強度とばらつき

 2種類の糸で強度比較を行ったことがある。

 結果は、一方は、ばらつきが少ない。もう一方は、ばらつきが大きい。 しかし、強度の平均値は、前者よりも後者が強い。これをイメージにしたのが、上の図(横軸は強度、縦軸は頻度)である。この状態であれば、ばらつきは大きくとも強い後者(赤・強い方)を選ぶのではないか。

 やな予感がしたので、糸の繊度(デニール)を測ってみると、後者の方が大きい(太い)。強度の強い方が、太い結果であり、納得。

 しかし、この様な場合の強度比較はどう考えるべきか? 

 後者の方が強度試験の結果は、「強い」のであるが、繊度あたりの強度に直すと、どちらが強いかは分からない。繊度あたりの強度の単位は、強度を繊度で割ればよい。この時の繊度は、デニール(d)かデシテックス(dTex)などの数値が大きいほど糸が太い表記となる。具体的に単位としては、昔は「gf/d」、今は、「cN/dTex」で示す。

 繊度の「表示」は、前者の方が「表示」に近い。多分、後者はわざと太くしているのだろう。糸を太く作ることで、「見かけ上の強度」が「強い」ため、この糸を選んでもらえるとの心づもりだろう。

 しかし、後者の方が強いことはないだろう。繊度あたりでは、ほぼ同じか、むしろ弱いだろう。(だから、繊度を太くしたと思う。)

 ここまで、考えないと選べない時代になってきている。(後者は、強度が一定以上であれば、条件によっては使用可能なので、一概には否定できない)

 下の図は、横軸を「繊度あたりの強度」にしたイメージ図。ばらつき具合は前の図と同じ。平均値だけ少し低くしてある。この場合、間違えなく前者(青)を選ぶだろう。

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