澱
誰かに何かを言われて、衝撃を受けても時が経てば忘れる。ただ一つ。刻まれた言葉。
「処分してください」
・・・
昔。
子供を産んだ後、数ヶ月してから実家に帰った。
ピーがいなかった。
私の実家で飼っていた小鳥の名前だ。
ピーは?
夫の母親が、無自覚に当然のように、私の父親に、小鳥を処分しろと言った。父は小鳥が大好きなのに。
孫にアレルギーが出たらどうするんです、処分してください。
父はバカだ。ピーを処分した。
可愛がっていたのに。
ゲージごと、お風呂も一緒に入っていたのに。
それ以来、父は小鳥を飼わない。
私もピーの話はしない。
澱のようにずっと。底に。
記憶が無くなって行く夫の母親を、どこか冷ややかに見ているのは、様々な事を許していないから。
それも私。