ごはんの話
朝ごはんを食べながら昼ごはんのメニューを考え、旅行先は何を食べたいかが優先されることもしばしば、食べ歩きには前菜をコロッケ、デザートの鯛焼きまで、ほっぺたを満杯にしているのが好きである。
ごはん、という日本語はとても面白い。米を指すこともあれば、食事全体を指すこともあり、いかに米が日本の生活の中心、ご飯といえば米だったのか、ということだ。
カナダに行った時だったか、『主食』という、今まで当たり前にしてきた概念が通じずに、驚いた思い出がある。
メインディッシュは、ある。肉にするとか魚にするとか。だが、ほぼ毎回調理方法も同じ米を中心にしておかずを組み合わせるという食べ方は、結構面白いと思う。米があればなんとかなる、というセリフはどこの家庭でも聞かれるような気がする。
無論、概念がはっきりしていないだけで、世界にも主食はある。
パン、じゃがいも、パスタ、トルティーヤだって主食だ。ただ、日本の食卓とはなんとなく違う気がしている。
私には大事な旅友がいる。
ひとりはカナダで出会い、その後の縁はなんとなく細く繋がっていて、突然太くなった。ナツコという。
もうひとりは駅で働いていた時に出会った、通称『変態』ヒデトさん。表に出せないような旅の話をたくさん持っている。紹介したいエピソードはたくさんあるものの、コヨーテに噛まれたらエチオピアの戦士として認められた話が一番おすすめ。この話は本人の許可を得たら書きたいと思う。
さて、そんな2人と現地集合現地解散の旅をする。出発地が同じでも、それぞれの都合があるので期間と最初の待ち合わせ日時だけ決めたらあとはお任せ。宿も行き当たりばったりであることが多く、何よりも面白いのはこの2人の胃袋の宇宙さだ。
私はよく食べる方だと自負している。好き嫌いもさしてなく、よく分からないものも食べてみたいと思っている。
この2人はなんと私以上に食べるし、新しいものへの欲も強い。
初めての集合は台湾の高雄だった。トップ画がその時のだが(料理が運ばれてきてから完食まで17分だった時の記録的写真である)、夜市に行ってまずは席を確保したら、2人とも消えた。数分後、両手に色々抱えて帰ってきた。
まるで夜市を端から食べ尽くすかのようで、なかなか面白かった。本当に宇宙。
この旅友の、というか私の周りの友人達は皆そうだが、食への感謝を常に忘れないところが私は好きで、一口頬張っては眉毛が下がって落ちる頬をとどめるかのように手を当てる様子が、とても素敵なのだ。
『食』が重要な役割を持つ私としては、旅をする時にチャレンジャーが一緒だと、何かと面白いことが待っていると思っている。
高雄で好きだったのは白ゴーヤの漬物だった。
ナツコは白い蒸しパンがお気に入りで、
『これが枕だったら寝ながら食べられる・・・』
と言っていた。
食卓のイメージは、昔からずっと変わらない。
記憶にない離乳食から、おでんの具の争い(3人きょうだいなので、戦い)やお祝いや初めての料理、美味しいものを食べて笑い合い、話ができる口福で幸腹な場所。
それが夜市でも家でもお店でも幸せになれる、ごはんの話でした。
おしまい。