ルワンダICT産業の発展と教育
(SELF編集部 かつ しんいちろう)
今回は、ICT先進国と呼ばれるルワンダの様子をお伝えして、日本に取り入れるべきことを考えてみたいと思います。
2020年12月に発表されたルワンダ共和国の長期戦略「Vision2050」は5つの柱のうちの一つ目が「人材開発」です。まさに人は国の宝。人が国を作ります。
https://www.nirda.gov.rw/uploads/tx_dce/Vision_English_Version_2050_-31_Dec_2020.pdf
ICT産業の振興については、NHKが良いまとめのビデオを作っているのでごらんください。(ICT&イノベーション大臣のPaula INGABIRE氏は、MIT卒業の40歳! 4年前から現職です)
国際支援を受け変革するICT教育
今回訪問したのはキガリにあるKeza Education Future Lab (以下Kezaと表記)です。土日に開講される3歳から14歳まで(アメリカの幼稚園から高校卒業までのK-12に近い)を対象にした民間のプログラミングスクールです。Kezaの運営には杉山竜一さんや山田美緒さんやという日本人の方々やPCNという日本のコンピュータ教育の組織(https://pcn.club/about/)も関わっています。
ルワンダでは教育省を始めとする国内の教育関係者、そしてUNESCOやJICAなどの海外からの支援などもあり、教育プログラムの策定と改善は進んでいるようですが、教育の現場まではまだ浸透、普及には時間がかかる様子でした。
こちらは、UNESCOの用意する教育方針策定支援ツールです。組織体制の構築から議論の進め方までガイドされています。
JICAも教育分野に関しても積極的に関与しています。
https://www.jica.go.jp/activities/evaluation/ku57pq00001zf034-att/analysis_rwanda_01_ja.pdf
Keza探訪
では、見学させていたKezaをご紹介します。
ホームページに書いてあるミッションは、
A leading provider of kids’ sciences and technology services through offering practical technology based activities for producing little engineers that will be transformed into future innovators.
「わたしたちは、将来のイノベータとなる小さなエンジニアたちを育成するため、実践的なテクノロジーベースのアクティビティを提供する、子ども向け科学技術サービスの主要プロバイダーとなります。」
この幕とは変わっているところが、変革の速さなのか?
ビジョンは、
To develop young Rwandan children into future engineers and innovators through provision of sciences and technology services including creative works, use of information and communication technology aiming at supplementing the implementation of competence-based curriculum.
「ルワンダの若い子供たちを将来のエンジニアやイノベーターに育てるため、創造的な活動や情報通信技術の活用を含めた科学技術サービスを提供し、能力重視のカリキュラムの実施を補完することを目的としています。」
コア・バリューは、
• Integrity
• Honesty
• Trust
• Accountability
• Commitment to Customers
• Commitment to innovation
「• 正直であること • 誠実さ • 信頼 • 説明責任 • 顧客へのコミット • イノベーションへのコミット」
となっています。
社長のVictorien UWAMUNGU氏は、この前の日も国の教育省とICT省の担当者とIoT教育のKezaでの実践例をどう展開していくかについて議論していたそうです。今のところ民間で唯一のプログラミングスクールということで注目されているそうです。
LEGOのマインドストームやIchigoJamでの制御プログラムの勉強や自分たちでセンサーなどを組んで作った教材キットなどを先生から熱心に説明してもらいました。かなりメカ・オタクな感じで面白かったです。
3歳から14歳を対象としているので教材開発が大変そうで、さらにその上位となるカリキュラム作りが課題のようでした。
ラボは、まさにメカトロ好きな人の部屋。「この3Dプリンタ安いやつなんで、ノズルが詰まるんっすよ。」とぼやくあたりも日本のエンジニアそっくりでした。
施設には Fab.Labの2大装置、3Dプリンタとレーザーカッターがあり、雰囲気的にはFab.Lab で子どもに教育をしている感じでした。
ICTの市民生活での活用
市民生活での活用は間違いなく進んでいて、多くの大人は小さな携帯とスマホを2台持ちしていました。
また、通信会社MTNが運営するモバイル通貨MOMOも田舎に行ってもチャージする小屋があるなど普及しているようです。
ドローンを使った医療用品運搬のZipLineもキガリに施設があるように、進んでいるところとまだまだなところが混在しています。
普及プロセス
どのように国全体にICTを普及させ、経済と生活にインパクトを与えるかについては、ルワンダも他国と同じように一部の先進事例(イニシアチブ)に集中投資し、そこから広げていく政策をとっています。
そのため、投資の恩恵が地域の現場にはまだ届いていないのが現状のようです。
交通違反や支払いの電子決済など海外から導入したインフラの浸透は早いようです。こうした仕組みが他のサービス分野にも展開され広がっていくには、自国のエンジニアのチカラが必ず必要になります。人材育成が急がれる理由がそこにあります。
最後に
ICT&イノベーション大臣が語っていましたが、ルワンダは天然資源の少ない国なのでICTのチカラで知恵を産業にして豊かな国土づくりを目指しているそうです。その点は日本もしかりです。
制度を重ねすぎて制度疲労を起こし硬直化が目立つ日本は、ダイナミックに動くルワンダに学ぶことが大いにあると感じました。