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#2 「1+1が未知数なアッサンブラージュ」(前編)

日本酒の枠を超え、色とりどりの分野で活躍する「ニホンジン」を訪ね、
日本の輪を広げて行きます。それはまさに「和の輪」。
第二回のゲストはユナイテッドアローズ新規開発室・UNITED ARROWS BOTTLE SHOP担当の鈴木貴至さんです。

鈴木貴至さん(左)と薄井一樹(右)

鈴木貴至さんは、ファッション販売に酒類販売をコラボさせた新しいビジネス展開で話題になった人。
2021年8月、ユナイテッドアローズ 原宿本店でUNITED ARROWS BOTTLE SHOPと名付けたコーナーを設け、国内外からセレクトした日本酒とクラフトビールを中心に酒の販売を開始。酒蔵とコラボしたオリジナル企画の第一弾として仙禽がセレクトされたご縁がありました。
仙禽の「伝統的な技術をベースに、革新的な挑戦をする姿」に共感していただき、蔵で一緒に酒造りにも参加するなかで生まれた<仙禽 × UNITED ARROWS>は、仙禽がこだわる酒づくりの概念“アッサンブラージュ”をカタチにしたもの。アッサンブラージュとは完成したお酒を何種類か混ぜ合わせて新しいお酒を造る手法ですが、単なるブレンドとは違って、1+1=2ではなく、1+1が未知数となる絶妙な味を求める手法で、フランスの伝統ワインに受け継がれてきたものです。
今回は、鈴木さんの職場であるユナイテッドアローズ本社のプレスルームにお邪魔してお酒談義に花を咲かせていただきました。

薄井 ここに来るのも久しぶりなんだけど、お酒の話をするのに、なんでこんな場所でお酒の話するのかって結構謎ですよね。
 
鈴木 そもそもここがどこかといえば、ユナイテッドアローズの本社にありますプレスルームです。ユナイテッドアローズはアパレルのセレクトショップを運営している会社なんですけど、ここには今シーズンのサンプルが並んでまして、スタイリストさんとか雑誌関係の方とかがいらっしゃってお貸し出ししたりとかしています。一樹さんとは、ここで仙禽とのコラボグッズのアイデアとかを一緒に話したりしましたね。

薄井 僕ら、今そのTシャツ着てますけど、その前にユナイテッドアローズと仙禽がコラボしたお酒があってという流れでしたね。
 
鈴木 2018年に弊社で新規事業を募集する社内コンペがあったんですね。その時に私、「酒をやりたい」と。一次の書類審査から色々プレゼンを繰り返して、一年くらいかけて2019年に数ある応募の中で一応、私の案件だけ社長のO Kを・・・
 
薄井 通っちゃった? 超有名な企業が、お酒の販売をするって相当な決断が必要だったと思うんだけど、よくOKでましたね。
 
鈴木 通った理由って、企画書に書いたプランが良かったとかそういうことじゃなくて、異様に僕が酒の話をしだすと熱くなって止まらなくなるってところが面白がって、こいつちょっと面白いからじゃあやらせてみようってなったのかな。それで是非とも、仙禽さんにご一緒させていただけないかって、一樹さんにお会いしに行ったのが最初の出会いです。
 
薄井 ユナイテッドアローズさんって学生の頃から馴染みのある一流企業ってイメージでしたから、そんな会社の方がこんな小さな酒蔵に来てどうするんだろうっていうのはありましたよね。それで、初め何を言っているのか、何がしたいのかが具体的にあんまりよくわからなかったんだけど、ただただ熱意のすごさと尋常じゃないくらい酒が好きなんだな、みたいなそういう気持ちは伝わったので。
 
鈴木 即座に「いいよ一緒にやろう」っておっしゃっていただいたのがすごい嬉しかった。まさかの仙禽さんが二つ返事で一緒にやってくださることになったって大喜びで会社の先輩にメールを打ったのを覚えています。
 
薄井 貴至さん、そもそもユナイテッドアローズの中で普段は何をしているの?
 
鈴木 今はお酒事業をやることになったので、新規事業を生み出す部署に異動しました。以前は事業戦略部というところで、売上げや収益の数字を見てやってきていたんですけど、ブランドの立ち上げとか、そのブランドのマネージャーもやっていたりとか、右脳から左脳からいろんなことをさまざま経験してきました。
 
薄井 そんな貴至さんが、いろんな日本酒がある中で仙禽を選んでいただいたっていうのは?
 
