ブルックリン物語 #48 ”Dream”ドリーム
「夢? ないなあ」
15、16、17、18歳の男の子と女の子が怪訝そうな顔を僕に向ける。
シカゴ、オークパークリバーフォレスト高校、あのヘミングウェイが卒業した学校でもある。僕はここで長年日本語のクラスを担当するYoko先生の計らいで特別講師を勤めることに。「夢」を叶えるにはどうしたらいいか? を議題に1時間の講義を学校のオーディトリアムで行っていた。
「例えば、具体的でいい。宇宙飛行士になりたいとか、大学で何かの研究室に入りたいとか?」僕は言葉をつなげる。しかし彼らは「検討もつかない」という顔で首をかしげるのみ。数ヶ月前アトランタの中学で似たような授業をやった時は、おしなべて嬉々とみんな夢を語ってくれた。しかしあの時は主に12、13、14歳の子供たちだった。
マイクを向けても答えにくそうにする顔を見て一瞬途方に暮れたけれど、そういえば自分だってこの年齢の頃に「夢を聞かせて」と言われ、素直に人前でそれを言葉にできただろうかと思い直す。
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