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介護と看取りは「地球人類の魂的成長」を促す役割



1.介護の苦労は意思疎通の難しさ

あなたが親の介護でもっとも苦労していることは何でしょうか。
現在、介護を受けている人は700万人います。認知症においては約1000万人いると言われています。高齢になれば聴覚や視覚機能、理解力の低下で意思疎通がスムーズでなくなり、とくに認知症の見当識は低下する一方です。

よくある介護のセミナーは、車椅子への移乗や、体位変換、食事介助など方法論が多いですが、介護のいちばんの悩みはソコではないような気がします。介護は日常生活の援助と思いつつも、実際のところ介護する人の大きなストレスになっているのは『意志疎通の難しさ』ではないでしょうか。

意思疎通がうまくいけばイライラすることも、言い合うことも減るでしょう。意思疎通がうまくいけばお世話もはかどって、時間との戦いも今より楽になるだろうと思います。

もう!なんでこんなに一生懸命やっているのにわかってくれないの?!
お願い!時間がないから早くして!
だから自分でやらないでって言ったじゃない!
その話、さっきしたばかりでしょ?!
どうしたら理解してくれるの?!

つまり介護問題の多くはコミュニケーションなんですね。とくに親子だからこそ自我が出て、つい怒鳴ってしまったり、変わってしまった親のイメージが受け入れ難く、コミュニケーションの難しさが増していきます。認知症においては、懸命に介護をしているのに理解してもらえず、とても切ない状況だと思います。



2.介護で気づくべき偉大な目的

ただ、私たちの人生は、苦労を背負うだけのものではないと言い切ることができます。そうではありませんか?あなたが今まで苦労してきたことも、何らかの形で今の自分に役立っているのではないでしょうか?ただ私たちは苦労している瞬間はその『意図』に気づきにくく、とくに介護は目の前のことに追われて感情的になってしまい、魂の目的を見失ってしまいやすい状態です。

‟あのときの私があるから今の自分がある”
人生はそのようにできています。

そしてこれほど多くの高齢者さんや認知症患者さんが増えて、私たち日本人が苦労をするのは、きっと何か目的があります。日本が何かに気づくべき機会が与えられていると思うのです。おそらく人間としての魂の成長があります。それはなんでしょう?

ほとんどの人は、何かうまくいかないことが起こったとき、相手のせいにしたり、環境のせいにしたり、出来事のせいにしたりします。でもそれでは問題は解決しないことを誰しも経験していると思います。

介護も相手のせいにしたところで問題は解決しませんね。無理やり言うことを聞かせようとすると頑として抵抗されます。認知症は見当識障害や認知機能の低下があるにも関わらず、身体的には動ける人が多く、本人が納得しないかぎり自由に行動しようとます。人によるかもしれませんが、執着心もかなり強くなります。

どれほど文句を言っても、相手を責めても、怒鳴り散らしたとしても、脳の器質的な変化による症状なのですから、どうしようもありません。また、介護は仕事のように辞めることも出来ない状況です。

そこに、私たち人類に采配できない、
宇宙の大きな意図があるような気がします。



3.コミュニケーションの真理

その状況は、たとえば職場にもあるのではないでしょうか?人間関係で問題が起こったとき、相手や環境や出来事のせいにして、解決できないままずっとストレスを抱えている人が少なくありません。多くの人が人間関係で争い、疲弊して、長く続けば心の病になっていきます。

介護や認知症は、きっとそういう私たちにコミュニケーションを見直す機会を与えてくれています。私自身はコミュニケーションの講師を15年間しており、多くの人の人間関係の悩みに関わってきました。悩んでいる人に共通していることは、自分自身の視点しかなく、出来事を俯瞰できずにいます。

そして相手が変わってくれること、相手が改心してくれること、謝ってくれることを心底望んでいますが、実際はそういはいきませんよね。

なぜならコミュニケーションの真理は‟自分自身”にあるからです。

どんなに相手が悪いと思っても、相手は相手の正しさに従っています。そして自分自身もまた、自分自身の価値観に従って判断しており、正しい判断です。本質的にはどちらが悪いわけでもないのです。

ただ、私たちは相手の正しさを変えることはできません。もし仮に相手が謝ったとしても、それは一時的に折れただけで改心したわけではありません。唯一、自分自身が見方を変え、相手を理解し、変化することによってのみ、関係性を変えて解決することができます。

そして介護はとくに、低下した感覚機能や思い込みが変わる可能性は少なく、介護する人が柔軟に対応するしかない状況です。

つまり介護は、
介護する人が『柔軟に変化できる人へと成長する機会』なのです。

介護を終えた人は、きっとその後のコミュニケーション力が上がっているだろうと思います。少々うまくいかない人間関係が職場であったとしても、柔軟に対応できる人になっているのではないでしょうか。それは人間的成長と言えます。厳しいし難しいけど、きっと越えられると思います。



