光を浴びて舞台に上がる白鳥〔読書記録、ネタバレあります!〕
伊吹有喜(いぶき・ゆき)「カンパニー」新潮文庫
NHKでドラマ化されたのを機に読んだ。製薬会社「有明ヘルツ」から協賛イベント成功のために送り込まれた(成功しなければリストラが待つ)四十代男、青柳誠一と、この会社が援助していたマラソンランナーが突如引退し、やはりこのイベントの担当を命じられたトレーナー、瀬川由衣を中心に巡る……という基本的な造りはテレビと同じなのだが、「実はバレリーナだったコンビニ店員」高崎美波が、ドラマよりも誠一に思わせぶりに近づいて、ドキドキさせるところが面白い。
この美波という登場人物を、宝塚作品では主役に持って行ったらしい。なるほど、舞台上の誰を主役にして描き直してもイケるわけだ。小説の最最最終盤、手負いの白鳥・有明紗良の代役に急遽選ばれ、逡巡しながらも舞台に出て行く美波が光に包まれているのが、小説を読んでいても、確かに見えた気がした。