鈴木 行きつけの焼き鳥屋さんで、美味しい日本酒があるよって勧められて飲んだらびっくりして、というのが仙禽との出会いですね。なんの先入観も無しで、すごいお酒を作る人がいるんだなっていうだけだった。まさかそれが巡り巡ってご一緒させていただけるようになるとは思いもよらなかったです。
 
薄井 お酒とお洋服のコラボなんてかつて例がないから・・・
 
鈴木 そうですね。まさか洋服屋に就職して酒屋をやるとは夢にも思ってなかったですけどね。

薄井 その後コロナになっちゃったけど、結構スピード感ありましたよね。 

鈴木 一樹さんが異常にパッとこちらのアイデアをすぐに返してくださるので早く進んだんですけど。コロナで当初の規模を縮小せざるを得なくて。 

薄井 コロナで、貴至さん、孤軍奮闘してる感じだったもんね。 

鈴木 コロナ禍を吹き飛ばすような面白いことをやりたいですってお願いしたら「アッサンブラージュ」っていうところで。 

薄井 本当はユナイテッドアローズオリジナルタンクだったんだけど、コロナでちょっとダメになっちゃったから、今ある原酒でうまくアッサンブラージュしてっていうことになったんですよね。 

鈴木 コロナじゃなきゃ、タンクを1タンク抑えさせていただいて、その中で完全オリジナルのお酒を作っていただくって話を進めていたんですけど、結果としてアッサンブラージュを初めて経験するというチャンスをいただいた。非常に刺激的な体験でした。 

薄井 貴至さんのアッサンブラージュがすごいんですよね。うちの社員が、僕が設計した酒より美味しいっていうんですよ(笑) 

鈴木 ありがたいです。素人ながらに、はい。 

薄井 僕ら醸造家が絶対にチョイスしないだろうっていう原酒を貴至さんは選ぶから。すげーなと思った。例えば貴醸酒って甘いじゃないですか、あれは僕たちからすると結構諸刃の剣的な感じで、すごい甘い、タルいお酒になりがち、他の要素をかき消してしまいそうなんだけど、それを結構積極的に駆使してくるから、マジかみたいな・・・でも、それって、洋服の着こなしとかと同じ? 僕ら素人とは違うその色そこに入れる?・・・みたいなセンスなのかな? 

鈴木 ファッションのコーディネイトも、やっぱり“はずし”でスーツにスニーカー合わせるみたいな感覚もありますから。ファッションとお酒の世界は似ているな。お酒の設計もクリエイティビティだし、さらにそれを形にできる技術力というかクラフツマンシップがあって、それが二つ融合する。洋服もクリエイションと作る技術と併せ持って、まさにアッサンブラージュ。それに食事とお酒のペアリングもそうですし、洋服もシチュエーションとか季節感との合わせとか、すごい似てるなと思います。 

薄井 最初の頃は、日本酒と洋服でコラボするって結構難しいかなと思ったんだけど、お互いの理念みたいなところで、結構オーセンティックな部分がベースにあるから、そこは合うよねみたいな話はしましたよね。 

鈴木 オーセンティックな部分を大事にしつつ、そこを土台に進化していくってところは思想が共鳴しあったなっていうのはありましたね。 

薄井 お酒を洋服に例えるのが面白かった。例えばうちの「モダン仙禽無垢」ていう定番だと、なんだっけ? 

鈴木 これブレザーだねとか。 

薄井 リーバイスの501とか、すっごい面白いですよね。日本酒興味ないけど洋服に興味ある人には、そういう伝え方をできるから。 

鈴木 我々なりの違う角度。僕はお酒のカルチャーとか作っている方とか、味わいとかそういうのが好きなので、その面白さをファッション好きな方にも共通するワクワク感があるので、それはお伝えしていきたいなと思いますね。

 薄井 ファーストリリースの「仙禽UA1st」以来、続々と・・・ 

鈴木 アッサンブラージュには正解がないので、直感に近い感じでやらしていただいてはいるんですけど、それぞれにファンがいるというか、あの味をもう一度作って欲しいとか、あのアッサンブラージュ最高だったよという声も聞かれて、いろんな顔があるアッサンブラージュは面白いなと思ってます。 

薄井 アッサンブラージュも日々どんどん進化をしていますから、これからが楽しみです。 

後編に続く

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