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私の知らない事 夏の終わり、火の玉、続くこと

亡くなった父の実家は、田舎である。今はある程度開発されてコンビニなども見られるが、私が子供だった頃などはもう完璧な、ザ・日本の故郷なのだった。周囲は山に囲まれ、川は流れ、夏なんかツクツクボーシ、ニイニイ、ジョージョーとセミダンスミュージックが響き渡る。
ただ、その音は少し寂しい。
夏が青ければ青いほど、遠い気持ちになる。

古いお寺、多くの同性のお墓群。戦争出陣の大きな碑。そんな場所だ。
昔昔はその場所で火葬も行っていたそうで、当時子供だった父は、火の玉も見たらしい。
白くふわふわ浮いていて、怖かったと言っていた。

・・・

父方の本家筋が、そのお墓群の管理を担っているのだが、数か月前、そちらから近々墓じまいをする事にしたと、母に電話連絡があった。
父ももういないし、母も私もご連絡ありがとうございます、ぐらいの心情なのだが、それなりにやはり思うことがある。

古い記憶。
あの時の記憶。
遠い親戚らしき人。
夏の日。
どもりでとてもとても苦労した父のこと。

今の私を作ってくれた方。
生きている人。死んだ人。

あの墓たちは、どうなるのだろう。何かしらの形あるものが新たに作られるらしいが。
今風のシュッとしたモニュメント的なものにまとめられるのだろうか。

どんな形になっても全然良いんだけれど。
良いんだけれど。

心が落ち着いたら、いつか母といっしょにそっと見に行きたいな、と思っている私です。

心が落ち着いたら。その時が来たら。