法曹志望だけじゃない憲法ゼミ! 【法学部 只野ゼミ】
記:2019年2月4日
今回は只野ゼミ(法)3年の高橋さんにインタビューしました。
法曹志望が多いことで有名な只野ゼミ。果たして、ゼミではどんなことを学んでいるのか。
■「自分が期待するもの」と「ゼミで学べること」の重なりを意識した
ーー本日はよろしくお願いします。最初に只野ゼミを志望した理由を教えていただけますか。
元々、私法にはあまり興味がなかったんです。1年生のときに導入科目で国際法や他の法律科目をかじってから2年の履修を決めると思うのですが、そのときに感じた自分の興味に沿って決めました。
ーー憲法のゼミの中でも、只野ゼミにした理由はありますか?
只野先生の話し方や、分野における存在感に惹かれたのも大きかったです。オープンゼミに実際に足を運んで、自分のイメージを否定する要素が何もなかったから「第一志望は只野ゼミにしよう」ってその場で決めました。
ーーそうだったのですね。ゼミを選ぶときに重視していたことはありますか?
僕は「自分がゼミに何を期待するのか」が大事だと思っています。僕個人の場合だと、これまで一橋祭運営委員会というコミュニティに時間と労力を割いてきました。なので、一橋祭とは別のコミュニティとして、何かしっかりしたものが欲しかった。
ーーゼミを1つの「場」と捉えていたんですね。
そうですね。もう少し付け加えると、例えば期待することが「ゼミで自分の学びたい分野が学べるかどうか」だったら先生やゼミのハードさから絞ってもいいと思います。
大事なのは、「自分が期待するもの」と「ゼミで学べること」を重ね合わせたときに、その重なりが1番大きいところが良いんじゃないかな。と、あくまで僕は思います(笑)そういう意味では、法曹志望が多い只野ゼミは今まで出会ったこと無い人ばかりで凄く新鮮でした。
ーーありがとうございます。先輩の場合ですと、今まで知らない人と学び合える場所が期待するものだったんですね。
そうですね。「出来れば一橋祭にはいないような人が沢山いるゼミだと面白いだろうな」と思っていたから、只野ゼミにして良かったです。
■選考基準は、GPAよりも多様性を重視
ーー選考基準を気にする学生も多いと思います。只野ゼミでは選考でGPAや取得科目を見られますか?
まず、只野先生のスタンスとして、落とすつもりでゼミ選考はやっていません。先生は「どんな人でも受け入れたい」とは思っていますが、人数が多すぎるとゼミの運営に支障が出てしまう。そういったときは「ゼミ選考の手順を正しく踏んでいる人と踏んでいない人がいるなら、踏んでいない人から落とさざるを得ない」という感覚です。
ーー「落とそうとしてゼミ選考をしていない」は勇気出ます(笑)他にゼミ選考で重視されていることはありますか?
あとは、先生が大切にしていることとして「出来るだけ多様性を重視したい」という点があります。「GPAが低いから落とす。自分の憲法の科目を落としているからマイナス。」みたいなことは無いから安心して下さい。
ーー成績だけを見るのではなく、多様性を大事にされているんですね。ちなみに去年の書類選考では、どのようなことを書きましたか?
去年は自分の簡単な自己紹介と、何で憲法のゼミにしたいかを簡単にレポートにまとめて提出しました。
完全に余談だけど、去年面白かった質問は「大学に入ってから読んだ本で、1番自分が印象に残っている本を教えて下さい」でした(笑)法学に関係ない本でも、どんな本でも良いといわれたことを覚えています。
■法曹志望が半分を占めるも、壁のない雰囲気
ーー次に、ゼミでの勉強内容や雰囲気をお聞きできればと思います。
まずは、ゼミの1年間の流れを教えていただけますか?
4月にゼミに入ると、やることはそこまで多くないです。たまに先輩とディベートをやりながら、夏休みまでは普段のゼミで発表をする感じかな。
8月にはゼミ合宿があるんだけど、これは「9月にある他大学とのディベート合宿に向けた練習」と「ゼミ生同士の仲を深めるための旅行」を兼ねています。皆と仲良くなれて楽しかったなあ。
ーーありがとうございます。やはりゼミ生は法曹志望の方が多いですか?
