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はじめて睡眠薬を飲んだ話

少しだけ興味があった。
でもそれは、悪いことのような気がしていた。

今年の春に、僕は社会人になった。社会人になったその月に、僕は病んだ。かなり病んだ。友達や親友がいる関東を離れて、一人で愛知県で暮らすことになり、頼れる人も縋れる人もすぐそこにはいなかった。

「病んだ」と簡単にいうが、自分の「病む」の怖さは、自分が一番分かっている。
・その先に「死にたい」が待っていること
・それを自分で止めることがすごく難しいこと

だから、すぐに病院に行った。

「死んじゃう」と思った。「死にたい」と思うのに「死んじゃダメだ」と自分の中の何かが戦いだす。これが僕の「病んだ」

単純に、怖い。自分自身が怖い。
半ば生きることを諦めながら行った、人生初の精神科。まさか、予想はしていたが本当に社会人1ヶ月目に精神科に行くとは。流石に笑った。

そこで貰った睡眠薬。今はそうではないが、春の一瞬、花も見ずに薬に逃げていた。その時見えていた逃げ場が、僕にはそこしかなかった。今思い返せば自分が可哀想だ。

あれから季節が過ぎて冬になった。僕は、また睡眠薬を飲んだ。睡眠薬を飲むと、10分から15分ほどで視界がぼやけてくる。動くものにピントを合わせようとしても少し遅れてピントが合うようなそんな感じ。頭を揺らすと、ぐらんと歪む視界。だんだんと考えられなくなる脳。素晴らしい。考える余地がないのだ。考えようとしても、考えられない。言葉が出そうで、力を失う。気づいたら朝だ。

言葉が無限に浮かんで朝になっていた日が幾度となく今までにあった。もっと早くに出会っていれば苦しい日々は少なかったかもしれない。人生もまた変わっていたかもしれない。

これは、社会人になってよかったことの一つだ。

保険証を手にした。
病院に行くも行かないも僕の自由だ。親に許可を取る必要もない。全ての判断は自分になる。だからこそ怖いことではあるが、だからこそ、僕は確実に生きやすくなった。

こうやって生きるためのアイテムや技を身につけて、寿命を伸ばすのだと思う。適度に逃げて、自分が思うままに生きて。時々、自分が間違えた道に進んでいないか周りに問う。気づけば歳をとっている。そうして一年後も生を実感していたい。

(終

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