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NEW DAYS ★ プチDAYS★ブルックリン物語

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ブルックリン在住の大江千里が日々の暮らしを綴る6000字前後の読み応えあるエッセイ。「NEW DAYS」も仲間になりました。単行本『ブルックリンでジヤズを耕す 52歳からのひとり…
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2022年11月の記事一覧

プチDAYS「珈琲の香りに誘われて」

いつからだろう? この苦みばしった香りに誘われているのは。 昔はこの香りが嫌いだった。顆粒の珈琲を飲んでいた昭和の時代の話だ。それがいつの間にか淹れたての香りが漂うだけで、一杯の美味しい珈琲が、、、、飲みたくなる。 子供の頃、親指を隠して墓の前を通った。あの縁起担ぎのクセをいつしか気にしなくなって久しい。何度かの喪失を経験し、自分も人生の後半に差し掛かり、景色の隅にはいつの間にか、珈琲が湯気を立てているようになる。 朝ごはんの時、食卓で珈琲を飲む父の顔を怪訝そうに覗き込

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プチDAYS「本能か電子かで、ゆらゆら!」

ぴの持ってる「ぴ時計」。 彼女はiPoneを持たないのにきっかり夜中の3時半と午後の4時にNature Calling(おしっこうんこ)を済ませる。その時間の正確さには舌を👅巻く。 必ず終わった後トイレのTraining Sheetsを鼻で畳んで掃除をするので、そのガサガサって音で、パパにはわかる。 「ぴ、偉いね。じゃ、パパが後はやってあげるね」 と言うと 「よかった。じゃあ後はよろしく」 トイレからキッチンへ。 ぴ時計は既に新しい次を刻み始めているようだ。

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日曜Special プチ"大江千里DAYS " 「Dr.ゴボーを探して」

久しぶりに大好きな和食屋さんでランチを食べた。 午前11時半に顔を出すと、 「いいよー。裏庭に座ってビールでも飲んで待ってて」 と言ってもらえたのでそうさせてもらう。 自炊メインになってから外で食べなくなった。でも, 何かいいことがあったとき、自分が頑張った後にご褒美をあげたいとき、やはり「外食」はいい。 しばらく来ないと裏庭の様子が違う。日本をモチーフにしたアートが壁一面に描かれていてその独特の和の世界観が際立つ。この店は日本食文化が大好きな中国系インドネシア人が

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大江千里DAYS「五番街をワシントン公園まで下れば」

11月の風はピリッとクリスピーでどこかこそばゆい。そんなに早く冬にならないてもいいのに。もうちょっとのんびり秋のままでもいいのに。 冬と夏の間を反復横跳びしているNYの秋の気温。そういえば去年もこんな日々を繰り返しながら気がつくとあたり一面雪景色だったっけ。そんなこと考えながら散歩から帰宅してピアノの練習に入ると、窓越しに街路樹の黄色くなった葉っぱたちが風に揺れている。 今週に入りやたら地下鉄に冷房が入る。もうすでに冬の準備をしてきた人々を汗びっしょりにさせながら電車は橋

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