そうだね、法曹志望が多い印象です。3年生は全体で10人いるけど、7人が法曹志望、2人が就職、1人が公務員志望、1人が会計士志望です。今年は特殊ですが、例年は法曹志望が全体の半分近くいて、残りは公務員と就職の人が半々いるイメージを持っていただけるとズレはないと思います。
ーー法曹志望じゃないと、ゼミについていくのが大変そうですね・・・(笑)
そんなことないです!ここで強く言いたいのは「僕は法曹志望じゃないし、法曹志望以外の人でもやっていけるよ」ということで、それだけは誤解しないで欲しい(笑)
それに、法曹志望の人は普通の大学生とは全く違う大学生活を送っているので、なかなか出会えないと思います。だから、今までと違う人と関わるタイミングとして、法曹志望じゃない人にとっても凄くいい機会だと思います。
ーーそうすると、法曹志望との壁はあまりない感じですね。
そうだね、飲み会も学期ごとに2回くらいあったり、合同ゼミの後に飲み会あります。今年は夏と冬に納会がありましたし、あとはオフィシャルではないけど、ゼミの後に任意でご飯食べに行ったりしています。ただ、法曹志望の人は予備試験があると忙しそうですね。
■自分が深掘りしたい論点を、とことん議論し合う
ーー実際に普段のゼミはどのように進めていますか?
これはゼミの人数によってやり方が変わってくるとは思いますが、まずは「この日は◯◯さん、この日は◯◯くん」みたいな流れで担当者を決めていきます。
ーー毎回発表はないですよね。安心しました(笑)
自分が発表しない回も勿論あります(笑)発表しないときは配られる文献を読んでゼミに臨みます。発表を聞いて質疑応答するので、負担は少ないです。発表がある週だけ少し大変かなと思います。
ーー発表する場合は準備にどのくらいかかりますか?
そのあと、発表の1週間前くらいに先生に相談しに行きます。初回なら「自分はこういう分野に興味があるんですけど・・・」という話になるし、ゼミが本格的になると「◯◯の論点を話しきれなかったので、次はAの視点でもう少し掘り下げてみたいです」みたいな相談をします。
ーー自分のやりたいテーマを先生と話し合って決めるのですね。
そうですね。相談すると「こんな論点を取り上げてみるとどう?」みたいに、先生から具体的なアドバイスを提示してくれます。こうして、発表のテーマが決まっていきます。この作業がゼミの一週間前くらいに終わり、そこから自分でレジュメを作って当日発表する、という流れです。
ーーレジュメの分量や、かかる時間などはどのくらいですか?
レジュメに掛かる時間は人それぞれかもしれません。文量は基本的にA4のページに8枚分くらいになります。多い人でも12枚程度です。判例の引用なども含んでいるので「多すぎる!」ということは無いと思います。
ーー発表する回はしっかり準備が必要ですね。当日の発表と議論はどのように行われますか?
当日は先生が議事のような役割で進んでいくかな。先生が「~だったと思うけど、何でも良いので質問はありますか?」って聞いてくるので、もし何か質問があれば発言します。ただ、結構「・・・(シーン)・・・」というパターンが多いかな(笑)
ーーそうなりますよね(笑)
もし、誰も何も言わないときは先生から、「じゃあ~の論点があると思うけど、◯◯くんはどう思っているの?」みたいに聞かれます。裁判所の判例や学者の意見がレジュメに載っているので、その中で自分に最も近い意見を、理由や根拠を明示しながら話し合います。
ーー先生が議論を深掘りする役割を担ってくれるんですね。
そうだね、もちろん学者の中でもいろいろな意見があります。なので、先生から「じゃあ、AとBの意見だと、◯◯さんはどっちの方が自分の価値観に近いと感じた?」みたいに聞かれます。そこで、自分なりの根拠を伝えながら意見を出すことが必要となります。
ーー自分なりの意見を出すのは難しそうですね。。。
そうだなあ。。。中々イメージしにくいと思うから、『エホバの証人』をテーマにして普段の様子を伝えますね。『エホバの証人』はキリスト教の宗教の1つだけど、輸血をすることが禁忌とされている宗教なんだ。
ーーそんな宗教があるんですね。
そう、そのエホバの証人の信者が交通事故に遭い、重態になったとするね。
医者からすると「私には人の命を助ける義務があるので輸血する」という選択をしたい。一方で、患者であるエホバの信者には『自己決定権』があり、「聖書の教義を私は信じているから、命を失ってでも輸血は絶対にしない」という権利がある。
ーーどちらも、言いたいことは分かります。
そう、このように両者の価値観がぶつかるテーマのとき、「大人なら判断能力があるかも知れないけど、判断能力がない子どもだったら?」「未成年の中でも10歳の子どもが事故に遭ったとき、親が子供の輸血を認めない場合はどうする?」といった問題が出てきます。この場合、絶対に正しい答えはあると思う?
