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その″人となり″も独特の魅力に溢れた「恋愛映画の名手」今泉力哉監督

昨日の『情熱大陸』は、映画監督・今泉力哉氏が取り上げられていました。

私が今泉監督作品に初めて触れたのはつい二年前のこと。noteにもこんな記事をアップしました。

「恋愛映画の名手」と呼ばれる今泉監督ですが、その作品は本当に大きなことは何も起きません。でも最後まで飽きることなく観ることができてしまうし、登場人物の誰かに共感できるところはあるし、あぁなんだか面白かったと思える独特の世界観を味わうことができます。

『情熱大陸』の中での、今泉監督作品のファンの方たちのコメント…皆さん自分の言葉で上手に表現されていました。

「不器用な登場人物が多いんですけど、そこがすごく愛しくて…」
「自分では愛せない自分の一面みたいな部分を、ちゃんと慈しみながら撮っている」

恋愛映画の演出には、今泉監督ならではの極意があるようですね。

「本当に個人的な悩みとか、人に話せないような恥ずかしいこととかは扱いたいですかね。それで助けられる人はいると思うし…。人がやれることやりたくないっていうのが相当な一番のモチベーション。あまのじゃくだし、ベタは嫌」

『情熱大陸』より

確かに今泉監督作品は、いわゆる″ベタ″ではありません。でも誰もが恋愛において経験しているであろう"ツボ"みたいなものは抑えつつ、主人公に絶対王道の選択はさせないとか、こういう方向性もあるよね…みたいな展開に妙に納得させられてしまう感じがします。

オーディションでの場面でも"今泉ワールド"炸裂でした。台本通りの上手い演技よりも、常に"リアルさ"を追求したいタイプなんでしょうね。「相手とやれる人の方が好きなんで」と言っていたので、その場の空気感をキャッチした上で、どんな風に演じるのかを見たいわけですね。

現在公開中の映画『からかい上手の高木さん』の撮影現場では、十年以上の付き合いになるカメラマンの岩永氏の言葉が今泉監督のこだわりを物語っていました。

「画(え)が分からないっていう割に画(え)にこだわりはあるので、あれだと毎回大変ですね。もうちょっとポカンとした画(え)を作るというか、場を作るみたいな、そういうのがやりたいのかなって」

自分の経験した昔の記憶をまるで昨日のことのように呼び起こして、映画のワンシーンのように語ることのできる才能を持った今泉監督ならではの感性なのかもしれません。

今泉監督が自分自身を端的に表現した言葉も印象的でした。

「ゼロベースではっきり解が出せるわけじゃないので俺は全然。そんな能力はない」

おそらく"天才肌"の人ではないんですよね。撮影現場でも、たびたび決断できずに悩んでいる姿が見受けられました。

自分の力量と譲れないものを常に天秤にかけて、スタッフや演じる俳優さんの意見も尊重しながら、自分の思い描く最良の形にもっていく…そういう映像の作り込みのスタイルなのではと感じました。

映画『からかい上手の高木さん』の撮影中に脚本を書き直さないといけないと感じていたシーンがあり、リアリティーの追求のために俳優さんの意見を聞きながら、アドリブも交えた演技をさせてセリフを思いついていく様子は興味深かったです。

頭の中で考えていたものと実際に演じてもらいながら生み出されたものの違いは明確で、すべてのシーンをこうしてやれたらめちゃくちゃ脚本が面白くなると。時間は相当かかるだろうけれど、今泉監督の目指すリアリティーは実際こういうものなのかもしれませんね。

「特に恋愛ものは答えが出ないのでずっとできるなとも思う」

と語る今泉監督。

イベントでファンと一緒に自分の映画を観て、SNSで繋がっているファンたちと飲んで生の恋愛のエピソードを聞く…集まったメンバーたちの"恋バナ"が創作の源泉になっているというのも、今泉監督ならではですね。

ファンたちの恋愛相談を受けるトーク・イベントも、すべて次の作品に向けての恋愛エピソードのストックになっていくわけですね。

ご本人をじっくり観るのは今回初めてでしたが、人間・今泉力哉監督を知れば知るほど、底知れぬ魅力と面白さを感じました。

一筋縄ではいかないさまざまな恋愛の形を、またどんな風に昇華して作品として創作してくれるのか…今後の今泉力哉監督作品がさらに楽しみになりました。

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