4.お看取りの目的

では、お看取りの目的は何でしょう?介護の先にはお看取りがあり、それもまた、できれば経験したくないことですよね。ですが日本は多死社会を迎えます。よって、やはり大いなる宇宙の采配があるような気がします。

今までは病院で亡くなることが当たり前でした。それが今後は自宅でのお看取りが増えていきます。それは・・

子供は親の死を通して死を‟疑似体験”します。
そして自分自身の命と向き合い、生き方を見直す機会を得ます。

私は看護師なので、最期の瞬間に数多く立ち会わせていただきましたが、自分の親の死を経験したとき、それまでとはまったく違うものでした。看護師として死に関わっているとき、私は(昨日までいた人が急に居なくなるってどういうことなのだろう…?)とご家族の気持ちが理解できず、阪神淡路大震災で惨状を経験してから死を避ける看護師になっていました。

しかしながら父の死を経験して、(亡くなったからと言って、昨日までいた人が急に居なくなるわけではないんだ…)と思いました。私は父が亡くなった後にたくさんの人たちから父の話を聞き、父が亡くなって初めて父のことを知ったような気がしました。そして生きているとき以上に、父がそばにいるような気がするからです。今も。

人は不完全でたくさんのやり残しや不甲斐ない気持ちを持ったまま、本質の世界に旅立っていきます。それは唯一、親の残したものや生き様から見えてきます。亡くなった親と、心の中で毎日たくさん対話することによって、聞こえて来る言葉があるのです。そしてそれは、魂がつながっている子供や孫に『人生の課題』として受け継がれ、その方向に進むことが『使命』ではないかと思います。

ただ、世間一般的には悲しむ間もなく職場復帰しなければならず、また悲しむことは良くないことという認識が強いため、親が語り継ごうとしている言葉に気づくことができないでいます。親が亡くなったときの悲しみはもう二度とない貴重な経験であり、本当は心ゆくまで悲しみ、心の中で十分に対話をする必要があります。すると生き様から伝わって来るメッセージがあります。

悲しみは良くないとされている現状は、死が死でしかない。
が、本質的には悲しみから見えてくる魂の課題がある。



5.心を取り戻すために

お看取りに関しては、少し短絡的に書いてしまったかもしれません。父の死についてはマガジンをご覧いただけると有難いです。

介護の関わりも、お看取りも、私たち日本人が心を取り戻すための一つの道のりではないかと思います。介護は日常生活の援助と思っている人がほとんどかと思いますが、もし自分が介護されている立場だったらどうでしょう?

ご飯を食べるために生きていたいでしょうか?お風呂に入るため、薬を飲むために生きていたいでしょうか?違うと思うんですね。たとえ介護されていたり認知症の状態であっても、人は心を満たすために生きているのではないかと思います。誰か(主に家族)との温もりを感じたい、自分が生きてきた道を肯定したい…、そのための老後を過ごしているのではないでしょうか。

私たち日本人は、戦前まで『崇高な精神性』と『稀に見る体力』を持ち合わせている民族でした。それは西洋医学を日本に教えるために招致された、イギリスの医学博士が書いた『ベルツの日記』に残されています。その日記にはこのような言葉が書かれていました。

日本人よ、
もしあちらのすべてを受け入れるなら、おさらばじゃ!

日本はベルツが残した言葉の通りになったような気がします。そして今の高齢者の方々が、戦後の悲しみや淋しさ、恐怖や不安などの感情を押し殺して立ち上がってくれたおかげで、モノは十分に取り戻しました。

ですが… 心は失ったまま。
まだ心の中で戦いは続いている。

私たち日本人は、亡くなった親の生き様を見て『人生で本当に大切なものは何なのか?』気づき、価値観や生き方を変えていくことが、現代人の課題なのではと思います。健全な精神を取り戻した先にしか‟健康”はありません。心も健康も、失ったのは私たちのせいではないけれど、取り戻すのは自分たちにしかできないのです。



さいごに

日本は超高齢化国、人口減少の国として、世界の先頭を行きます。その後、アメリカ・中国・ロシア・イギリス・フランス・イタリアなどの先進国が同じ状況を迎えるため、日本がどのようにこの難局を乗り越えるか静かに見守っています。

世界の先を行く日本において、心を取り戻す必要があります。でなければ、これから先も今までと同じように争いと搾取の物質的価値観が続き、地球は破滅するでしょう。

日本が介護や看取りを通して心を取り戻すことは、地球が『愛と光の時代』へと進化できるかどうかにかかっているような気がしてなりません。親の介護をしている人は、きっと地球人類の魂的成長を促す役割なのだろうと思います。

そして私自身もう両親はいませんが、看護師の経験とコミュニケーション・認知科学・日本文化の知識を応用して、介護するご家族と共に歩んでいけたら嬉しく思います。

とはいえ、宇宙は私たちに強制はしません。‟やらなければならないこと”は一つもなく、すべてはひとりひとりの選択。『自由意志』が尊重されています。



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担当:山川さちえ、福井三賀子、せのようこ、郷堀有里夏、大竹加代子

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