フォロワーさんが子供の頃に読んでいた本を読んでみる「ジークー月のしずく日のしずく」斎藤洋・作
これ、すごくおもしろいので、やってみてほしいです。誰かが子供の頃に読んでいた本を読んでみる。
本自体は初見です。金次さんの昔のお気に入りの本だったそうです。金次さんは私の昔読んだ本を読んだので、私は金次さんが昔読んだ本を読んでみました。もはやストーキングじゃないか、私。
違います!ストーキングじゃありません!温かい交流です。無実です!
>何、この感じ
またまた、金次さん大げさなと思って読んだのですが……
なんだろう、これ。上の記事の感じがよくわかりました。
本を開くとそこには、もう行けるはずもないと思っていたファンタジーの世界が広がっていて、それは確かに昔私が入り浸っていた世界でした。
子供の頃に読んでいたらどうでしょう。そこまで強烈な印象にはならなかったかもしれない。小学生の頃にはあまり読まなかったタイプのお話です。でも確かに、そこには懐かしい世界が。
なに、この感じ。
ジークー月のしずく日のしずく
ジークとは隻眼の主人公の少年の名前です。架空の世界のお話で、主人公にふりかかる運命を受けとめながら様々な出会いと出来事が展開されてゆくのですが、とにかくかっこいい。
まず、プロローグがかっこいい
映画のような始まり。冒頭の文章を読んだだけで、ひんやりとした夜の森の空気が流れ、一気に物語の世界へ。
次に、登場人物がかっこいい。
かた目しかなければ、かた目で生きていくしかない。それが自分の運命ならば、その運命をひきうけて、しかも運命におしながされることなく生きていくのが男なのだ。
こちらはジークのお父さんの言葉なんですが、このせりふの通りふりかかる運命・引き継がれた宿命にそれぞれの登場人物が葛藤し向き合いながら生きてる様子が描かれてゆきます。
どの登場人物も、それぞれの価値観を大事にしながら生きていているのですがそれがうまくかみ合わない時はかみ合わず、じゃあどうすればいいんだ。というもどかしさが。
うまくいかない時はうまくいかず、うまくいく時はうまくいく。
これは最近よく考えるのですが、うまくいっている時は「こうすればいいんだ」と自分なりの成功論(あるいはジンクス)を語りたくなるのですが、そんなものって大きなショックを目の前にすれば一瞬で吹き飛んでしまうんですよね。
うまくいく時もいかないときも粛々とその流れに向き合って生きてゆけたらなぁと。「運命をひきうけて、しかも押し流されずに生きる」そのように生きてゆきたいです。
ジークについての金次さんの感想も貼っておきます。
もう一つの感想
文章がしっかりしていて「あれ?子供の頃ってこんなしっかりした文章を読んでいたんだ」と驚きました。
重厚でどっしりとした文章はとても贅沢な趣で、私たちはそういったものに囲まれて守られて育ってきたんだなぁと。大人の子どもたちへの愛を感じました。
子ども時代はなんと贅沢だったんだろう。
でも、もう取り戻せないと思っていたその贅沢な時間は、私が思い出せなかっただけで今もちゃんと本の中にあり、本を開けばちゃんといつでも迎えてくれる。そんな事を気づかせてくれる読書体験でした。
ああ、大人になった今、読めてよかった。そんな1冊です。