕たちに「頑張ったね」ってご褒美をくださったのかもしれない。」
と友人やにいな、蒔田氏と顔を見合わせ頷き合った。ノンストップで食べ続けて幸せに包まれ心に落ち着きを取り戻す。やり終えた、心の底からそう思える瞬間がこの時訪れた。
その後、友人の計らいで温泉宿に宿泊させてもらうが、せっかくの計らいなのにそのままバタンキューで眠る。目覚めると朝5時、でもほんの10分ほど外風呂に浸かることができた。1泊の旅だったが本編のツアーとはまた一味も二味も違う趣のものに。
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チェックアウト、新幹線で東京戻り、そのまま初台のスタジオに。来年放送予定の料理番組のテキスト撮影。女性ばかりのスタッフ総勢10名ほどに囲まれて「そだねー」など冗談を交わしながら3品仕上げた。ツアーそして仙台の毎日で全く包丁を握ってなかったが、久しぶりに美味しいものを作る時間は本当に自分をハッピーにしてくれて楽しかった。
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そういえばツアー中終演後はziplockに入れた氷で肩から下を全て冷やす、をやり続けた。打ち上げのお店へ移動したらお店の方にお願いしてお代わりの氷を作ってもらい5時間くらいは肩から下を冷やしっぱなしにした。
こうして腕や手首や指の熱を冷まし炎症を抑える。その後、夜明け時刻に起床し熱いお湯に浸かる。ここで初めて全身を解放する。朝起きて腕の状態をチェックし部分的なケアをそれぞれする。
ベニューや会場に向かいまだ熱を持っている部分を発見するとロキシニンを貼る。指や手の甲や親指の付け根などにはバンテリンを塗って対応する。
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本番と同じ量のリハをやらなければいいのにと自分にツッコミを入れる。しかしリハは僕の精神安定剤でもあるのだ。これを行いながらその日の自分を知る。完璧じゃない部分も含めてその日の自分のコンデイションを受け入れ本番へ向かう心の準備をするのだ。
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「Senriさん、ご自身でやられた手のケアは大成功です。手のコンデイションは悪くないですよ。でも、肩、首、背中、腰はかなりずれまくっててメンテが必要です。」
全てを終えて伺った先の整体の先生が汗びっしょりになりながら僕の身体を治してくれた。思えばブルックリンで今回のスケジュールを最初聞いた時、「人生で初めて途中でキャンセルになるかもしれない」と本気で覚悟した。経験値からしてもこのスケジュールで手の疲労が回復し、連続公演続けるのはもしかしたら無理かもしれないと思った。
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ほとんどドーピングに近い処理の仕方だったのかもしれないが、演奏を続けることができた。それは僕自身のケアもあるけれど他にもいくつかの要因があると先生の施術を受けつつ思った。
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あきらめずに丁寧に過ごした毎日と、一番大きいのはお客さんに支えられ助けられたことだと思う。奇跡のように毎日弾き続けることができたのは僕だけの力じゃなくこのツアーを願った人たちの想いに支えられてのことだ。
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不安いっぱいで8月25日に夜明けのラガーディア空港を飛び立った僕が、今9月12日に全てをやり終えTEデトロイトから到着し、あの時チェックインしたミニピアノとスーツケースを今度はピックアップし(かなりピアノの箱は傷ついてる)、それらを抱え、タクシーの列に並び、トランクに積み込む。
「振り出しの自宅へ向かうんだね。」
僕は家へ戻り自宅の鍵を開けて入り、無音の部屋に「ただいま」と告げる。
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もあんと湿気の匂いがする。窓を開けっぱなして空気を入れ替え、少し秋に近づいたブルックリンの街の息吹をいれる。行きつけのバーでフィッシュ&チップスとローカルビールを頂く。
戻る途中、
「あ、家の鍵。かぶってた帽子の中に入れたままだった。あの時帽子は被ったけどキーはお店のバーカウンターに置いてきてしまったんだ。」
と一瞬パニくる。踵を返し店へ戻る。でも冷静になりふと頭を触ると、帽子を被った頭のてっぺんにうまいこと鍵は載っていた。ふ。僕はこの時なんだかおかしくて路上で笑った。
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大事なものは意外に近くにある。それをいつも忘れがちだけれど、それさえわかっていればもう迷うこともない。
文・写真 大江千里 ©️Senri Oe, PND Records 2023
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