マガジンのカバー画像

NEW DAYS ★ プチDAYS★ブルックリン物語

222
ブルックリン在住の大江千里が日々の暮らしを綴る6000字前後の読み応えあるエッセイ。「NEW DAYS」も仲間になりました。単行本『ブルックリンでジヤズを耕す 52歳からのひとり…
運営しているクリエイター

#レコーディング

新新 *SenriとRyokoのおしゃべり泥棒* 6

撮影のあった翌日も、いつもの午後1時前になるとスタジオのベルを押して古いビルの中の迷路を行く。そしてAndyがスタジオのドアを開けて待っててくれる。今日もレコーディングの始まりだ。 僕が最近家で飲んでるブルックリンで一番安く手に入るコーヒーとおそろ、安くて尚且つおいしいエクアドルのコーヒーを、ノーランが手際良く淹れる。僕らはBスタジオ。この前みんなで賑やかにリズムを録ったAスタジオにはジャズビッグバンドのレコーディングがこの日入ってて、人懐っこいジャズメンたちが「よ!」と声

¥200

新新 *SenriとRyokoのおしゃべり泥棒*1

Ryokoさんご一行がニューヨークに到着。僕がproduceをする今年冬発売のJazz Album『Life Is Beautiful』のレコーディングのためだ。 マネージャーさんたち、通称エンジェルボーイズのミゲルさんとパンチョさん、そしてRyokoさん。民泊のチェックインより早く到着したものの、全てが奇跡のようにスイスイとうまくいき、お掃除の片言の英語を話すヒスパニックの女の子も「Enjoy your stay!」と満面の笑顔で手を振り去って行った。民泊で必ずと言ってい

¥200

新新 *SenriとRyokoのおしゃべり泥棒* 2

リズムの日は9曲録音する。アルバムの曲数が9曲、厳密にいうと8曲+ボーナス曲が1曲、合わせて9曲。 録音中何が起こるかはわからない。なので油断や楽観は禁物だ。10時間で一応スタジオをLock outという形で押さえてあるが、11時にはカウントオフして1曲目の演奏を開始する。僕がproduceするプロジェクトは11時と言ったら集合11時ではなくて本番の録音スタート11時だとみんな認識しているので、それぞれがその瞬間に向かって仕上げてくる。 映像チームのSamとStephan

¥200

新新 *SenriとRyokoのおしゃべり泥棒* 3

リズム(ピアノ、ベース、ドラムス)のバッキングドラックが仕上がり、そのミックスされた音源に載せていよいよボーカルレコが始まった。 ミックスボイスという呼び方の声で今回のRyokoさんは歌っている。ヘッドボイス(裏声)でもチェストボイス(地声)でもないその両方を併せ持ったミックスされた声なのだ。 おでこあたりのパレットを開く。そこに声を当ててリズムに乗って歌っていく。音域が地声の範囲に降りても実声を落とさずヘッドに響かせたままに。左足のダウンビートと右手のアップビートのカウ

¥200

プチDAYS「おごと〜!でも無事よ。3」

ぴが帰還して少し経った。 最初はふらつきつつあった歩行も、もうかなり堂々と歩いている。しかし一番船を漕いでた左足はまだ少しおぼつかない。彼女もそこをわかって用心して踏ん張ってるのがわかる。 ご飯は偏食が進んでていて退院したすぐ後はもぐもぐだった食事が、今や毎回味付けを変えないと鼻をぷんとそむける始末だ。大江屋じゃ茹でたサツマイモとゆで汁汁、鳥の胸肉のゆで汁、ブロッコリーやトマト、マッシュルーム、人参のスープ、おかゆ、など常に作り置きしてうまく混ぜてぴの食欲が増すように工夫

¥150

ブルックリン物語 #70 "Anything Goes"

「それはいい。是非やろう。おそらくこの3人であればスタジオをロックアウトにして1日でやったほうがむしろいいものが上がると思う」 アリにレコーディングの知らせをするとそう二つ返事が返って来た。マットも同じ感触だ。自分が考えていたことと彼らとの温度差がなかったので、よし!と早速スタジオを押さえる。時間は昼頃にスタートして丸一日ロックアウトにしてもらい、アルバム1枚をこの中で録音する。これだと万が一進みが遅かったしても、夜の11時くらいまではなんとかスタジオが使える。 エンジニ

¥200