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あっという間の一年

2020年7月18日。衝撃的なテレビのテロップを見た、あの瞬間のことは忘れられない。体が震えて、頭が真っ白になった。

「一体なぜ?どうして?」

彼のドラマは恐らくすべて見てきた。”大ファン”ということを公言したこともないし、その言葉が決して似つかわしくはなかったと思う。だけど、あの日以来自分の中で抱え続けたこの感情を振り返れば、私は彼が大好きだったんだと、そのことをイヤというほど思い知らされた一年だった。

彼の遺作となったドラマのノベライズ本を買ったものの、結局読めずに一年経った。

彼が昨年出版した「日本製」という本もまだ読めていないし、同梱されていた「Documentary PHOTO BOOK 2019-2020」は最初の数ページをめくってみたものの、彼の笑顔を見ると悲しくなり、まだ全部のページをめくれずにいる。

フトした瞬間どこか寂し気な愁いを帯びた表情になったかと思えば、まるで子供のようなくしゃくしゃの笑顔。彼の表情豊かな美しい顔を思い出すたびに、心がまだ震えてしまう。

でも、彼の映画はこの一年で何本か見た。最初の頃は見続けるのが辛くて途中で見るのをやめてしまった映画もあった。でも、いつの間にか彼の演技に引き込まれてしまい、涙を流すことなく最後まで見ることができた映画もあった。どれもこれも、彼の魂こもった演技に心揺さぶられた。

すべての役に真摯に向き合い、悩んだりもがいたりしながら作りあげた数々の作品たち。彼は亡くなっても、彼の作品が残り続けてくれることに今さらながら感謝したい思いでいっぱいだ。

それにしても、どうにか彼を救えなかったのか?という気持ちは未だに拭いきれない。もちろん、自分の命の期限を自分で決めた彼の決断は、誰かに何かを言われたからといって変わらなかったのかもしれない。けれど、まだ30歳。

ミュージカルでは、ブロードウェイやもっと広い世界で大活躍していたかもしれない。
歌手としても、さらにどんどん進化していったのかもしれない。
俳優としても、主役だけではなく脇役も渋くこなせる粋な俳優に変化していたかもしれない。

彼の可能性は無限大だったはず。なのに、それを見届けることはもう叶わない。それだけが本当に悲しいし、寂しいし、虚しい。

でも、きっと彼は今あの笑顔でいてくれるはず。永遠の自由を手に入れたから。苦しむこともなく、幸せでいてくれるはず。そう信じたい。

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