
度数法と弧度法(ラジアン)の関係
以前、小学校で習う円周率について取り上げました。
小学校では、無理数である円周率を3.14と近似して円周の長さや円の面積を求めてきましたが、中学以降はπ(パイ)という文字で円周率をあらわします。
このπが角度をあらわすとしたらどうでしょうか?
これまでの角度は、たとえば直角であれば90度、1周分が360度、というように覚えてきました。
これは「度数法」による角度の定義になります。
今回は、円周率であるπと角度の関係について触れてみたいと思います。
度数法と対になる角度のあらわし方として「弧度法」があります。
弧度法では、角度を「円の半径」 に対する「円弧の長さ」の比であらわし、式(1)及び図1のように定義します。
θ = ℓ / r・・・式(1)
θ:中心角の角度(単位:ラジアン)
ℓ :円弧の長さ
r :円の半径

それでは、360°、180°、90°をそれぞれ弧度法(ラジアン)であらわすとどうなるでしょうか。
円弧の長さは、おうぎ形の弧の長さの公式から以下のように求められます。

円の半径を1とすると、
① 中心角が360°のとき
円周1周分の弧長は2πだから、式(1)より2π(ラジアン)になります。
② 中心角が180°のとき
半円の弧長はπになるので、弧度法ではπ(ラジアン)になります。
③ 中心角が90°のとき
1/4円の弧長はπ/2になるので、弧度法ではπ/2(ラジアン)になります。

以上をまとめると、中心角が90°、180°、360°のときの度数と弧度のあいだには以下の関係が成り立ちます。
90°=π/2(ラジアン)
180°=π(ラジアン)
360°=2π(ラジアン)
半径が1の場合は弧長がそのまま弧度法による角度(ラジアン)になるので、上図から中心角と弧長が比例していることがわかると思います。
なお、式(1)を式(2)のように変形すれば、数式からも中心角と弧長が比例することを示せます。
ℓ=r・θ・・・式(2) ただし、rは任意の定数とする。
rを固定したとき、度数と弧度の関係は半径によらず、常に成り立ちます。
本当かな?と思ったら、1以外の半径についてもぜひ計算して確かめてみてください。
上記の関係がわかれば、30°、45°、60°、270°、450°のラジアンも計算できるようになります。
やり方はいろいろありますが、180°=πの関係を使って比をとると、30°のときのラジアンは以下のように求められます。
たとえば、30°のときxラジアンとする、
180:π=30:x
が成り立つので、
x=π/6(ラジアン)
と求めることができます。
ここまでで「πを使って角度をあらわす」ことについておわかりいただいたかと思います。
円の中心角をπであらわしているので、円周率としてのπとまったく関連がないわけではないでしょうが、さいしょは慣れるまで少し違和感があるかもしれません。
ちなみに、弧度法の単位はラジアンとされていますが、式(1)のとおり半径と弧の長さどうしの比として表しているので、単位は無次元量として省略されることが一般的です。
「πを使って角度をあらわす」のはわかったとして、そもそもなぜ角度をラジアンであらわす必要があるのかという疑問が生じます。
角度としてのπは、高校数学(数学Ⅱ)の「三角関数」で習います。
三角関数(sin、cosなど)については今回割愛しますが、回転運動や振動など、物理学とも非常に関係が深い概念です。
下図にy=sinθのグラフを示します。θは任意の角度をあらわします。

横軸は角度θで、y=sinθのグラフはπ、2π、3π・・・と、πの(整数倍)ごとにy軸(y=0)と交わることがわかります。上図を回転運動のグラフとしてみた場合、角度をπであらわすほうが180°、360°、540°のように180°の倍数で示すよりも直感的にとらえやすいと思います(πの偶数倍が1回転分になります)
と、ここまで書いてきましたが、三角関数の話にまで広がってしまいそうなので、今回はこのへんにしたいと思います。
さいごに、30°、45°の整数倍のラジアンはわりとよくでてくるので、すぐに変換できるようになっておくと便利です!