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そろそろ一年前のことを思い出してみようか【よねとくゆりえ】

ちょうど一年前の今頃、ある演劇公演を終えました。
その公演に携わった期間は約10ヶ月。本番は2023年の11月と12月に全部で13回。それまでの8ヶ月で少しずつ、本当に少しずつ、作っていった、生まれていった公演でした。自分にとって、この10ヶ月は生涯(大袈裟と思われてもいいほど)大切にしたい「通過点」になった感覚でいます。何か大きく道が変わったわけでもなく、自分に大きな変化が生じたわけでもなく、ただただ自分を再確認した(?)体験だったので、「転換点」というより「通過点」の方がしっりきています。自分を確認するという行為がもたらす効果や意味に今後も助けられて生きていく気がしています。

そして一年前のその公演期間中、実家の猫が亡くなりました。

今日はこのことに触れようという気持ちになって、書き始めて見ました。
が、筆がとてもゆっくりです。ゆっくりすぎてぐねぐねとした文章になってしまうかもしれません。泣きながら書いたりはしていません。時々潤んだりしているかもしれませんが、泣いて寂しがる時期を超えたから触れてみようと思えたんだと思います。

ーその周辺のできごと・演劇の本番
その知らせを聞いたのは、福岡公演を終えた翌日、大阪公演までの空きの期間でした。修論のための脚本の相談を首藤さんにしていた夕方でした。帰り道、西鉄沿いを歩きながら、多分流れてました。その晩は感じたことのない喪失感で一杯一杯でした。「永遠」という言葉の意味を初めて理解できたような。「もう二度と・・・」というフレーズが何度も頭に浮かんでは悲しんで、五感全部で感じた(味覚はない)彼(飼い猫はオスでした)を思い出しては悲しんで。

悲しみを家族と共有したい、最後の姿に触れに帰りたいと思いました。
でも次の公演が待っています。実家に帰っている暇はありませんでした。
ただ、作品に前向きに取り組み続けられたのは、「弔い」のシーンがこの作品の冒頭にあったからかもしれない。

上演していた作品の冒頭、失くしたハンカチに思いを馳せる時間がありました。失くしてしまったハンカチに対して、探しにいくのではなく、失くなってしまっている現状のままに、失くなったハンカチ(として話す私)と失くしてしまった持ち主で言葉を交わす場。お互いに会えない存在に対して語りかけるというこのシーンが、自分の現状(彼ともう会うことはできないという)と重なりました。公演中ではありましたが、その前後でこのシーンの私の感じ方、捉え方は少し変化したように思います。本当に少し、表に出たかわからないくらい。そんな微細な変化も大事にする作品であったことも、この出来事で乱れ過ぎなかった理由の一つかもしれません。

ーその周辺の出来事・アルバイト
その時期、老舗のカラオケあり喫茶店でアルバイトをしていました。そこを訪れるお客さんはよく「死」に関わる話をしました。同窓会の人数が減っていく、親の最後はこうだった、あの人は奥さんが最近亡くなった・・・。私は23歳で初めて、身近な死を体験してものすごい喪失感を時間がどうにかしてくれるのを待っているところだけれど、このお客さんたちは自分の3倍も生きて、その間、何度この喪失を味わって、乗り越えてきたんだろう。人間の場合、死だけがこの喪失を感じさせてくるとは限らない。認知症になった母親を、施設に入れなければならなくなった時、施設の人に言われた「今出ていってください」という言葉の冷酷さ、別れも言わずに母親を一人置いていくつらさはいかほどのものだったのだろう。別れに慣れるということはないと思う。でも確実にこの経験は人を強くすると思う。そう思った。

ー少し経ったころのできごと・夢
脳みその中が引き出された思い出でいっぱいなのか、しばらく夢に何度も出てきた。一人暮らしの家に来たことはないのに猫が自室の窓際にいるのを見たり、自分が実家にいる夢を見たり。しかしある日の夢で、猫は私の腕の中で冷たくなった。それまでの夢では触れられることはなかったが、その日夢の中で抱いて、確かに冷たくなったことを実感した。私はその時が来る前の痩せ細った彼に触れることもできなかったし、冷たく固くなった彼を撫でてあげることもできなかった。でもその夢の中で私のその心残りが果たされて、ようやく思い出の引き出しが閉じた。

ーしばらく経ってからのできごと・音楽
恋愛ソングの中には、別れたあとに面影を探したり、部屋にその気配を感じたりするという歌詞がままある。そういうのを恋愛経験ほぼほぼほぼゼロな私はただ歌詞をなぞって歌っていた。それが最近、「あぁこういう気持ちを歌っていたのか」と納得できるようになってきた。実家のあの椅子の下、台の上、私の膝の上にいて当たり前だった存在が突然いなくなったとき、それは心は追いつかない。別れの歌が流れると、最近は彼(猫)のことを思い出して少し涙ぐみながら運転したりしている今日この頃です。


あーーーーーなんだかすっきりしました。
みなさん、良いお年を・・・的な気分です。笑

本当は月曜日に書き上げないといけなかったのですが、年内最後の自分のnoteだから、どうしても振り返っておきたくなってしまって、すみません。
あと、日曜日は別のことを書こうと思っていたのですが、月曜日にこのことを書こうと思いついてしまって、こちらを優先してしまいました。この土日の体験もどこかしら書き留めたい気持ちはあったのでいつか思い出して書くかもしれません。

今週はスペースも喋る予定です。
日曜日の20時よろしければお聞きにいらしてください。

よねとく

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