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アニメ「MFゴースト」にみる「高度」と「幼稚」のバランス

以前、「オーバーテイク!」を題材に、「モータースポーツものを面白い作品にするには、人間的成長とは別のもっと高度で、そして幼稚な、独特の何かが必要なのです。」と書きました。
その時も少し書いたのですが、今、2期が放映されている「MFゴースト」が面白いです。

高度な部分

エンターテインメントとは、極論で言えばエロスとバイオレンスです。
この作品のバイオレンスは、自動車レースというバトルで描かれています。
そのレースの勝敗を決する部分は、素人でもわかりやすいようにうまく、そして人間ドラマに絡めて描かれています。
非常にマニアックなのですが、それがわかりやすくなるように、レースのレベルをあえて高度にしていないであろうところがポイントです。
フォーミュラ1(F1)や世界ラリー選手権(WRC)といった、世界最高峰ではなく公道レースの延長にあるようなレースという設定で、出場選手も素人に毛が生えたレベルか、トップスターへの道から脱落したキャラクターで構成されています。
この辺り、非常に上手いな、と感じます。
主人公はチート能力を持っているのですが、その分、ハンデも背負っているバランスも観るものをハラハラさせて見事だと思います。

幼稚な部分

一方でエロスの部分は、現代モラルでギリギリのラインです。
女性に対する扱いがまるで数十年前のような印象を受けます。
つまり、男性の幼稚な部分が強調されています。
レースというバトル、つまり勝負にはそういった人間の幼稚な部分が隠れている、ということもあるとは思いますが、あえてそう描いていると考えています。
また、登場人物たちにあまり教養を感じません。全ての人物に当てはまるわけではないのですが、好漢であっても人間性が奇妙なほどに低いです。良く言えば人間臭い、男臭いです。
一方、主人公だけは理想の人物として描かれています。
以前、モータースポーツもののポイントして書いた、モータースポーツ物語において、スポーツものにありがちな主人公の人間的成長を描くとリアリティが消える、ということを、原作者のしげの秀一先生はわかっていて、主人公を強調することと、モータースポーツを愛する受け手(私含め)との親和性で、そう描いているのだと思います。

計算されたダサさ

また、OP曲とか、コンパニオンガールのコスチュームとか、好きな人には申し訳ないのですが、私にはダサく感じます。しかし、それも計算されているのだと思います。
原作を生かし、洗練を捨てた上の洗練を目指す。そんなスタッフの姿勢を感じます。
誤解を招くかもしれませんが、ある意味で侘び寂びみたいな作品だと思うのです。
原作を生かした上で、テンポを良く再構成して邪魔な部分を廃したらそうなったのかもしれませんが、ここはスタッフの計算による結果だと好意的に観ることにします。

受け手を選ぶとは言え、モータースポーツものとしては成功作

というわけで、かなり受け手を選ぶ作品であることは間違いないと思いますが、「オーバーテイク!」や「ハイスピードエトワール」と比べたら、最近のモータースポーツものの中では大成功作ではないでしょうか。
現在、シーズン2の9話ですが、この流れで主人公の活躍を今後も見守れたら嬉しいです。

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