ーー・・・無いですね、難しい。。。
そうだね。その人の価値観によって意見は分かれるし、誰が見ても正しい解はないと思う。だから、「権利と権利のぶつかり合い」や「価値観と価値観のぶつかり合い」に対して「あなた自身はどんな意見が考えられるのか」を掘り下げていきます。議論が煮詰まるまで話し合うので、ゼミの時間では結論が出ないことが殆どです。
ーー正解のないテーマに対して、色々な角度で話し合いをするのですね。難しいけど、楽しそうです。
そうだね。学生の意見が出た後に、先生から「でも、最近だとこういう判例が出てるよね」みたいに新しい知識の共有がされることもあります。
■私大には負けられない戦いがある ディベート合宿編
ーーゼミの様子がとても分かりました!普段のゼミ以外ではどのような活動がありますか?
只野ゼミでは法律のディベートを他大学(早稲田・慶応・九州大学)としています。どちらかというと、大会というよりは合宿に近いイメージですね。僕たちも9月の大会に向けて夏休みは練習もしました。
ーー練習はどのように行っていましたか?
練習会はLINEでやったり、スカイプでやったり、実際に集まって話し合いをしたりしていました。それを9月の半ばくらいまで続けましたね。
ーーディベート合宿で面白かったことはありますか?
ディベート自体も面白かったし、なかなか普段絡む機会がない他大とディベートすることも面白かったです。九州大学なんてなかなか会えないので「よく来てくれたな(笑)」って感じでした。
ーー確かに遠くからよく来てくれますね(笑)
それに、九州大学さんはかなり本気でやってくるので。九大の人からも「合宿の3日くらい前から先輩の家に泊まり込んで練習してたよ」と聞いて驚きましたね。。。
ーーす、すごい。本気度が伝わります。
一応、九大と一橋が強いことになっています。なので九大からは「私大のチャラチャラしたやつらに負けたらかっこ悪いぞ・・・?」みたいな謎のプレッシャーがあります(笑)
ーー国立の連帯感ありますね(笑)
だね(笑)あとは真面目な話だと、ゼミの法曹志望の人たちは僕らと費やしている勉強時間がまるで違うから、やっぱり知識量が凄い。ゼミで得た知識のアップデートを常にしているんだな、と思う。
■資格試験を目指すゼミテンの姿に、背中を押された
ーー「今のゼミに入って良かった」と思うことはなんですか?
これだけは質問来るだろうなと思って、事前に考えてきました(笑)私事ですが、実は公認会計士を志望している学生は僕です。
ーーそうだったんですね。すごく驚きました。
そうだよね(笑)これも、ゼミ生の影響が大きかったのかなあって思う。
就活も去年の夏から冬にかけて始めていたけど、もう一回自分の進路を考え直すタイミングがあって。そのときに、資格試験っていう目標に向かって、全力で頑張ってる人を近くで見てたのは大きかったかな。
ーーゼミテンの姿が、自分の進路を考え直すきっかけになったんですね。
そういう人たちゼミでなければ凄く遠い存在だったと思うんだけど、ゼミを通して今まで交わらなかった人たちの姿をみて、自分の中で新しく知ったことや、考えさせられることがあった。だから、僕は今のゼミに入って良かったと思う。ゼミを、学生最後のチャンスだと思って欲しい。
ーー凄く良いゼミテンですね。最後に、ゼミ選びをしている2年生へのアドバイスをいただけますか?
そうですね、僕はゼミを学生時代に付き合う人が変わる最後のチャンスだと思っています。大学の残り生活でも、所属するコミュニティを変える瞬間って多くないはずです。
人によって、ゼミを選ぶ理由って様々だと思っていて、自分の研鑽のためにやる人もいれば、卒業のために「めんどくさいなあ」と思いながらやる人も勿論いると思います。
ーーそうですね。僕もどちらかというと「面倒くさいなあ」と思っていました。
そうだよね。でも、「折角ならゼミという機会を生かしてほしいなあ」と僕自身は思います。自分がダルいなあと思っていれば友達を見つける感覚でも良いと思うし、「ちょっと別の世界の人見に行ってみるか」みたいなノリでもいいと思うんだよね(笑)
どうせやらないといけないんだから、「自分はどういう形でゼミを使えば、1番面白いと思うんだろう、楽しいと思うんだろう」って考えられれば、大学が用意した『ゼミ』という制度を自分なりに生かせると思う。
ーーゼミ選びに前向きになれそうです。本日は貴重なお時間ありがとうございました!
ゼミメル頑張って下さい。こちらこそありがとうございました!
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この記事を書いた人(文責:森川)
ー高橋さんが自分の伝えたいメッセージを明確に言語化していただいたので、本当にインタビューが楽しかったです。インタビューしながらゼミ選びをもう少し真剣に考え直すきっかけになりました。この記事が読んでくれた人の背中を押すきっかけになれば嬉しいです。