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アラサーの男が『今日好き』を語ってみた
酒を飲みながら、ぼんやりと眺める『恋愛リアリティーショー』のなんと面白いことか。
今年に入ってから、他人の恋愛模様ばかりを観ている。
恋愛をしない『オオカミ』をあぶり出したり、年齢層高めの男女が一つ屋根の下で共同生活したり、期間の決められた中で結婚相手を探したり…。
様々な状況下にある男女の色恋を観ながら、ああでもないこうでもないとぼやき、時に涙しながら、酒をあおり、柿ピーのピーナッツの比率に一喜一憂しながら頬張る時間が至福だ。
そんな数ある恋愛リアリティーショーの中でも今、一番、おっさんの心を掴んでいるのは『今日、好きになりました。』。通称、『今日好き』だ。
『今日好き』は、高校生数名が2泊3日を海外で過ごし、その限られた時間の中で恋を育むという番組だ。
登場する高校生たちは皆、見目麗しく、爽やかな子たちばかりだ。
彼らが気持ちいいくらいの爽やかさと、少女漫画のようなキラキラ感を纏いながら繰り広げる恋愛模様が、この番組の魅力だ。
しかし、それなりに社会人としての経験を積んできた大人としては、この番組の美しさが作られたようなものの気がして、最初はひどく嘘くさく見えてしまった。
元々は、この番組が好きな姪と話を合わせる為に観始めたのだが、当初は、「本当に2、3日で誰かを好きになることができるのか?」「どうせ売名の為に出ているんだろう」等と、穿った見方をしていた。
しかし、これは恋愛番組を超えた『人間ドラマ』だと気付いたとき、私の中での見方が180度変わり、そこからはあっという間にのめり込んでしまった。もはや酒も柿ピーも手に取るのを忘れるくらいに。
彼らは、気になる子に堂々と自分の気持ちをさらけ出し、相手のことを知ろうとしたり、相手に自分のことを好きになってもらおうと頑張っている。その過程で、時には涙してしまうメンバーもいる。
もちろん番組としての演出はあるだろうが、一人ひとりが、意中の相手に、そして、「感情」そのものに真摯に向き合っている。
その姿がなんとも美しく、輝いて見えるのだ。
意中の相手が、自分ではない別の相手のことを好きと知り、葛藤する姿。
相手を振り向かせたくて、奮闘する姿。
数人から想いを寄せられて、心が揺れる姿。
ルールに翻弄されたり、想いが溢れて涙する姿。
あるメンバーは「好きな人が幸せだったら、それでいいから。幸せになってください」と涙ながらに、意中の相手に伝える場面もあった。
様々な「感情」の中で、彼らはそれぞれの答えを導き出していく。
その姿を目にする度に、応援せずにはいられない。
「どうかみんな幸せになってくれ」
その一心で画面に食らいついてしまうのだ。
それは「高校生の恋愛」という、コンテンツとしてカテゴライズされた、ありきたりなものの範疇を超えて、視聴者の胸を強く打つ。
これを「人間ドラマ」と呼ばずして、何と呼ぼうか。
また、彼らが繰り広げる恋模様は「人間ドラマ」を感じさせると同時に、はるか昔に忘れてきてしまった感情を呼び起こさせてくれる。
自分が高校生だった頃、ここまで誰かを好きになれただろうか。
涙が出てくるくらいの恋愛感情を抱いたことがあっただろうか。
観ていて、ふと、そんなことを思う。
答えは間違いなくノーだ。
だからこそ、彼らのストレートで美しい恋愛模様が新鮮に感じられるのだ。
大人になってから…20代はともかく、30代を迎えての恋愛は、お金、結婚、老後、年齢…様々な問題を嫌でも考えざるを得ない。
しかし、彼らの恋愛にはそのようなノイズは一切含まれていない。
第一印象を中心に、会話をしてみて、好きになる。そして、告白する。
気持ちの良いくらいのシンプルさだ。
そのシンプルな清々しさは、乾いたアラサーの男の心にうるおいを与えてくれる。
そして、様々なしがらみやノイズを取っ払って、「あの人が好きだから」というその一心で突っ走れるような、そんな恋愛を久々にしたい思わせてくれる。
きっと、恋愛における可能性を勝手に決めてしまっているのは、自分自身なのかもしれない。
「好き」というシンプルな感情を大切にさえしていれば、あとのことはどうにかなると、この番組から教えられているような気がする。
「今日、好きになりました。」
これはただの番組名ではない。
このシンプルな言葉はきっと、恋愛の本質であり、今の我々、大人世代こそ心に留めておきたい言葉なのかもしれない。