被用者保険適用拡大と「年収の壁」問題、制度改革の現状と課題
セミオーダー就業規則onlineです。今回の社会保障審議会(第20回)では、働き方の多様化に対応した被用者保険の適用拡大と、「年収の壁」への対応について議論されました。本記事では、議論の内容を整理し、制度改革の現状と今後の課題を解説します。
被用者保険の適用拡大
働き方の多様化と適用範囲の見直し
近年の多様な働き方に対応するため、被用者保険の適用範囲拡大が進められています。以下に、主要な議論をまとめます。
短時間労働者への適用
短時間労働者への適用は、企業規模要件が段階的に引き下げられてきました。
令和4年10月:従業員数100人超の企業に適用。
令和6年10月:従業員数50人超の企業まで拡大予定。
さらに、企業規模要件の撤廃や労働時間・賃金要件の引下げ、学生除外要件の見直しが検討されています。
個人事業所への適用
現在、常時5人以上を使用する個人事業所のうち適用外の業種や、従業員数が5人未満の事業所への適用拡大が議論されています。
複数事業所で働く人への適用
複数の事業所で働く人の労働時間を合算して適用要件を満たす場合に適用する方法や、事務手続の合理化が課題とされています。
フリーランス等への適用
労働基準法上の労働者に該当するフリーランスには、要件を満たせば適用されていますが、今後は非労働者性フリーランスへの適用拡大が議論されています。
適用拡大の課題
事業主の事務負担や経営への影響、保険者の財政や運営への影響を考慮する必要があります。こうした負担軽減策の検討が欠かせません。
「年収の壁」への対応
「年収の壁」とは?
「年収の壁」とは、配偶者の扶養に入る人が社会保険に加入することで保険料負担が発生し、結果として手取り収入が減少する現象を指します。この壁は主に「106万円の壁」と「130万円の壁」が注目されています。
106万円の壁
年間収入が106万円を超えると社会保険料が発生し、手取り収入が減少する可能性があります。
130万円の壁
年間収入が130万円を超えると配偶者の社会保険扶養から外れ、国民年金保険料や国民健康保険税の負担が増加します。
対応策
年収の壁への対応策として以下が検討されています。
被用者保険の適用拡大
最低賃金の引上げ
広報・啓発活動
手取り収入の減少を抑制する制度的な対応
第3号被保険者制度の見直し
第3号被保険者制度は、被用者保険の加入者の配偶者で一定要件を満たす人が加入できる制度です。しかし、共働き世帯の増加や働き方の多様化に伴い、見直しが求められています。例えば、パートタイムで働く配偶者が年収の壁を意識して労働時間を制限するケースがあり、これが家庭の収入向上を妨げる要因となっています。
主な見直しの議論
適用拡大の推進:被用者保険の適用拡大による第3号被保険者の減少と制度縮小。
制度の見直し:育児や介護で働きづらい人への支援充実や、若い世代からの見直し。
情報発信の強化:制度のメリット・デメリットを分かりやすく伝え、理解を深める活動。
今後の課題
第3号被保険者制度の見直しは、社会保険全体の在り方や国民意識の改革にも関わる重要なテーマです。議論は今後も継続すると考えられます。
おわりに
被用者保険の適用拡大や「年収の壁」問題、第3号被保険者制度の見直しは、社会全体の課題として注目されています。今後は、被用者保険の適用拡大に伴う企業の負担軽減策の具体化や、年収の壁の解消に向けた取り組みを進めることが必要です。また、第3号被保険者制度の見直しに関しても、共働き世帯や多様な働き方に適した制度改革が求められています。
今後は、被用者保険の適用拡大に伴う企業の負担軽減策の具体化や、年収の壁の解消に向けた収入の見直し支援策を検討することが必要でしょう。
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