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自分の人生の主人公になる、「空色ユーティリティ」 ー「メダリスト」と比べた時の特異性ー
前期、今期と傑作揃いで「特に私が語らなくてもいいかな」という気分なのですが、今期面白いなと思っている作品を2つ、3話まで視聴した段階で比較してみたいと思います。
話題作「メダリスト」と「空色ユーティリティ」です。
どちらもスポーツがテーマ。そして意外な共通点があります。
「レイトスターターが主人公」という点です。
レイトスターターというのは、音楽世界、しかもクラシックで使われる言葉なのですが、「年齢が高くなってから始めた人」という意味で使われます。
「メダリスト」はフィギュアスケートがテーマで、主人公は小学5年生(11歳)。
「空色ユーティリティ(以下「空色」)」はゴルフで、高校生。
どちらも本格的に競技を始めるには遅い年齢です。
ただ、両作のコンセプトは全く違います。
「メダリスト」が普通のスポーツ作品と同じように、かつそのタイトルから分かるように「頂点」を目指すのに対し、「空色」は頂点を目指すのではなく「楽しむ」ことがテーマです。
「メダリスト」ではレイトスターターであることを感動させるためのツールとして利用しています。毎回それで泣かせてきます。
レイトスターターであることが、本当は「特別な自分」が欲しいのに、何も手に入らない年齢である一般視聴者からの共感を得る仕組みなのだと思います。
ところが、同じスポーツ作品なのに「空色」は今のところ頂点を目指すとかそういったことは一切出てきません。
ルールもわからないまま子供のように無邪気にボールを追いかけ、ゴルフウェアというファッションなどスポーツそのもの以外も楽しんでいます。
「空色」のこれは、何気に新しいコンセプトだと思います。
徹底的にそこにフォーカスしたスポーツ作品を私は知りません。
「主人公になる」が主人公のセリフでも、オーイシマサヨシさんのOP曲でも貫かれています。「自己満足」がコンセプトなのです。
今更ですが「空色」のあらすじを説明すると、入れ込んでいたゲームのサービス終了をきっかけに、自分にとっての「スペシャルな特別」を探し始めた普通の女子高生が、ふとしたきっかけでゴルフの打ちっぱなし練習場で知り合ったお姉さんの手ほどきでゴルフを始める。というお話です。
友人曰く、「ゆるキャン」や「けいおん」と同じジャンルなのでは?とのことなのですが、なるほどなあ、と思います。
確かに、「自己満足の追求と、理解者とのささやかな共有」という点では「ゆるキャン」に近いのかもしれません。
「空色」で言われる「スペシャルな特別」とは、言い換えれば「特別な自分」だと思います。
それを社会的な認知として得るには年齢制限があることが、スポーツや芸術では多いです。
そして、「自分が本当にやりかったこと」を手に入れることを環境から諦めたり、それに気づいたときにはもう遅かった、という人は多いのではないかと思います。
「メダリスト」は主人公が視聴者の代わりに勝利することがプロットであると考えると、「空色」は視聴者の「今」を肯定する作品なのではないか、と3話まで観た段階で考えた次第です。