(浦河べてるの家noteより転送)ピアサポートの当事者研究
(先日、浦河べてるの家noteに投稿させていただいたものを転載します。浦河のピアサポートについて理解を深めていただけますと嬉しいです。)
ピアサポートの当事者研究
私たちべてるのメンバーは、意識してか無意識かに関わらず日常的にビアサポートをしています。仕事として仲間の支援を行う以外にも、休日に仲間同士で集まり気持ちの分かち合いをしたり、仲間のことを気遣ったりなど無意識のビアサポートも多いです。
精神障害を持つ仲間の中には、自身の経験を生かしたピアサポート、ピアスタッフの仕事をしたい希望を持つ人が少なくないですが、浦河では、そうした人ばかりでなく、お金をもらってビアサポートをするとプレッシャーを感じるので無償でいいと言う人もいます。
そうしたなか、グループホームのさくら・ヨブで行われているのが、仲間による夜の服薬ビアサポートです。
ご存じのように、べてるには日中活動の場と、生活の場のグループホームがありますが、2014年に、入院する仲間の減少から浦河赤十字病院精神科の病床がゼロになりました。このため、入院をする場所がなくなったので、地域で生活するために、仲間の力(ピアサポート)を活かしてきました。
私たち浦河のピアサポーターは、何でもできるスーパーマンではないので、いざと言うときには「弱さ」を仲間に伝えています。ここから、浦河流のピアサポーターの理念の「情けないピアサポーター」「助けられるピアサポーター」「ピアサポーターのピアサポーター」が生まれました。私も、日頃から幻聴の強い仲間の外出の支援をしていますが、その仲間の笑顔・元気な笑い声に助けられることも多いです。
服薬ピアサポートも仲間の声から生まれました。ある仲間は、夜に薬を飲んでぐっすりと眠りたい希望を持っていますが、毎日忘れずに就寝時の薬を飲む自信がない、夜間は世話人さんがいない、誰か薬の声掛けをしてくれる人がいたらいいという要望がありました。そこで、服薬支援のピアサポートチームが立ち上がりました。名付けて「ザ・お薬やさんミーティング」です。
浦河でのピアサポートは、当事者研究的な視点で、ピアサポートの技の工夫を実験したり話し合っています。このミーティングでは、仲間同士互いの苦労を知っているので、どのように言葉がけをしたらいいかお互いにわかっています。
例えば、この薬は「(電波で苦労している仲間がいるので)電波によく効くから眠れるよ」「幻聴さんと仲良くできる薬だよ」という言葉がけのアイデアを出すことができます。服薬ピアサポートをする仲間のなかには、その日調子が悪い人もいるので役割を交代したりして工夫しています。こうした助け合いが私たちの地域生活を支えています。
今後の課題は次世代のピアサポーターの育成です。かつて草創期のべてるを支えた仲間は高齢になってきているため、若いピアサポーターの力が必要になってきています。
最近ピアサポーターになった若い仲間は、美術部サークルを立ち上げ、田んぼに置く幻聴さんを外在化した案山子を作ったり、レクリエーションの時間にお絵描き会をしたりするなど、企画力・行動力があります。こうした若い力を生かし、当事者研究やSSTを活用しピアサポーターの学びにできればと思います。
当事者研究・SSTでの仲間の応援の場面で、ピアサポートの技が学べ、ピアサポートをするときに参考になります。「自分自身の助け方」を「苦労している仲間の助け方」として活かすことができます。爆発をしたり、暴言を吐いてしまうことに苦労している人が、自分助けの場面で、例えば幻聴さんに湯優しくお願いする技がピアサポーターとしての技にもなります。早坂潔さんたち先輩のピアサポーターを見て若い世代のピアサポーターが生まれていけばいいと思います。
今後も浦河流のピアサポートが一層活性化するよう願っています。